犬の引っ張り癖を直すにはどうしたらよい?ドッグトレーナーが解説
「愛犬の散歩中に、愛犬が引っ張ってくるのに悩んでいる」という飼い主の人は少なくありません。
犬の引っ張り癖の原因はさまざまですが、正しい対処をしなければ引っ張り癖はどんどん悪化していきます。
この記事では、犬の引っ張り癖のしつけ方法や、リーダーウォークの教え方などについて解説します。
もくじ
犬の引っ張り癖の原因
まずは、犬の引っ張り癖の原因を見ていきましょう。
引っ張り癖の原因はさまざまですが、愛犬の引っ張り癖はなぜ起きているのかを把握するために、これらの中から該当するものがないか考えてみてください。
犬が飼い主のことを下に見ている
犬が引っ張り癖をする一番の原因は、犬が飼い主のことを下に見ているというものです。
私たち人間は「犬と散歩をしている」という感覚でしょうが、飼い主のことを下に見ている犬は違います。
犬からすれば、「自分の散歩に飼い主を連れて行っている」という認識でしょう。
つまり、犬は飼い主のことを引っ張って先導しているのです。
もちろん、これはよいことではありません。
犬との上下関係が完全に逆転してしまっているため、早急に対処する必要があります。
犬がさまざまなことに興味を持つ性格のため
人間の子どもが遊園地で親の手を引いているときのように、「あ、あれ楽しそう!」、「あれ食べたい!」などと犬が考えながら飼い主を引っ張っているのかもしれません。
これは、好奇心旺盛な性格の犬に多いものです。
好奇心旺盛なのはよいことですが、そのすべてを許していたら犬を抑えることのできないわがままな犬になってしまいます。
ちなみに、飼い主を引っ張っている最中は首が常に絞められている状態です。
そのため、呼吸がしにくいため犬は徐々に頭に血がのぼってしまいます。
頭に血がのぼると興奮しやすくなるため、どんどん引っ張り癖は加速していくでしょう。
ストレス
犬は、ストレスが原因で引っ張り癖が付いている可能性があります。
人間もストレスが溜まると、誰かに反抗することがあるでしょう。
犬も同様で、ストレスが溜まることにより飼い主に反抗心が出てしまい、散歩中に引っ張ってしまうのかもしれません。
飼い主との距離感がわかっていない
伸縮リードを使用している場合、犬は飼い主との距離感がわかっていないことが考えられます。
伸縮リードは便利に感じますが、犬が自由に動き回ることができるため、突然走り出したときに対応することができません。
また、散歩中に自由に動き回れると犬が理解してしまうと、ほかのリードに変えたときに引っ張り癖を直しにくくなるでしょう。
抵抗反射
犬の引っ張り癖の原因と考えられるものの最後に、抵抗反射が挙げられます。
抵抗反射とはその名のとおり、自分の手元にリードを引っ張られたときに、反射的に逆方向に向けて力を入れてしまうことをいいます。
抵抗反射が犬の引っ張り癖の原因であれば、犬が引っ張るからといって自分も犬を引っ張ってしまうと、さらに状況は悪化していくでしょう。
犬の引っ張り癖のしつけ方法
それでは本題である、犬の引っ張り癖のしつけ方法をご紹介します。
引っ張り癖のしつけは根気よく行う必要がありますが、かならず改善するはずです。
服従訓練を行う
犬の引っ張り癖を直すには、先に服従訓練をしたほうがよいかもしれません。
服従訓練とは、その名のとおり犬に服従させるための訓練です。
「お座り」や「伏せ」も、服従訓練に該当します。
服従訓練をすることで、犬は飼い主との上下関係を理解するようになるはずです。
突然逆方向に歩く
犬が引っ張りながら歩いているときに、突然逆方向に歩いてみましょう。
逆方向にターンする際に大切なのは、犬のリードを一瞬だけ引くことです。
リードを一瞬だけ引いてすぐに緩めることで、犬は首が一瞬苦しくなるため、犬を叱ることに繋がります。
ただし、首の太い大型犬であれば思い切りリードを引いても大丈夫でしょうが、小型犬の場合は首に負担がかからないようにリードを引っ張る際の加減には気を付けましょう。
突然逆方向に飼い主が歩くことで、犬は飼い主の動きが読めなくなります。
「いままでは自分が散歩を先導していたのに!」と犬はパニックになり、またいつ逆方向に進まれるか気が気でなくなるため、定期的に飼い主のほうをチェックするようになるでしょう。
飼い主の行きたい道を歩く
犬の引っ張り癖を直すには、「犬の散歩」の意識を根本的に正す必要があります。
それは、飼い主の行きたい道を歩くということです。
上下関係が逆転しているときは、「犬の散歩に飼い主がついていく」形だったでしょうが、それを「飼い主の散歩に犬がついていく」というものに正してしまいましょう。
飼い主の行きたい道を歩くことで、犬は自分の思い通りにいかないことを理解して、徐々に引っ張り癖が治まっていくはずです。
毎日散歩コースを変える
犬に引っ張り癖がつくのは、犬が散歩コースを覚えているからかもしれません。
そのため、毎日散歩コースを変えてみましょう。
そうすることで、犬は「今日はどこに行くんだ?」と散歩コースがわからなくなり、飼い主のことを引っ張って先導しようとは考えないようになります。
飼い主の行きたいタイミングで散歩に行く
飼い主の行きたいタイミングで散歩に行くというのは、間接的に犬の引っ張り癖を直すしつけに繋がります。
おそらく、犬に催促をされて散歩に出かけている人も少なくないでしょう。
しかし、これは犬が飼い主に命令をして、飼い主がそれに応えたという形になります。
つまり、犬から服従訓練をされているということになるでしょう。
これを繰り返すことで、犬は「飼い主に命令をしたらなんでも聞いてもらえる」と理解するようになり、引っ張り癖に繋がってしまいます。
そのため、犬に催促をされても散歩に行くことなく、あくまで自分のタイミングで散歩に行くようにしましょう。
アイコンタクトをする
散歩中に、犬の名前を呼んでみましょう。
犬が振り向いたら思い切り褒めてあげて、ご褒美を与えます。
これを繰り返すことで、犬は名前を呼ばれていなくても飼い主の目を見るようになります。
アイコンタクトは犬のしつけの基本にもなるため、散歩中は犬の目を見るように心がけましょう。
犬の引っ張り癖のしつけをする際の注意点
犬の引っ張り癖のしつけをするときには、何点か注意しなければならないことがあります。
これらを守りながらしつけを行うことで、犬はストレスなくスムーズにしつけに取り組むことができるでしょう。
叱らない
犬の引っ張り癖は直すときに、叱っても意味がありません。
そもそも引っ張っているというのは、犬が飼い主を下に見ていることが考えられますし、首が絞まって興奮状態になっている可能性もあります。
そのため、犬の引っ張り癖のしつけをする際は、叱らずに突然逆方向にターンするなど、犬にとって考えもつかない行動をすることがおすすめです。
引っ張り返さない
犬の引っ張り癖のしつけをする際は、引っ張り返さないように気を付けましょう。
これは、先述したように抵抗反射に繋がります。
大切なのは、しつけの際は一瞬だけリードを引っ張るという点です。
イメージとしては、細い紐で繋がれた砂袋をイメージしましょう。
ゆっくりと引っ張っても紐が切れることはありませんが、一瞬だけ紐を引っ張ると紐は切れてしまうはずです。
紐を切るようなイメージでリードを引っ張ることで、犬は瞬時にいけないことをしたということを理解するようになります。
犬の引っ張り癖のしつけ以外の直し方
犬の引っ張り癖は、しつけ以外の方法でも改善することがあります。
しつけ以外には、どのような直し方があるのでしょうか?
生活環境を改善する
ストレスが犬の引っ張り癖の原因であれば、原因となるストレスを解消してあげる必要があります。
ドッグランなどで思い切り走らせることや、外でいっしょにボール遊びをするなどをすれば、犬のストレスが解消されることが期待できるでしょう。
このように根本的な原因を解消することで、引っ張り癖は改善されるはずです。
ご褒美の与えるタイミングに気を付ける
犬の引っ張り癖のしつけをしているときは、ご褒美の与えるタイミングに気を付けましょう。
基本的には、犬のことを一瞬引っ張ったときにご褒美を与えます。
また、犬の名前を呼んで飼い主のほうをチェックしたときに与えてもよいでしょう。
大切なのは、犬が「飼い主を引っ張ったからご褒美がもらえた」と勘違いさせないことです。
勘違いさせないために、かならず飼い主の行動で犬が反応したときにだけご褒美を与えるようにしましょう。
リーダーウォークについて
犬と快適に楽しく散歩をするために、リーダーウォークを覚えましょう。
まずは、リーダーウォークとはなにかを理解しておく必要があります。
リーダーウォークとは?
リーダーウォークとは、犬が飼い主と付かず離れずの距離を歩くことをいいます。
その際のリードは、少したるんでることが理想です。
リーダーウォークはその名のとおり、リーダーである飼い主のペースに合わせて犬が歩くものです。
引っ張り癖のある犬には、リーダーウォークを教えるのがよいでしょう。
リーダーウォークのメリット
リーダーウォークのメリットとしては、飼い主と犬がお互いに楽しんでマイペースに散歩をできることが挙げられます。
また、リードを引っ張って首が絞まり興奮することがないため、犬は落ち着いて散歩の時間を過ごしてくれるようになるはずです。
また、リーダーウォークをすることで上下関係がはっきりして、今後のしつけもしやすくなるでしょう。
犬の散歩でリーダーウォークを行う方法
それでは、犬の散歩でリーダーウォークを行う方法について解説します。
どんな犬でもリーダーウォークを行うことはできるので、諦めずに取り組みましょう。
ハーネスで行う
犬のリーダーウォークのしつけをする際は、ハーネスで行うとよいでしょう。
首輪でリーダーウォークのしつけを行うと、引っ張り癖のある犬であれば首に負担がかかってそれどころではなくなってしまいます。
そのため、リーダーウォークのしつけには犬の身体にフィットしたハーネスを選ぶことがおすすめです。
リードがたるんでいることを正しいと理解させる
リーダーウォークを犬に教えるには、リードがたるんでいることを正しいと理解させる必要があります。
そのため、犬の好きなおやつを用意して、飼い主の左側におやつを持っていきましょう。
この際に、犬を誘導するように左側に付かせます。
犬が飼い主の左側に付いたら、犬を褒めてあげてそのまま左側に持っているおやつを与えましょう。
そして数歩先に行ってから、ふたたび同じことを行います。
これを何度も繰り返すことで、犬は「飼い主の左側に付くと褒められる」と理解するようになるでしょう。
最終的には首輪で行う
犬がハーネスを着けた状態でリーダーウォークができるようになったら、最終的に首輪を着けて行いましょう。
首輪でも同様にリーダーウォークができるようになれば、しつけは完了です。
リーダーウォークは時間がかかる
リーダーウォークはほかのしつけと違い、かなりの時間をかけて行います。
そのため、今日明日にリーダーウォークを犬が覚えるというのはないことを覚えておきましょう。
リーダーウォークのしつけは根気が必要で、飼い主が先に根負けしてしまうことも珍しくありません。
ですが、リーダーウォークは飼い主と犬がお互いに快適に散歩を楽しめるようにするために、必要なしつけでもあります。
時間がかかることを理解した上で、リーダーウォークのしつけに取り組むようにしましょう。
まとめ
犬の引っ張り癖の原因はさまざまですが、原因の多くが飼い主によるものだといっても過言ではありません。
日頃から上下関係が逆転していることで引っ張り癖は起こりますし、犬の行きたい方向についていっている飼い主にも問題があります。
犬の引っ張り癖を直すためには、飼い主の意識から変える必要があるでしょう。
大切なのは、「犬の散歩」ではなく、「自分の散歩に犬がついてくる」という意識です。
この大前提を変えなければ、犬の引っ張り癖が改善することはないでしょう。
また、引っ張り癖を直すためにリーダーウォークを教えることもおすすめです。
飼い主と犬が楽しく散歩ができるように、引っ張り癖はもちろん、リーダーウォークのしつけにも取り組んでみてはいかがでしょうか?