【ドッグトレーナー監修】今一度真剣に考えてみたい、犬の社会化トレーニングについて

犬の社会化という言葉を耳にしたことあると思います。

犬の社会化期とは、犬が人や他の犬、動物との関わり方を学んだり、人の社会で出会う様々な刺激に慣れるための大事な時期。

スポンジが水を吸うようにグングンと色々なことを吸収する子犬期は、これから一緒に暮らす生活の免疫をつける期間ともいえます。

今回は、性格形成に大切な、社会化期の過ごし方について、その効果的な時期と、社会化不足にまつわる様々なお悩みについて、みなさまとご一緒にみてまいります。

 

犬の社会化

 

犬の社会化トレーニングとは、犬が人と生きていくために必要な経験をさせることを指します。

母犬から離れた子犬が、飼い主さんと共に人の世界で生きていくために、日常生活、社会にできるだけ早く慣れさせて、不安なく暮らしていくことが目的です。

社会化トレーニングは、人とのきずなをつくることや、問題行動の予防対策として必要不可欠なものです。

特に生後3週齢から12週齢を社会化期と呼ぶことが多いのですが、この時期は愛情やきずなを育みやすい時期にあたります。

また、様々な刺激や音、新しい場所などを受け入れやすい時期でもありますから、この時期に子犬の社会化を行うことが望ましいと言われています。

 

社会化に最適な時期

生後8週齢までは、母犬や兄弟犬と一緒にじゃれあいながら犬同士の社会性を養う時期です。

生後8週齢以降は人の家庭で人の生活に慣らしていく時期と言われています。

もちろん、それ以降も新しい体験をさせていくことが必要ですが、生後12週齢までが新しいものを受け入れる感度がピークになります。

その時期を過ぎてからは警戒心や恐怖心、自我などが強まる傾向にあります。そのため、生後12週齢までに様々な体験をさせることが大事なのです。

 

2019年6月に一部改正された動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)では、生後8週齢に満たない犬猫の販売ができないことになりました。

(※注1)そのため、犬を家に迎えられるのは生後8週齢以降からとなります。

そうすると、飼い主さんが子犬と社会化期を過ごす時間は、わずかに4週間程度しかありません。

ワクチン接種との兼ね合いや、体調を崩しやすい時期でもありますから、この週数に縛られることなく、子犬を迎える前から社会化トレーニングへの知識と理解を深めておく必要があります。

 

※注1 2019年6月に一部改正された動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)では、例外もあります。国の天然記念物に指定されている日本犬 6 種(柴犬、紀州犬、四国犬、 北海道犬、甲斐犬、秋田犬)は繁殖した人から飼い主に直接譲る場合に限り、生後7週齢(生後49日)での販売が認められています。

 

社会化不足によって起きる問題行動の例

では、十分に社会化のチャンスを与えられなかった犬には、どういった問題行動が見られるのでしょうか。例を見ていきましょう。

  1. 帽子やサングラスをかぶった人に対して吠える
  2. 老人、幼児など特定の年齢層の人に怯える
  3. 救急車のサイレンなどが聞こえると、いつまでも遠吠えをしている
  4. 他の犬を見ると震えるほど怖がる
  5. 自転車やバイクを見ると、吠え止まない
  6. 家族以外の人に対して警戒心が強すぎる
  7. 散歩が怖くて外を歩けない

これはほんの一例に過ぎません。こうした問題行動と言われる犬の行動については、社会化が不足していることが原因だと指摘されることがあります。

確かに、子犬を家に迎えてから1歳までの間に、ほんの数回しか外出したことがないだとか、動物病院に行く以外は外へ出ない、散歩も好きではないので行かない、というのでは、外の世界が怖くなってしまうのも仕方のないことですね。

だからこそ、早い時期から色々なものに「慣らす」というのが社会化トレーニングの持つ目的、意味であり、子犬育てに欠かせないトレーニングとも言えますね。

 

社会化トレーニング例

<子犬に経験させたい、社会化トレーニング>

  1. かかりつけの獣医師さん、動物看護師さんに抱っこしてもらうなど
  2. トリミングサロンを利用する可能性がある場合は、トリマーさんにあいさつに行く
  3. まだ散歩ができなくても、散歩コースになりそうな場所を抱っこやカートで通ってみる
  4. 車、電車、バスなど、乗り物を見せる
  5. 雷や花火の音を、動画サイトなどを利用して聞かせる(最初は小さい音から始めてください)
  6. 宅配業者さんに合わせて、顔を覚えてもらう
  7. 近所に犬を連れてあいさつに行く
  8. 玄関チャイムやガレージの音に慣らす
  9. 幼稚園、小学校などの周りを歩き、子供に慣らす
  10. ドッグランなど、犬のあつまりを遠くから見せる
  11. 芝生、マンホール、ウッドデッキなど、様々な地面の感触を体験させる

などなど、他にもたくさんの社会化トレーニングの内容があります。

 

 

社会化トレーニングの注意点

上記のような社会化トレーニングをご覧になってお分かりのように、つまり社会化とは、これから先に子犬が関わっていく人や物、音、環境を先回りして、少しずつ早い時期に慣らすことなのです。

ここで失敗しないようにするためには、子犬を驚かせないということが一番です。

この時期に怖い思いをしたり、嫌な印象が脳に刻み込まれてしまえば、のちのちの犬の性格にも影響します。例えば、飼い主さんの中には「社会化、社会化」と、熱心に取り組むすぎるあまり、犬が怯えて怖がっているにも関わらず、無理に他の犬に近づけたりする方がいます。

でも、それは逆効果です。子犬の心はデリケートですから、少しずつ丁寧に段階を踏んで進めることがとても大事です。

 

まだあなたが子供だった頃の記憶をたどってみると、小さな川にかかった橋を渡るときにとても怖かったとか、初めて聞いた花火や、祭りばやしの音にビックリしたとか、着ぐるみを着たマスコットが怖かったなど、大人になった今は平気でも、幼い頃は苦手だったというエピソードが必ずあるはずです。

 

その当時の気持ちを思い出してみれば、初めてづくしで不安な子犬の気持ちも、分かるのではないでしょうか。また、飼い主さんがリラックスして取り組むこともとても重要です。

 

 

子犬の気持ち

社会化の体験を、良い印象として刻むのに欠かせないのは、なんと言ってもほめることです。

子犬にとってはなにもかも生まれて初めて見るものばかりですから、興味と少しの怖さを感じながらあれこれと外の世界に触れていきます。

そのとき、子犬が頼りにするのは他でもない飼い主さんしかいません。ですから、飼い主さんが「大丈夫だよ。えらいね。なにかあったら守ってあげるから、安心してね」というような気持ちで、愛犬をほめながらサポートしていくと、子犬はグングンと自信を持って外の世界に慣れていきます。

 

自信を持って外の世界を楽しめるようになれば、飼い主さんとのコミュニケーションも取れてくるはずですから、要領をつかんでしまえば、長い散歩や、お出かけ、旅行、ドッグカフェなどにもトライしてみてください。

愛犬と一緒でなければ味わえない楽しみが広がっていきます。

 

がんばり過ぎないで

子犬の時期は、飼い主さんのやることがたくさんありますね。

トイレトレーニングに、甘噛み、拾い食い、ゴミあさり、食糞。

その上、社会化トレーニングもして、だなんて、もうノイローゼになりそう!という声も聞こえてきます。

本当にこの時期の飼い主さんは大変です。家族の協力が得られれば良いのですが、日中は仕事や学校で忙しく、あまり子犬にかける時間が取れない、という方もみえるでしょう。

そんなときは、がんばりすぎないことも一つの考え方です。

 

近所に知り合いがいれば、子犬を預けたりすることもできますし、思い切って、ペットシッターサービスや犬の幼稚園を利用することで、気持ちが楽になることもあります。

子犬の面倒をみるのがつらい、しつけがなかなかできない、社会化の時間が取れない、と、つらい気持ちで子犬に接すると、それは子犬にも伝わってしまいます。

そうなると、なかなか良い関係が育むのは難しくなります。

 

SNSを通して、同じ年ごろの犬を育てている仲間とつながってみると、意外に心が軽くなることもあります。

「うちも同じです」とか、「ほんと困っています~」などの同じような時期特有の悩みを話し合ったり、写真を見ながら「うちももう少しかも」と、ホッとすることもあります。また、先輩飼い主さんからアドバイスをいただけると心強いですね。

 

子犬の社会化は大事ですが、もっと大事なのは飼い主さんのメンタルです。

子犬は飼い主さんの笑顔が大好きですから、少し気楽にかまえて、あまりマニュアルにとらわれないほうが、結果として上手くいくというケースもあります。

 

社会化期を過ぎてしまったら手遅れ?

「うちの子は社会化期を過ぎてから迎えたから、もう手遅れでしょうか?」と悩む飼い主さんの質問についてお答えします。

あまりにも社会化、社会化不足、社会化期、といった言葉が一人歩きしてしまった結果、何週目までになど日数にこだわるあまり、こうしたお悩みを持つ方も少なくありません。

 

もちろん、早い時期、適切な時期と言われるのは生後13週程度とされていますが、子犬から飼う人ばかりではありません。ペットショップに長くいた子を引き取るとか、保護犬を迎えるなど、今は犬を迎え入れる状態も多様化しているのが実際のところです。

ですから、ネットや本などに書かれてある一般的な社会化マニュアルの時期にこだわることなく、状況に合わせてどんどん社会化を進めていく、そんな時代に突入しています。

と、いうわけで、この質問の答えは「いいえ、手遅れなんかではありませんよ。今からできることはたくさんあります」となります。

 

みんなの社会化エピソード

社会化トレーニングをされた方の体験談をいくつかご紹介します。

 

「うちの場合は、3回目のワクチンが終わる前からでしたが、子犬の社会化のために、頻繁に車に乗せて遊びに連れて行きました。

車で移動することが多いので、やっぱり車に慣らすことが大事だと思ったからです。

車の助手席にはドライブベッドを設置して、飛び出さないようにフック付きのものにしたので安心でした。私の友達にも預かってもらうことがあるかな、と思ったので、小さいときから時々お泊りをさせたりしました。

そのかいあってか、車の中ではドライブボックスで大人しくしていますし、友達や近所の方にもなついています。」

「私は社会化の一環として、動物病院が主催するパピークラスに参加しました。ワクチンが3回終了していないといけなかったので、生後4か月のときに行きました。

初めてクラスに参加したときには、バッグから出てこられず、なんとかバッグから出しても椅子の下に隠れたままでした。

先生は、無理しないで今日は様子を見せるだけにして。

と言ってくださったので、ちょっと恥ずかしい思いをしながらも、その日はそのまま見学をして帰りました。

でも、数回レッスンに通ううちに、だんだんと慣れてきて、同じ年ごろのお友達ワンコともあいさつできるまでになったときは感激しました。

その経験があったからでしょうか。今は犬にも人にもフレンドリーです」

 

 

まとめ

今回は、今一度真剣に考えてみたい、犬の社会化トレーニングについてお送りしてきました。

子犬にとって社会化はとても大事なことがお分かりになっていただけたと思います。

人は幼稚園や小学校で様々な体験をしながら大人になっていきますが、犬の場合は人に比べるととても期間が短いですから、あれも、これも、と、本当にたくさんのやることがあります。

ときに、飼い主さんにとっては少し負担と感じることもあるかもしれません。

でも、子犬に体験させたこと、教えたことは、必ず子犬の心の中に残ります。

15年くらい一緒に暮らす中のほんの一瞬のことに過ぎませんから、時が過ぎれば「あのときは大変だったけど、今のこの子があるのは、あの時期のおかげかな」とみなさん、懐かしく思われるようです。

 

補足としてお伝えしたいのは、子犬の性格形成は、社会化不足のみで決定されるわけではなく、もともと持って生まれた遺伝的要素も影響します。ですから、社会化が身に着くスピードはその子、その子によって違います。教科書どおりでなくてもいいのです。

もし、何かの事情で社会化が不足していたかも、と思われた場合には、個性に合わせて社会に慣らしていくことを続けてみてください。

「よし、やるぞ」と、あなたが決めた瞬間から、犬の未来は変わってきます。

 

2022.4.30 岩井 ゆかり

岩井 ゆかり

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・ジャパンケネルクラブA級トリマー

・ジャパンケネルクラブA級ハンドラー

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