【ドッグトレーナー監修】『おいで』のしつけを失敗した方のためのリセットトレーニング
今までは「おいで」と言うと喜んで来てくれたのに、最近は、おいで、と言うと逃げるようになってしまいました。
私は犬から嫌われてしまったのでしょうか。
それとも、うちの犬がずる賢くて、わざとやっているのでしょうか…。こうしたお悩みは珍しいことではありません。
きちんと教えたにも関わらず、何らかの原因があって「おいで」のしつけがこじれてしまったのですね。今回は、こうした「おいで」ができなくなった原因を探りながら、もう一度、愛犬に「おいで」を教え直すリセットトレーニングの方法をお伝えします。
もくじ
おいで、を拒むのには理由がある
犬が「おいで」を拒むようになったら、そこには必ず何らかの理由があります。
え?思い当たるようなことはないけど?と思った方でも、よくよく記憶の紐をといてみましょう。
大きく分けると、理由は2つ。
ひとつは、「おいで」にまつわる良くない印象が染みこんでしまったため。
もうひとつは、犬が飼い主を信頼できないと感じたためです。では、次の項では具体的な失敗エピソードをみてみましょう。
おいで、の失敗例5つ
おいで、という行動に、良くない印象が刻み込まれた例には、飼い主が信頼できなくなるような、こうしたことが多くあります。
- 「おいで」と呼ばれたけど、どうすればいいのか理解できなかった(理解の定着不足)
- 「おいで」と呼ばれたけど無視したら、鬼ごっこが始まって楽しかった(目的のすり替え)
- 「おいで」と呼ばれて行ったら、すぐにハウスに入れられ、留守番させられた(嫌悪印象)
- 「おいで」と呼ばれて行ったら、なんでさっさと来ないんだと、叱られた(嫌悪印象)
- 「おいで」と呼ばれて行ったら、苦手な歯磨きを無理やりされた(嫌悪印象)
リセットトレーニングをする前に
「おいで、がうまくできないなんて恥ずかしい。愛犬に嫌われたような気がしたし、少しバカにされているような気持ちになり、とても傷つきました。」こうおっしゃる方はたくさんいます。
確かに、それまで「おいで」に喜んで反応していたにも関わらず、あるタイミングで行くのを拒むという様子には、それ相当の理由があるはずです。
上記のような例5つのいずれかかもしれないですし、または何種類かのできごとがミックスされた結果かもしれません。
さらに言えるのは、そうした出来事とは別に、他の理由からあなた自身を信頼できなくなったために、犬が心を閉ざしてしまう場合があるということです。
犬の心が凍り付いてしまったなら、まずはその原因について考える必要があります。
果たして、傷ついたと感じたのは飼い主だけでしょうか。
犬は違う場面でもっと深く傷付いてしまったために、「おいで」に抵抗を覚えたのかもしれません。
少し厳しいようですが、来なくなってしまった原因を見つけられないばかりか、かすりもしなかったとしたら、こうしたケースでは修復が難しいことがほとんどです。
犬が心を閉ざすには必ず原因があります。
それは飼主さんにとっては、ほんのささいなことかもしれません。
でも、原因を探ることをあきらめずに、道のりを振り返って考えることが大切です。
一見面倒に感じますが、クローズしてしまった心の扉を開ける鍵を見つけ出すための、大事な作業とも言えます。それほどまでに「おいで」と、信頼関係は密着していることが多いのです。
だからこそ、リセットが必要です。
あきらめないで!リセット開始
なんとなくでもいいので、失敗してしまった原因の手掛かりが見つけられたなら、リセットトレーニングをスタートさせましょう。
ここで、極端に自身を責めたり、必要以上に過去の後悔に苛まされるのはあまり良くありません。
気持ちを切り替えて再スタートさせる。
それがリセットトレーニングです。また、〇歳を過ぎてしまったから無理かも、などといった、根拠のない説に振り回される必要はありません。
大事なのはあなたと愛犬の関係です。「教え直すぞ!」と心を決めたら、やることはただひとつ。
早い段階での修復です。
リセットして教え直すのは、早ければ早いほうがいいのです。
では、ここからは、具体的なリセットトレーニングの方法をお伝えしてまいります。
リセットトレーニング★
「おいで」のリセットトレーニングで必要なのは、まず、安心な環境です。
落ち着いてできる家の中がベストでしょう。
多頭で飼っている方は少し工夫が必要ですが、できれば一頭と一人で教えたいところです。
やり方は以下のとおりです。
最初は部屋で、次は廊下で、玄関先で。
成功に合わせてステージを変えて、体験回数を増やしていきましょう。
用意するもの、準備
- 普段はあまり食べないような、愛犬が好きで匂いの強いおやつ
- いつもの服装
- 気が散らない環境
- 盛大に褒める準備
- 失敗しても責めない心
やり方
- 美味しいおやつを用意し、ポケットの中に入れておきましょう。できれば胸ポケットがおすすめです。
- 犬がこちらを意識していないときに飼い主は室内に座ります。愛犬の名前と「おいで」のかけ声を、楽しそうに呼びかけます。
(「〇〇、おいで」というような感じです。これには意味がありますので、テクニックの項で解説します) - 犬が手元に来たら、すぐに褒めながらおやつをあげます。
え?たったのこれだけなの?と、思われた方もいらっしゃるでしょうか。
そう。おいでのリセットトレーニングに、ウラワザはありません。
基本の動作を丁寧に教え直すことが大事なのです。ただ、いくつかの抑えておきたいポイントがありますので、これらのテクニックを合わせて使い、効率よく犬の脳と心にインストールさせましょう。
成功率を上げるためのテクニック
かけ声を統一する。
例えば、「おいで」、「カム」、「来い」、など、その時々によってとか、家族によって違うかけ声で呼ぶ、というのはあまり良くありません。
犬のトレーニングは、おいでに限らず、すべてワンアクション、ワンコマンドが向いています。
つまり、ひとつの動作に対して、ひとつのかけ声で統一してしまうということです。
ですから、リセットトレーニングの場合においても、それまで使っていたかけ声でも、または新しいかけ声でもどちらでも構いませんので、とにかくひとつのかけ声にしぼって教え直しをします。
タイミング
「おいで」の練習は、タイミングも大事です。
寝起きでまだぼんやりとしているときや、他のおもちゃに集中して遊んでいるとき、食後で満腹状態であるとか、散歩の後で疲れているとき、それから、興奮しているときや、トロンと眠い様子の時もあまり向いていません。
では、良いタイミングと言うのはどんなときでしょうか。
それは、遊びたいモ―ドのときで、ちょっと空腹。
飼い主がかまってくれないかな?一緒に遊びたいな、と、チラチラとこちらを意識しているときがベストなタイミングです。
こう書くと、なかなかそのタイミングを見つけるのが難しいと感じられるかもしれませんね。
でも、愛犬の様子を見ているうちに、なんとなく「今かな?」というタイミングが分かってきます。
目標=成功させる
「おいで」を教えるのに最も大事なのは、成功をさせることにあります。
失敗を何度重ねても定着率は下がっていきますから、悪循環のスパイラルに入ってしまうというわけです。
ですから、チャレンジの回数は少なくても、確実に成功させる、というのを目標にすると、定着率がグンとUPします。
成功のために必要なアイテム
このリセットトレーニングでは、普段はあまり食べないような、愛犬が好きで、においの強いおやつを使用します。
これには様々な考え方があると思います。
中には「え?おやつで犬をつるなんて…。信頼関係で来るべきじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、それが本来のあるべき姿であることは、間違いありません。
しかし、そうした考え方は、一度どこかに保存しておき、リセットトレーニングでは、視野を広げて新しい考え方を取り入れてみましょう。
なぜ胸ポケットなの?
できればおやつは胸ポケットに入れて教えてほしい、とした理由について説明をします。
「おいで」をできるだけ効率良く教えるためには、最初に一連の動作をショートで導入させるのが大事です。
ですから、「おいで」のあとに愛犬が走ってこちらに来たら、すぐにおやつを与えて、「おいで」という言葉と、「おいしいおやつ」を結び付けて覚えてもらいたいのです。
そのため、すばやくおやつを出す必要があるのですが、パンツやエプロン、ジャンパーの左右ポケットからおやつを出すと、犬はたちまち、飼い主ではなく、左右のポケットに意識を集中させてしまいます。
これでは、飼い主のところに来たというよりは、左右ポケットに来たという印象になりませんか。
ところが、胸ポケットは飼い主の顔に近い距離にあるため、犬が胸ポケットに集中した場合でも、おのずと飼い主の顔を覗くような形になります。
これを利用し、最終的には、飼い主の顔を見ると(行動)→美味しいものが食べられる(報酬)といったことが犬の脳に刻まれて定着するので、他のしつけを教える際にも役立ちます。
「名前」プラス「おいで」が効果的な理由
さて、やり方を項でお伝えした「〇〇、おいで」といった、「おいで」のかけ声の前に愛犬の名前をプラする理由についてお話をします。
実は、急に「おいで」というかけ声だけが投げかけられても、犬が気づかないことがあります。
それは、意識が他にむいている場合などが多いのですが、〇〇と、自身の名前を呼ばれることで犬は、ん?と、気づき、続けて「おいで」とかけ声がかかれば、ああ、来いって言われているのか。
と、すぐに行動に移ることができます。
つまり、「おいで」の前に名前をプラスすることで、パッと意識が飼い主に向けられるため、行動の成功率が上がる、というわけです。
しつけの3ステップ
しつけ、トレーニングを犬が覚えるまでには、3段階のステップがあります。
それは、1、導入(きっかけ)。2、反復。3、定着です。トイレトレーニングでも、ハウストレーニングなどもそうですが、まずは1の導入です。
「おいで」の場合では、においの強いおやつを使って、「おいで」というかけ声(コマンド)と、飼い主のもとへ行くという動作(行為)。
それに従うと、とびきり美味しい特別なおやつをもらえる上に褒められる(報酬)。
という一連の流れを、一気に教えてしまいます。
あとは、2の反復でくりかえして成功させ、3の定着で身に着けてしまえば、しつけ、トレーニングは完了です。
失敗しがちなパターン
上記の3段階のステップを踏んで犬は学習していきますが、ここで失敗しがちなのは1~3のステップのうち、どれだと思われますか?
答えは2の反復です。
飼い主の多くは、1の導入が成功すると、もう3の定着まで完了したと勘違いします。
そのため、まだ犬の中では2の反復の段階であるにも関わらず、「え~、覚えたのに失敗するなんて。わざとやっているのかな?」というように、思い違いをしやすいのです。
でも、わざと間違えたのではなく、それはまだ反復成功回数が足りていないだけです。
しつけトレーニングでこじらせてしまうケースのほとんどは、実はここに原因があることがほとんどです。
もらい逃げ、を防ぐには
「おいで」で犬が来た後に、おやつだけをもらって、サッといなくなってしまうことはありませんか。
俗に「おやつのもらい逃げ」と呼ばれていますが、飼い主の近くまでは来るのに、残念ですね。
おそらくこれが癖付いてしまっている犬というのは、おやつを渡す場所に問題があります。
「おいで」の終わり方は、近くまで来たら良し、というように、なあなあなフィニッシュになってはいないでしょうか。
これを防ぐためにはフィニッシュの場所と動作をキッチリと定位置に修正する必要があります。
小型犬の場合には飼い主の膝の上まで登らせて、膝の上でおやつを与えると良いですよ。
しかし、中、大型犬については、小型犬のように膝の上まで登らせることはリスキーです。
なぜなら、他のシーンでの人への飛びつき、転倒などのマイナートラブルに結びつくことが生じることがあるからです。
そのため、中、大型犬では、飼い主の正面まで来たら「おすわり」をさせ、お尻を下についた状態でおやつをあげます。
ここでのポイントは、「お尻をついた状態」でおやつをあげることです。
ぜひ、トライしてみてください。
また、もらい逃げの別パターンでは、「おいで」で来た後、せっかく来たにも関わらず、飼い主が体を抱き上げてケージに入れるとか、犬があまり好きではない歯磨きをするとかを、飼い主の都合の良いように利用してしまっていることにあります。定着するまでは、控えた方がベターと言えます。
まとめ
「おいで」の呼びかけになかなか応えない時は、犬があまり集中できていない可能性があります。
少し時間を置いたり、場所を変えたりして再チャレンジしてみましょう。
また、「名前を呼んだら飼い主の顔を見る」ということがまだできていないようであれば、アイコンタクトの練習から入ることもおすすめです。
静かな環境下で「おいで」に応えられるようになったら、散歩で、公園で、ドッグランでと、どんどんチャレンジしていきます。
どんな状況でも、「おいで」の一言で飼い主の元に戻ってこられるようになれば、おいでのしつけは全完了。
あなたとあなたの愛犬は、リセットトレーニングを成功させただけでなく、立派な「おいでマスター」です。
リセットトレーニングを始めるのに遅すぎることはありません。
今からでもスタートして、愛犬との信頼関係を強めていきましょう。
