【ドッグトレーナー監修】『犬のわがまま』を丸ごとフォーカス。わがままな犬にさせないコツとは
「最近うちの子(犬)、ちょっとわがままになってきたかも…」と、感じることはありませんか。わがまま、というのは字のごとく、自分の意思を通そうとする行為ですね。
また、他者や周囲の事情などを考慮せず、自分勝手、身勝手にふるまう様子のことを指します。
もし、愛犬にわがままの兆候が見られたら、少しの修復が必要かもしれません。今回は「犬のわがまま」について、捉え方や治し方のコツを、ご一緒に見てまいりましょう。
もくじ
わがままは、生まれつき!?
生まれつき、わがままな犬はいません。こうハッキリと書いてしまうと少々語弊があるような気もしますが、やはりどう考えてみても、生まれつきのわがまま犬というのは、いないのではないでしょうか。
性格や気質というのはそれぞれの親犬から受け継いで生まれてきます。
わがままというのは、言わばその持って生まれた個性を、望ましくない方向に意図せず伸ばしてしまった結果ではないでしょうか。
わがままエピソードあれこれ
ここでみなさまにお伺いします。犬がわがままだと感じたことがありますか?
ある調査によると、この質問の回答には以下のようなものがありました。
≪回答例≫
- かまってもらえないと、トイレをわざと失敗する
- カフェなどで、たいくつでつまらないと吠えてしまう
- あのおやつが欲しい、と、甲高い声で吠える
- 抱っこを要求するために、飼い主の顔を見て吠える
- 好みの食事しか食べない
- 気にいってくれていた食事でも、ある日突然食べてくれない
- せっかく手作り食をあげても、野菜だけ残す
- 散歩のとき、行きたい方向へ引っ張る
- 少しでも離れると、キュンキュンと鳴く
- 休日は遅くまで寝ていたのに、朝早くから吠えて飼い主を起こす
- 犬が寝ているときに触ると、怒る
- サークルやケージに絶対に入らない
- おいで、と呼んでも来ない
- 命令をしても、わざと聞こえないふりをする
- 父の言うことしかきかない
- 子供をバカにして、子供のことを咬む
- 叱ると、反抗的、ふてくされる態度をとる
- 散歩時に飼い主の前を歩く
- ブラッシングをする際、咬もうとする
- 散歩の途中で歩きたくなくなると、止まる、動かない
たくさんの「わがままだと飼い主が感じること」がありますね。これらの例を見て、「それそれ!うちも一緒~!」と、思い当たる項目が多かった方は注意が必要です。
何の注意かと言うと、犬だけではなく、飼い主さんの対応も含め、もう一度、わがままについて、考えてみましょう。
■犬という生きものへの理解
上記の例に挙げられたものは、本当に犬のわがままな性格が問題なのでしょうか。知らずしらずのうちに、その行為を「まあ、いいか」と容認してしまってはいないでしょうか。
犬は人に近い感覚を持った生きものですから、なんとなく擬人化をして、人と同じような感覚で犬に接してしまうのも、無理もない話なのかもしれませんね。
しかし、犬は、もともと野生動物から派生した伴侶動物です。可愛らしい顔と、ぬいぐるみのような美しい毛並みを持っていても、大きさに関わらず、すべてオオカミを先祖に持ちます。
その名残りとしてわかりやすいのは、歯の構造です。
人や草食動物は食べ物を咀嚼するための「臼歯」(奥歯)を持つのに対して、犬の歯はこの臼歯を持ちません。その代わりに、獲物を切り裂くために使う牙を持っています。
ここで申し上げたいのは、どんなに愛くるしい見た目をしていても、基本的には野生時代の本能を持つ動物である、ということです。
広い視野でわがままを観察する
愛犬のわがままについてお悩みの飼い主さんに、その状況をよくよくヒアリングしてみると、驚くほどに、犬の様子を観察していない方が多いものです。
例えば「愛犬のわがままなムダ吠えに困っています」という飼い主さんに対して、こんなふうに状況を聞いてみると、あまり歯切れの良い答えが返ってこないことがあります。
- それはどんな状況でよく見られますか?
- そのとき、飼い主さんはどのような対応をしていますか?
- 吠えている犬は、どのような表情をしていますか?
- 普段とは、耳、歯、尻尾の状態は違いますか?
犬のわがままを本気で治そうと思ったら、まずは状況把握が大事です。
ですから、このような質問をして、ひとつひとつ、問題となっている行動の輪郭をあぶりだしていく作業が必要なのですが、大体の飼い主さんは、答えに詰まってしまいます。
つまり、「うちの子、わがままで…」とおっしゃる飼い主さんの多くは、わがままと感じる、そのひとコマにだけに意識がとらわれてしまい、他の状況については把握どころか、観察していないのが実際のところです。
これでは、わがままを解決するアプローチを探ることは難しいでしょう。ですから、わがままの改善に大切なのは、まず、俯瞰して犬の様子を見る、広い視野で犬の状態を観察するということなのです。
わがままの悪循環パターン3選
ここからは、具体的なケースを使ってご説明します。よくある悪循環になりやすい、犬の行動と飼い主さんの対応についてご紹介をします。
行動に対して、力で静止する
犬がわがまま行動をとった際、「いけない!ダメ!!!」と、大きな声で叱れば、いったんは行動を止める犬がほとんどだと思います。
ただし、これには他の問題もついてきます。
その問題とは、犬が叱られるのに慣れてしまうこと、また、叱ったはずなのに、また同じことを繰り返し、永遠にこれが繰り返されること。
あるいは、叱る強さ加減によって、犬が委縮しすぎてしまい、飼い主さんに対しておびえるようになってしまうことなどがあげられます。
また、犬は人の言葉が分かりませんが、思一心不乱に怒りまくる飼い主さんの態度に驚いて、いったんは行為をやめる姿勢を見せるでしょう。
でもそれは、本当の理解ではなく、どうすれば飼い主さんのご乱心を鎮めることができるか、と、考えて取った行動にすぎません。
当然ですが、叱ったり怒ったりの他、叩く、蹴るなどの暴力行為で、わがままが止めはずもありません。
煩わしいので、ハイハイと従う
わりと多いケースですが、例えば犬が「ワンワン!(あのおやつが欲しい)」、「ワンワン!(抱っこして)」と、欲求のままに、飼い主さんへ吠えることで意思を伝え、してほしい行為を要求することがあります。
俗に、要求吠えと呼ばれるものがこれにあたります。犬と飼い主さんの気持ちが通じ合っているからこその行為とも取れますが、これもわがままを増長させてしまう対応のひとつです。
こうしたやり取りが続くと、犬は「要求すれば、願いは通るんだ!やった!」と学習していきます。この行為はエスカレートする傾向にありますので、得策とは言えません。
対応をコロコロ変える
これがわがままに効果的!と、ネット記事で見た。それを今日やってみたけど、全然効かなかった。効果がなかったから、明日は別の方法でやってみようかな。という飼い主さんもいます。
インターネット上には「これでOK!一発で愛犬のわがままが直る」とか、「狂犬が急におとなしくなった、そのヒミツとは?」など、愛犬家の興味をそそるようなタイトルがつけられた、数多くの対策法が存在します。
しかし、正直なことを書きますと、そんなマジックや手品のようなテクニックは、存在しません。
情報が無数に流れている時代。手法をたくさん見聞きすることは大事ですが、一度やって、効果がなかったからと、次々に対応を変えるのはあまりおすすめしません。
たくさんの手法の中から、愛犬のわがままにぴったりフィットした治し方を選ぶのは大変ですが、うちの犬にはこの方法が合っているのではないかな。
そう思ったなら、少し続けて一貫した対応を取るのがいいかと思います。
今日はこれ、明日はこれ、と、コロコロと対応が変わってしまっては、犬は混乱してしまいます。そうなると、犬は頼れる者が不在になりますから、ますます、自分の欲望のまま、我が道を歩くようになってしまいます。
これはわがままか?
前出のアンケート結果の中で、「これは、わがままのせいではないなあ」と思うものもあります。
代表的なものは、ご飯を食べない。おやつしか食べない。
食欲にムラがある。などの食事関係。(野菜を残す、は除く)それから、散歩に行きたがらない、歩けなくなる。などの散歩関係です。(行きたい方向にグイグイ引っ張る、は除く)
食事管理
犬は自分で食事を選択、調理ができませんから、それらはすべて、飼い主さんに管理がゆだねられています。
総合栄養食であるドッグフードを食べない理由は、なんでしょうか。昼間にオヤツをあげすぎてしまったために食欲が沸かないこともあります。
犬の舌には味覚(みかく)があり、私たち人と同じように、食品に応じて認識される感覚が違います。
甘味、酸味、塩味、苦味、の中で、犬は甘味を感じる受動態機能が発達しています。
また、たんぱく質を多めに摂取する必要があることから、本能的に肉の風味が強いものを好みます。
ですから、過去に甘味の強いもの、また、肉の風味が強い食事を食べたことのある犬は、味覚を記憶しているため、うまみをあまり感じられない普段の総合栄養食よりも、特別な嗜好品である、オヤツを好む傾向にあります。
犬はあまり満腹感を感じにくい動物とされていますが、それでもオヤツを食べすぎれば、総合栄養食は食べてくれない、という状態になってしまいますね。
これは、他でもない、飼い主さんの管理不足に過ぎないと思います。わがままだ、と、一蹴してしまうのは考えものです。
歩きたがらない
歩きたがらない、途中で止まってしまう原因を考えてみましょう。
いくつかの理由があると思いますが、その中で注意したいのは、関節や腰に痛みがあるのではないか。というものです。
関節炎や関節脱臼、股関節の痛み、パテラ、椎間板ヘルニア、脊髄の損傷、過度の肥満、体質、老化、内臓系の病気、呼吸系の疾患、ケガ、神経のダメージ、などなど、身体的な理由から、散歩がつらくなっているのかもしれません。
「まだ若いから、単にわがままなだけ」と決めつけずに、こうしたことも視野に入れて、歩きたがらない理由を観察する必要があります。
身体的な面からだけではなく、メンタルも合わせてフォローしていく必要がります。
例えば、過去に散歩コースで怖い思いをしたとか、突然、大きなカミナリが鳴って驚いた経験があるとか、飼い主さんから見れば小さなできごとのひとつでも、犬にとっては心に傷を残す体験になっていた。というケースもあります。
また、幼少期の社会化が不足していた場合には、外の世界そのものが怖い、という犬もいますので、ただのわがままと捉えずに、丁寧に向き合っていく必要があるでしょう。
最善にして最短の方法
犬からの「あれが欲しい」「こっちに行きたいよ」という要求に応じているうちに、犬は「少し我を強く出せば、人はなんでも許してくれる」と学習してしまいます。
わがままを受け入れてもらうことが当たり前となってしまうと、それを受け入れてもらえない場合は攻撃的な態度をとるような犬も多いです。
(体のあちこちを触れないとか、ブラッシングをすると怒る、など)
犬のわがままを改善するには、飼い主さんとの二人六脚が必要です。ご家族が多いご家庭では、全員が一丸となり取り組むことが大事です。
わがままになっているかな?と感じたら、まずはよく観察をすることをおすすめします。どんなときに、誰に対してわがままを言うのだろう。
家の中と外では違うか、そもそも、この行動はわがままなのか、それ以外の理由があるのか。こうしたことを観察していきます。
観察の中で、気づくことがたくさんあるでしょう。
それが、わがままを改善するためのキーです。少し、回り道のような気がしますが、これが最善にして最短の方法ではないでしょうか。
今日からできる、わがまま改善策
- よく観察し、状況を把握する
- 常に愛犬を優先にしない
- あまり無駄に声掛けをしない
- わがままを叱りつけない
- 遊び、散歩、オヤツを、飼い主さんがしっかりコントロールする
- ごはんのときに、あまり様子を見続けない
- ごはんを食べないからと言って、追加トッピングをしない
- 置きエサをしない
- 一定時間ごはんを食べなければ、さげる(体調に変化がなければ)
- ドッグフードの内容を見直す
- 犬の要求にいちいち従わない
- 犬の顔色(反応)をうかがわない
まとめ
『犬のわがまま』を丸ごとフォーカス。
わがままな犬にさせないコツについて、ポイント抑えてご一緒に見てまいりました。「これ、あるある!」ということや、「うちはまだここまでわがままじゃないないな。えらい」など、それぞれに感じた思いがあるでしょう。
中段で【生まれつきわがままな犬はいない】と書きましたが、その意味は、わがままな犬というのは、必ずわがままにさせてしまった原因があり、そのほとんどは、飼い主さんのミスリードによるものなのです。
愛犬がわがままに感じられたら修復が必要ですが、これまでの道のりを少し振り返り、少しだけ絡まってしまった糸をほぐすような作業です。
地味ですが、大事なことです。
わがままを治したい、という気持ちから、ついつい叱ったり、時には怒鳴ったりしてしまいがちですが、いったんブレイクして、愛犬の心の声を聴いてみましょう。
きずなや信頼関係を見直してみることで、おのずと、わがままの軽減につながっていきますよ。