元動物看護師が教える!どの犬種が飼いやすい?
わんちゃんを新しくおうちに迎えようと思った時、たくさんいる子の中からどの子がいいのか悩んでしまいますよね。
顔をみてピンと来て決めることもあると思いますが、わんちゃんの種類によって性格やなりやすい病気、お世話の大変さなどが違ってきます。
長く一緒に暮らしていくことを踏まえて、そういった情報も参考に選んであげてください。
もくじ
小型犬
日本では犬の飼育頭数の約7割が小型犬を占めています。マンションなどが多く、飼育スペースの問題や小さいものが好きな国民性から人気なのかもしれませんね。
10kg以下の小さい子たちなので飼いやすく、引っ張られたりする心配もなく、いざとなれば抱き抱えることも容易にできます。
一方で、膝のお皿が外れる膝蓋骨脱臼や気管が何らかの原因で潰れてしまい呼吸が苦しくなる気管虚脱、歯石が付きやすいなど小型犬に多い問題もあります。
飼育頭数ランキングでも上位を占める小型犬をみていきましょう。
トイ・プードル
小型犬の代表といえばトイ・プードルですよね。
動物病院でも見ない日はないぐらい飼っている方が多く、活発で元気いっぱい、病院のスタッフにも友好的な子が多いです。
くるくるで特徴的な被毛は月に1回程度のトリミングは必要ですが、意外と抜け毛は少なく、家中毛だらけになるようなことはないので、おうちでは助かります。
トリミングでのカットもテディベアやアフロ、モヒカン、ハート、おパンツカットなどたくさんのスタイルがあり、おしゃれ好きな飼い主さんは楽しいですね。その分、カット代は他の犬種より少し高めに設定されていることが多いので、毎月の出費は少しかさんでしまいます。
心配事としては、身体に対して足が細めで、性格も元気いっぱいなのでジャンプしたり、高いところから飛び下りたりして、前肢を骨折する子が多いです。
固定して治りかけのところで、また飛び下りて再び折れた子犬もいました。
また目のトラブルも多く、緑内障(眼圧が上がることにより痛みが生じ、視覚障害が起こること)や白内障(水晶体が白く濁って視力が低下すること)、流涙症(何らかの原因で涙が常に出ること)で目の下が涙やけをしている子はよくいました。
さらに垂れ耳なので外耳炎にもなりすく注意が必要です。
チワワ
世界一小さな犬種と言われているぐらい身体が小さく、小さな顔に大きな瞳でとっても可愛いですよね。
ランキングでも常に上位に入るほど人気です。
サイズが小さいので、力の弱いお年寄りや子どもでもお世話することができ、どの世代の方でも飼いやすいですね。
甘えん坊で遊び好きで可愛い反面、怖がりで警戒心が強い一面もあります。
動物病院では、飼い主さんに抱っこされていると強気で、歯を剥いて怒ってきますが、診察台に下ろされると震えてしゅんとするイメージです。
可愛い見た目とは裏腹に咬んでくる子が意外と多く、気を付けていました。
攻撃的になるのは恐怖心、警戒心から病院のスタッフに対してのみなので、飼い主さんも豹変した姿を病院で初めて目にすることが多く、驚かれることもあります。
被毛はスムースとロングの2つのタイプがありますが、どちらもダブルコート(上毛と下毛がある二重構造)で少し抜け毛が目立ちます。
特に春と秋の季節の変わり目は入念にブラッシングしてあげる必要があります。
チワワに多い疾患は、僧帽弁閉鎖不全(心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が閉じなくなること)などの心臓の病気や水頭症(脳にある脳脊髄液が異常に溜まり、脳の他の部位が圧迫され、障害が出ること)小型犬に多い気管虚脱(空気の通り道である気管が途中で潰れてしまい、呼吸ができなくなってしまう病気)、膝蓋骨脱臼(大腿骨(太ももの骨)に対して膝蓋骨(膝のお皿)がはずれる状態)などです。
心臓病は防ぐことはできないので、こまめに健診に行き、早めに発見することが重要になってきます。
また、1度お薬を始めると生涯飲み続ける必要があるので、定期的に病院に通い、お薬代がかかることになります。
ミニチュア・ダックスフント
短い足に長い胴、温和な性格でとても可愛いですよね。
活発で遊びやいたずら好きで元猟犬なので、運動量もそこそこあります。
警戒心からよく吠え、知らない来訪者やお散歩の途中で他の犬に会ったときなど、小型犬らしからぬ低い声で吠え立てます。
声だけ聞くとこんなに小さい子だと思えない吠え声です。
動物病院でも、他の子が見えている限り吠え続ける子もいましたし、子犬の頃から頻繁に通っていても警戒心からなかなかスタッフとの距離が縮まらない子もいました。
短足がとても魅力的ですが、その短い足が仇となり、採血や点滴は苦労します。
動物の採血は足から行うことが多いので、足が短い分難しく、どうしても取れない場合は首の頸静脈から採血します。
特に点滴は前肢にとるので難しく、取れた後も足の角度や向きなどですぐに流れなくなってしまうこともあり、大変でした。
被毛はスムース、ロング、ワイヤーがいました。
ロングが1番多く、ワイヤーはあまり見かけませんでした。
抜け毛は少し気になりますが、家で毛玉ができないようにブラッシングをしてあげていれば、トリミングは2~3ヶ月に1回でも大丈夫です。
足が短く、胴が長いので腰に負担がかかりやすく、椎間板ヘルニア(背骨の間にある椎間板が飛び出して、脊髄を圧迫し、四肢などに異常を来すこと)になってしまう子が多いです。
椅子やソファなど高いところへ飛び乗ったり下りたりする動きや、前肢を上げて立ち上がるなど、腰に負担がかかる動きは禁物です。また消化器のトラブルも多めです。
ヨークシャーテリア
小さな身体と綺麗な毛並みでお上品なイメージですが、名前にテリアが含まれているだけあり、警戒心が強く、頑固で気が強い一面もあります。
動物病院でも、おとなしい子ももちろんいますが、エリザベスカラーを付けないと、スタッフは触ることができない子もいました。
飼い主さんにはそのようなことはなく、陽気で好奇心旺盛、甘えん坊な一面もあります。
美しい被毛がトレードマークですが、地面に着くぐらいのフルコートは、普段のお手入れがかなり大変なので、一般ではほとんど見かけませんでした。
頭の毛だけを伸ばして頭頂部で結んだり、テディベアのように全体的に短くしたりするスタイルの子が多くいました。お人形みたいでとても可愛いですよね。
膝蓋骨脱臼や気管虚脱など小型犬に多い疾患や門脈シャント(肝臓へ流れるもんみゃくという血管の途中に枝分かれした血管ができてしまい、栄養素や毒素が全身へ流れてしまうこと)、水頭症などの病気が多いとされています。
シーズー
陽気で活発でしつけやすく、飼育頭数ランキングでもベスト10に入っています。フレンドリーだけれども、元気いっぱい!という感じではなく、落ち着きのあるイメージです。
最近ではほとんど見なくなりましたが、シーズーにもフルコートにしている子がおり、白くて艶のある被毛がとても綺麗でした。
最近では短くしている子が多いですが、ダブルコートなので抜け毛は多く、白っぽい子が多いので汚れも目立ちやすく、定期的にシャンプーが必要です。
また、口周りにも毛があるので汚れやすく、食後は拭いて清潔に保つようにする必要があります。
皮膚や耳、消化器の疾患が多く、目が大きくて少し出ているので傷を付けてしまったりして、目のトラブルも多いです。
また短頭種の1種なので、呼吸器のトラブルが起こりやすく、熱中症など暑さに注意が必要です。手術などの気管挿管も短頭種というだけでリスクが高くなってしまいます。
中・大型犬
10kg以上と少し大きめな子達です。身体が大きい子の方が穏やかで優しいとも言われており、人気があります。
大型犬や超大型犬は日本では飼育している家庭は少なくて、動物病院でも来院数はそれほど多くありませんでした。
力が強く、飼育スペースも運動量も飼育費用もそれなりに必要になるので、誰でも飼えるわけではありませんが、犬好きであれば少し憧れますよね。大きめの子達の魅力をみていきましょう。
ウェルッシュ・コーギー・ペンブローク(小型犬に分類されることもあります)
ダックスと同じように短い足に長い胴、ぷりぷりのお尻が可愛いですよね。
元気いっぱいで遊び好き、牧羊犬だったこともあり運動量も多いです。
動物病院でもフレンドリーに接してくれる子が多かったです。
ぷりぷりのお尻にほぼない尻尾が特徴的ですが、尻尾は産まれてすぐに断尾されています。
狩猟に使われていた時には意味のある処置ですが、家庭犬となった今ではコーギーという特徴を表すためだけに行われており、問題になっています。
先に紹介したトイプードルやヨークシャーテリアでも断尾は行われており、同じように問題視されています。
ダックスと似ていますが、ダックスよりずっしりとしていて力もはるかに強いです。
保定(診察や処置、検査の間、動かないようにおさえること)の時も油断すると力負けしてしまうこともあります。
足が短いのでやはり、採血、点滴は難しく、さらに力が強いので、抵抗されるとなかなか苦労します。
被毛はダブルコートなので、抜け毛がかなり多いです。
カットの必要はありませんが、換毛期は特に大量の毛が抜けるのでブラッシングは欠かせません。
診察室では特に緊張して毛がよく抜けるので、診察終わりにはスタッフも診察台も毛だらけになっていました。
胴長短足なので、椎間板ヘルニアには注意が必要です。
また変性性脊髄症(後肢のふらつきから始まり、徐々に前へと麻痺が進行し、最終的には呼吸困難に陥る脊髄の病気)という恐ろしい疾病も遺伝的に多いとされています。
発症数はそこまで多くなく、痛みも伴わずゆっくり進行する病気ですが、原因は分かっておらず、治療法も確立していません。
10歳を過ぎてから発症することが多く、初期症状は椎間板ヘルニアとよく似ているので判別は難しいですが、歩行に異常がないか注意してみてあげましょう。
柴犬(小型犬に分類されることもあります)
ピンと立った耳、ふさふさの尻尾、飼い主さんに忠実で海外でも人気の日本犬です。
警戒心が強く、触られるのが嫌いな子も多いので、動物病院では容易に触らないように気を付けていました。
歯を剥いて怒って、実際に咬んでくる子も少なからずいました。
咬む力も強いので、本気で咬まれると出血し、場合によっては縫合が必要になってしまうこともあるので、かなり注意が必要で、エリザベスカラーを付けてもらうこともありました。
基本的に飼い主さんには忠実で、家族には優しいですが、まれにきちんとしつけができず、気に食わないことがあると飼い主さんにも攻撃的で、手の付けられない子もいたので、しつけはきちんと行いましょう。
飼い主さんにエリザベスカラーの装着を頼んでも、飼い主さんのことも咬んでしまい、付けることができないこともありました。
あまりにも攻撃的で危険な場合は診察ができない場合もあるので、自分のおうちの子は自分でコントロールできるようにしましょう。
被毛はダブルコートで、かなり抜け毛が多いです。
カットは必要ありませんが、かなりこまめなブラッシングが必要になります。
また皮膚のトラブルが多い犬種なので、薬浴が必要な場合は、薬用シャンプーで指示された頻度でシャンプーしなければなりません。
シャンプー後は、きちんと乾かさなければいけませんが、ダブルコートの毛はなかなか下毛が乾かず、かなり苦労します。
おうちで行うことが難しい場合は、病院で行ってもらえるか相談してみてくださいね。
皮膚炎の他にも外耳炎や緑内障などが多いとされています。
フレンチブルドッグ
ぺしゃんこの鼻としわの寄った顔に、フレンドリーで社交的な性格。
多頭飼いする方も多く、大人気ですよね。
実際に性格のよい子が多く、動物病院のスタッフに攻撃的であったり、吠えてきたりするような子はあまり見ませんでした。
ただ、遊び好きで興奮しやすい性格で興奮すると周りが見えなくなることもあるので、注意が必要です。
また、短頭種で呼吸器のトラブルが多いので興奮状態や暑さには、気を付けてあげなくてはいけません。命に関わることもあるので、夏場は必ず空調の行き届いた涼しい部屋で過ごせるようにしてあげてくださいね。
被毛は少なそうに見えますが、抜け毛はわりと多いです。おうちでも少し硬めの短い抜け毛が気になると思います。
トリミングに通う必要は特にありませんが、必要に応じておうちでシャンプーやブラッシングはしてあげましょう。
また、顔のしわの間に汚れが溜まりやすいので、こまめに拭いてあげるなどケアが必要です。
皮膚炎や中耳炎での来院が多く、食物アレルギーのある子もいました。
また鼻腔狭窄(鼻の穴、鼻の奥の空間が狭く呼吸状態がすぐに悪化すること)など短頭種気道症候群(短頭種にみられる呼吸トラブルの総称)と呼ばれる呼吸器の問題が多く、手術時の気管挿管もシーズーなどと同じく他の犬種よりも注意が必要です。
ゴールデンレトリバー
ふさふさの毛と大きな身体、優しそうな表情が可愛くて大型犬の中では1番人気です。
温和で優しく、人懐っこく、本当に癒されますよね。
体重は25kg以上あるので、いくら温和で優しいと言っても、お年寄りや子どもがお世話をするのは少し難しいかもしれません。
また、活発で運動量も多いので、毎日のお散歩はしっかり長めに行ってあげる必要があります。
被毛はダブルコートなので、抜け毛は多いです。
最近ではおうちの中で飼う方がほとんどなので、こまめなブラッシング、お掃除が必要になります。
トリミングはおうちでシャンプーできるのであれば、定期的に通う必要はありませんが、通う場合は大きさによってトリミング代金も変わることが多いので、大型犬はシャンプーだけでもそれなりの代金がかかってきます。
また、病院で処方される薬やフィラリア、ノミダニ予防の薬は体重によって用量が変わるので、大型犬の薬代は小型犬よりはるかに高くなります。
避妊、去勢の手術代もサイズが大きい分、高額な場合がほとんどなので、注意しましょう。
混合ワクチンや狂犬病予防の注射代は大きさで変わらないので安心してくださいね。
大型犬に多い股関節形成不全(成長期の骨の形成異常などにより、後肢の骨が骨盤に綺麗にはまらなくなり、痛みが生じたり、歩行に異常を来すこと)や垂れ耳に多い外耳炎、さらに悪化して耳血腫(外耳炎などの痒みにより、激しく後肢で掻いたり、こすりつけたりすることにより皮膚の下に血液が溜まり、腫れた状態になること)になってしまう子もいます。歩き方、耳を痒がっていないかなど注意してみてあげるようにしましょう。
大型犬を飼う時は、自分や家族の数年先を考えてみてください。犬も人間も若くて健康なうちは問題ないのですが、7歳ぐらいを越えて老犬になり、立てなくなってしまった時に抱えて病院に行ったり、お世話をしてあげられますか。
実際に「動けなくなってしまったけれど、運べないので病院へ連れていけない。往診に来てもらえないか」と電話で問い合わせを受けたこともあります。
およそ7年後の自分の年齢、家族構成などを踏まえて、介護が必要になっても大丈夫なのかをしっかりと熟考し、家族で決めるようにしてくださいね。
まとめ
どの犬種にも一長一短があります。
何を重視するのかにより、それぞれのおうちでの飼いやすさは変わってくると思います。
重視する点が、大きさなのか、綺麗な被毛なのか、費用なのかは、それぞれの家庭次第です。
犬の平均寿命もどんどん長くなり、10年以上生きるのが当たり前です。
これから長い付き合いになることを念頭に、どのタイプが合っているのか話し合い、家族の一員になる子を選んであげてくださいね。