ドッグトレーナーが教える!妥協しない犬の「待て」「来い」のしつけ
犬を飼う上で、「待て」と「来い」のしつけはかならず覚えなければならないといっても過言ではありません。
ですが、完璧に犬の「待て」と「来い」ができている人はどれだけいるでしょうか?
そこでこの記事では、妥協しない犬の「待て」と「来い」のしつけ方法についてご説明します。
犬の「待て」と「来い」のしつけをする前に気を付けること
はじめに、犬の「待て」と「来い」のしつけをする前に気を付けることについてご紹介します。
これらを省いてしつけを始めても問題ないかもしれませんが、スムーズにしつけに取り組みたいのであれば行っておいたほうがよいでしょう。
犬と仲良くなっておく
初対面の犬をしつけしようとしても、無理なのは犬のしつけを一度でもしたことがある人は知っているはずです。
そのため、犬に「待て」と「来い」のしつけをする前に、犬と仲良くなっておく必要があります。
すべてがそうではありませんが、ドッグトレーナーが預かり訓練で犬のしつけをする際は、預かってから約2週間を犬とのコミュニケーション期間とします。
その間は犬のしつけをすることなく、毎日散歩をしたり遊んだりして過ごすことが多いです。
もちろん散歩も短時間ではなく、1日1時間程度の散歩時間を確保して、いっしょに歩きます。
犬と遊ぶときにも、犬にボールを取りに行かせるだけではありません。
犬といっしょに走ったり声をかけたりして、犬に「この人といると楽しい!」と感じさせます。
そこで犬と仲良くなってから、はじめてしつけに取り掛かることができるのです。
コマンドに反応するよう意識させる
コマンドとは、犬への命令のことです。
今回でいう、「待て」や「来い」がコマンドになります。
コマンドは、犬のしつけをする上でとても大切です。
なぜなら、犬のしつけはすべてコマンドから始まるからです。
逆に、飼い主のいいたいことを察知して動く犬は、賢いとはいえません。
あくまで飼い主によるコマンドに犬が反応して動くことで、しつけは成立します。
そのため、「待て」や「来い」のしつけをする前に、「お座り」などの初歩的なしつけを行っておきましょう。
そこで犬はコマンドを出されることで、「飼い主がなにか命令してるんだ!」と理解します。
おもちゃ好きにさせておく
犬のしつけをするときは、ご褒美が必要になります。
おやつでもよいですが、おやつは肥満の原因にもなるためおもちゃをおすすめします。
おもちゃであれば、飼い主といっしょに遊ぶことでコミュニケーションになりますし、運動不足も解消されるでしょう。
ご褒美は褒めた後に与える
犬のしつけが成功したときは、ご褒美を与えます。
ご褒美の与えるタイミングは、犬を褒めた後です。
犬を褒める前や褒めるのと同時にご褒美を与えてしまうと、犬はご褒美をもらうことをモチベーションにしつけに取り組むようになってしまいます。
そうではなく、飼い主に褒められることをモチベーションとしてもらうには、褒めた後にご褒美を与えることがおすすめです。
犬の「待て」のしつけ方法
それでは本題である、犬の「待て」のしつけ方法をご紹介します。
「待て」とは、飼い主によるコマンドによって犬が飼い主から解放されるまで、その場で待ち続けることをいいます。
極端にいえば、雨が降っても飼い主の合図がなければ動いてはいけません。
そこまでしっかりと「待て」のしつけができれば、ほかの人や犬に迷惑をかける心配はないといってもよいでしょう。
犬の「待て」のしつけをする際に用意するもの
犬の「待て」のしつけをする際には、事前にロングリードを用意しておきましょう。
ロングリードとは、10m以上のリードのことです。
ロングリードを用意しておくことで、「待て」のしつけ最中に万が一犬が逃げてしまってもコントロールすることができます。
犬にコマンドを出す
はじめて犬に「待て」のしつけをする際は、通常のリードで構いません。
まずは犬に、「待て」とコマンドを出しましょう。
この際は、座っていても伏せていても構いません。
そして、その場から一歩離れます。
おそらく、コマンドを理解していない犬は飼い主についてきてしまうでしょう。
そこで、犬のリードを一瞬だけ引きます。
イメージとしては、一瞬だけ犬の首が締まる程度の引っ張り方です。
そうすることで犬は一瞬だけ苦しさを感じるため、「悪いことをした」と認識します。
犬を元いた位置に戻す
犬が「待て」のコマンドを出してもついてきてしまった際には、先述したようにリードを一瞬だけ引きます。
そして、犬を元いた位置に戻しましょう。
そこで再度「待て」のコマンドを出します。
また一歩、犬から離れましょう。
まずは、これを何度も繰り返します。
犬が動かなかったら思い切り褒める
もしも、犬が「待て」のコマンドを出した後に一歩離れて、ついてこずにその場で動かなかったら、「待て」のしつけは成功です。
その際は、犬がいままでリードを引っ張られて苦しい思いをした分、思い切り褒めてあげましょう。
はじめて飼い主のコマンドで「待て」が成功したときには、恥ずかしがらずに犬を思い切り褒めてあげます。
「えらい!すごい!」などと身振り手振りで犬に伝えて、ご褒美としておもちゃを与えていっしょに遊びましょう。
そうして褒めることで、犬は「待てといわれたら動いたらダメなんだ!」と徐々に理解していきます。
「待て」を強化する
犬から一歩離れても犬が動かなくなったら、徐々に「待て」を強化していきましょう。
いままで犬から一歩離れていたのを2歩、3歩と距離を伸ばしていきます。
また、待つ時間を延ばしてもよいでしょう。
何度も根気よく行うことで、犬の「待て」は強化されていくはずです。
ロングリードを使用する
犬が通常のリード分を待てるようになったら、次はロングリードを使用してみましょう。
ロングリードを使用すれば、10mの「待て」のしつけも可能です。
しつけの手順はすべて同じですが、しつけをしている最中は犬が飼い主のことをしっかり見ているかをチェックしながら行いましょう。
ノーリードでチャレンジする
犬がロングリードでもしっかりと待てるようになったら、最終的にノーリードでもチャレンジしてみましょう。
意外にも、ノーリードになった瞬間に「待て」のしつけができなくなる犬もいます。
それまではリードが着けられているという緊張感があったのでしょうが、ノーリードになれば犬は自由に走り回ることが可能です。
そのため、ロングリードである程度犬が待てるようになったからといって、過信してはいけません。
犬が突然逃げ出しても対応できるように、ドッグランや家の庭など、戸締りをしっかりとした上で行いましょう。
コマンドを何度もいわない
犬の「待て」のコマンドで大切なのは、コマンドを何度もいわないことです。
コマンドを出すのは一度だけで、それ以降に犬が動いてしまった場合にはしつけは失敗ということになります。
おそらく、ほとんどの人が犬の「待て」のしつけをする際に「待て!待て、待てよ~、待て、待て…よし!」などといっているでしょう。
このように何度もコマンドを出してしまうというのは、犬を信用していない証拠です。
犬を信用していれば一度のコマンドでよいですし、犬を待たせている間も犬のほうを見る必要がありません。
また、何度もコマンドを出してしまうと、犬はコマンドの大切さが薄れてしまいます。
そのため、犬に「待て」のコマンドを出す際は、一度だけはっきりと「待て!」で十分でしょう。
いろいろな環境で行う
犬の「待て」のしつけをする際は、いろいろな環境で行うことをおすすめします。
人気の少ない場所ばかりで行っていると、静かな環境でしか飼い主のいうことを聞かなくなってしまいます。
そのため、ドッグランなどほかの人や犬が多い場所で「待て」のしつけをすることで、しつけの強化に繋がるでしょう。
特に近くてほかの人や犬が楽しそうにはしゃいでいるときに行うことで、犬は「楽しそうだな…でも飼い主にコマンド出されてるし…」と誘惑に負けずにしつけに取り組んでくれるようになります。
犬の「来い」のしつけ方法
それでは最後に、犬の「来い」のしつけ方法を解説します。
「来い」は、飼い主のコマンドで犬が飼い主の股の間まで来ることをいいます。
「訓練競技会に出たい!」と考えている人以外は、犬を呼んだら近くに来る程度の認識でもよいかもしれませんが、万が一のことを考えるとしっかりと呼びのしつけをしておくことがおすすめです。
犬の「来い」のしつけをする際に用意するもの
犬の「来い」のしつけをする際にも、「待て」と同じようにロングリードを用意しましょう。
「来い」のしつけは犬が動いても叱られないため、「待て」のしつけよりもやりやすいはずです。
犬の「来い」のしつけは気楽に
犬の「来い」のしつけをする際は、リードを持ちながらもう片方の手でおもちゃを持って行います。
まずは、犬と仲良く遊びましょう。
そして遊んでいる最中に、「来い!」のコマンドを出します。
その際は、飼い主のおへそあたりにおもちゃを持っていきます。
そうすることで、犬はおもちゃがほしいため飼い主のもとへくるはずです。
そこで思い切り褒めてあげて、ご褒美として持っていたおもちゃを投げてあげましょう。
ロングリードを手繰り寄せる
遠くにいる犬を呼ぶしつけは、ロングリードを使用します。
飼い主のもとまで犬が戻ってきてほしい場合には、ロングリードを自分のもとまで手繰り寄せましょう。
そうすることで、ほぼ強制的に犬は自分のもとまで戻ってきます。
そこで、犬を思い切り褒めてあげましょう。
そしてもちろん、最後にはご褒美を与えます。
これを何度も繰り返すことで、犬は「来いと呼ばれたら飼い主のもとへ行けばいいんだ」と理解するようになるはずです。
ノーリードの場合はコツが必要
最終的には、「待て」のしつけと同様にノーリードで「来い」のしつけを行います。
ノーリードでは犬を手繰り寄せることはできないため、コツが必要です。
それは、「犬から逃げること」です。
犬は、逃げるものを追う習性があります。
子どもの頃に「犬に噛まれた」という人も、犬から逃げてしまったからという理由が多いでしょう。
その犬の習性を利用して、犬に「来い!」といいながら逃げます。
犬は逃げる飼い主を追おうとするため、自然と手元まで戻ってくるはずです。
ちなみに、犬から逃げることで犬は走り出します。
この走り出すという行動を癖にさせることで、「来い!」のコマンドとともに大急ぎで戻ってきてくれるようになるでしょう。
ドッグスポーツであるフリスビーをする人は、ほとんど全員がこの「来い」のしつけ方法を行っているはずです。
「来い」のコマンドは何度いってもよい
「待て」のしつけは一度しかコマンドを出してはいけないといいましたが、「来い」のしつけはそうではありません。
もちろん訓練の観点でいえば、「来い」もコマンドを一度しか出してはいけないでしょう。
しかし、「来い」のしつけに関しては犬がなるべく早くに戻ってきてほしいため、犬から逃げながら「来い!来い!」と何度もコマンドを出しても問題ありません。
ただし、最終的には一度のコマンドで自分のもとへ戻ってきてもらうようにしましょう。
正しい「来い」の位置
犬のしつけをする上で、正しい「来い」の位置は、犬が飼い主の股の間にくることです。
小型犬であれば、飼い主の膝の間くらいに頭がくることをいいます。
「来い」のコマンドを出した後に犬が飼い主のもとまで走ってきて、飼い主の目の前で座ることが、訓練の観点からいう「来い」のしつけです。
まとめ
犬の「待て」と「来い」のしつけは、犬を飼う上でとても大切です。
ドッグランなどでほかの犬と喧嘩をしたときや、散歩中に突然首輪が外れて逃げ出したときなど、さまざまなシーンで「待て」と「来い」は使用します。
特に「待て」のしつけは、犬を辛抱強くさせることもできるでしょう。
しかし、「待て」と「来い」のしつけは、お互いの信頼関係がなければうまくいくことはありません。
そのため、まずは犬といっしょに散歩をしたり遊んだりして、コミュニケーションをとりましょう。
犬が「この人といると楽しい!」と認めてくれるようになってから、しつけに取り組むことをおすすめします。
そして、犬のしつけはどんなものでも楽しんで行うようにしましょう。