動物病院でもやっている?コロナ対策の消毒方法と掃除法
新型コロナウイルスの大流行もあり、外での手指消毒は当たり前になり、消毒薬に触れる機会も増えましたよね。
動物病院でも、コロナ禍になる前から消毒薬を使い、感染症が広がらないように気を付けてきました。
普段よく行く動物病院でどんな消毒薬が使われているのか、どのように掃除しているのか気になりますよね。よく使われているもの、方法を紹介します!
もくじ
消毒
消毒とは、対象となる微生物を感染症を引き起こしえない水準まで殺滅、または減少させることをいいます。
消毒薬の中でも、どの微生物に有効なのかが異なってくるので、使う場所、対象により消毒薬の使い分けが必要になります。
動物病院で使われることの多い消毒薬をいくつか紹介します。
アルコール消毒(消毒用エタノール・イソプロパノール)
手指消毒に使われており、馴染みがありますよね。
一般細菌、緑膿菌、結核菌、酵母様真菌、ウイルスなど広範囲に有効なので、動物病院でもよく使われています。
揮発性が高いので乾きやすく、診察台の消毒に使われることもあります。その他にも手術時の術野の消毒に用いられたり、金属に使用しても錆びたり劣化することもないので、診察に使う器具の消毒にも使われます。
よく診察室で容器に入ったたくさんのカット綿が置いてあるのを見かけると思いますが、アルコールに浸したカット綿で「アル綿」と呼ばれ、よく使われます。
診察で使った器具を拭いたり、ちょっとした汚れを拭き取ったり、注射を打つ時に接種部位の消毒に用いたりします。人間の病院でも同じように置いてあるのを見かけますよね。
新型コロナウイルスの対策として、人間のように消毒しないといけないと思い、犬猫の足や身体をアルコール消毒するのは絶対にやめてください。
揮発性が高いとはいえ、動物はアルコールを体内で分解することができないのて、舐めてしまったりして体内に取り込まれると中毒を引き起こしてしまうかもしれません。
消毒してあげたくなる気持ちは分かるのですが、命に関わることもあるので、動物にはやめてあげてくださいね。
どうしても消毒してあげたい場合は、動物用として販売されている除菌シートや除菌剤、次亜塩素酸水などを使用するようにしてあげてください。
また飼い主さんがアルコールで手指消毒した場合も動物がアルコールを舐めてしまわないようにアルコールが乾いてから動物に触れるようにするなど、気を付けてあげてくださいね。
塩素(次亜塩素酸ナトリウム)
キッチンや衣類の漂白などで使う塩素系漂白剤を薄めると簡単に作ることができます。
酸素系漂白剤とは別物で、混ざると有毒ガスが発生し、危険なので絶対に間違えないようにしてくださいね。
また、次亜塩素酸ナトリウム自体にも刺激臭と皮膚や粘膜への刺激性があるので、使用する際は十分な換気とマスク、手袋の装着など対策しましょう。
一般細菌、緑膿菌、酵母様真菌、ウイルスにも有効で、アルコールと同じく診察台や床の消毒に使われます。
特に子犬や子猫で重症化すると死亡することもあるパルボウイルスに対してアルコールは有効ではありませんが、塩素は有効なので、疑われる病状の時にも安心して使えます。
ただ、金属は腐食するので使えず、皮膚のたんぱく質が溶けてしまうので手にも使えません。
水で薄めるだけて簡単に作れますが、濃度に注意が必要てす。
直射日光、高温で分解され濃度が低下するので、作り置きはできず、使う分のみ作り、その都度使いきる必要があります。
一般的に0.05%~0.1%の濃度のものを使うことが多く、原液の濃度によって使う水、原液の量が変わります。
500mlのペットボトルを用いて作るものが多いです。
だいたいの量としては500mlのペットボトルの水に、キャップ一杯分塩素系漂白剤(およそ5ml)を入れて0.05
%濃度の次亜塩素酸ナトリウムが作れます。
市販の塩素系漂白剤であれば、ホームページに詳しく記載があるものが多いので、そちらを参考にしてみてください。
ペットボトルに作った場合は、間違って飲んでしまわないように気を付けてくださいね。
ビルコン(複合次亜塩素系消毒剤)
塩素系にも関わらず、独特の刺激臭がなく、においが残りにくいので、診察台や床、犬猫舎など病院内のあらゆるところに使いやすいです。
細菌、真菌、ウイルスなど幅広く有効なので、畜産場などでの消毒にもよく用いられています。
酸化しやすいので鉄製のケージや器具への使用は避けてください。
また、動物に直接使用することも避けましょう。
ピンク色の粉を水に溶かして必要分を作る必要がありますが、時間の経過により酸化して使えなくなるので、使いきらなければいけません。
酸化してくるとピンクが薄くなり、色がなくなってくるので分かりやすいと思います。
100倍希釈で作り、スプレーボトルで散布したり、浸け置き効果があります。
インターネットで一般の方も購入でき、ケージやトイレに使用すると犬猫のにおいが気にならなくなったと評判がいいようなので、使ってみたい方も試すことができます。(1kgからなのでかなり量が多いですが…)
ヒビテン(クロルヘキシジングルコン酸塩)
これまで紹介した3つの消毒薬と比べると有効範囲が狭まり、ウイルスも一部のものにしか有効ではなくなります。
しかし細菌、緑膿菌、真菌類の多くには有効なので、手指、手術時の術野、診察室での器具などの消毒に使われます。
また皮膚病の子の自宅での病変部の消毒にもよく処方されるので、馴染みのある飼い主さんも多いかもしれません。
濃度により使用する目的が異なるので、目的に合わせてピンク色の原液を水、または消毒用エタノールで埋めます。
医療用医薬品なので、薬局やペットショップなどで購入はできず、動物病院で処方してもらう必要があります。
熱消毒
いろいろな消毒薬を紹介しましたが、有効なものがなく、熱消毒が有効な場合もあります。
手間は少しかかりますが、お金はかからず経済的ですね。ただ、熱が有効なものは限定されており、そこまで出番は多くありません。
いくつか紹介すると、下痢の症状を引き起こすコクシジウムやジアルジア、トキソプラズマなどは熱が有効です。
便に排出されることが多いので、トイレやケージ、おもちゃなど熱湯に浸け、消毒します。
あらかじめしっかりと汚れは落としておき、煮沸できるものは1分間ほど行い、スチームクリーナーがあれば70℃で5分間か100℃で1分間、スチームを当てると有効です。
また草むらなどで付けて帰ってしまうことのあるノミは、1匹いるだけですぐに大量繁殖する恐れがあります。
熱に弱く、60℃以上で死滅するのて、カーペットや毛布などお湯をかけることができるところは熱湯を使用し、さらに乾燥機にかけるなどして完全に除去しましょう。
掃除方法
動物病院で主に使っている消毒薬を紹介したので次はその消毒薬を使った掃除方法をみていきましょう。菌やウイルスが持ち込まれるかもしれない動物病院では、どのように掃除を行っているのでしょうか。
診察室・診察台
まずは1番汚れやすい診察室です。
診察に来たら必ず入り、診察台に乗るので、そこが汚染されていたらあっという間に院内感染が起きてしまいます。
動物病院ではだいたいスプレーボトルにその病院で決めている消毒薬を入れて、台拭きのタオルと一緒に置いています。
消毒薬は、アルコールであったり、ビルコンであったり、塩素であったり、病院により様々です。
(次亜塩素酸ナトリウムのスプレーでの使用は、薦められていないのでおうちで真似する場合は自己判断でお願いします。)
1組診察が終わるごとに、診察台を消毒し、綺麗に拭き、次の方が使えるように部屋を整えます。
消毒は、ホコリや毛などの有機物があると効果が落ちるので、まず始めに粘着テープなどを使って、台の上の毛を取り除きます。
綺麗になったら、消毒薬をスプレーしタオルで拭きます。
台の拭き方は、病院での決まりは特にありませんでしたが、動物看護の専門学校で汚れを広げない拭き方を教えられました。
右から左の一方向に上から下まで拭き、最後に拭き終わりの左端の汚れを上から下に拭き取っておしまいです。
ジグザグに適当に拭いても綺麗に拭けていれば問題ないと思うのですが、どうしても少し残ってしまう毛や汚れが端で拭き終わっていれば最後にまとめて取りやすいので、効率よく拭きたい場合は試してみてください。
床が汚れている場合は、床の掃除も行います。
ほこり、砂、毛の塊などの汚れであれば、次に待っている方がいれば急いで掃きますが、拭かないと落ちない汚れがある場合は、大急ぎでモップをかけたり、小さい汚れであればアルコール綿花で汚れを拭き取ります。
診察中に怖がっておしっこを漏らしてしまったり、肛門嚢が飛んだりした場合は、床だけでなく壁にも飛んでしまうことがあるので、診察室全体を拭き掃除しなければなりません。
どうしても忙しくて時間がなければ、他の診察室に移って診察を続けることもあります。
待合室
待合室の掃除は、誰もいない朝やお昼の間に行います。
こちらも消毒前に有機物を取り除く必要があるので、ほうきなどでまずゴミを取ります。
綺麗になればモップに持ち替え、消毒薬のスプレーを床に振りながら丁寧に力を入れてモップがけを行います。
たくさんの人が触っていると思われる、入口のドアや受付台も消毒し、診察室と同じように汚れや病原体が残らないように丁寧に掃除します。
ノミが付いている子や感染症の疑いがある子が来院した場合は、それぞれに有効な消毒法で、その子の通ったところ、座った場所などあらゆる場所を徹底的に消毒します。
動物病院に来て他の病気にかかってしまったら元も子もないですもんね。スタッフも細心の注意を払います。
物の消毒
では、台や床を拭くのに使ったタオルやモップ、診察や手術で使った器具はどうしているのでしょうか。
掃除用具
汚れたタオルは、まず汚れを水洗いで落とします。
ある程度汚れが落ちたら、塩素系漂白剤に浸けておきます。
漂白剤なので白いタオルなら綺麗になりますし、一石二鳥ですね。
色柄のあるものは、色落ちする可能性があるので注意したください。
この浸け置きは、病院により使う消毒薬が異なることもありますが、感染症などで有効な消毒薬が分かっている場合はそちらを使用します。
また、ノミの付いている子に使用したタオルなどは熱湯にしばらく浸けて、ノミを死滅させます。
ノミが付いていることが疑わしいにも関わらず姿を確認できなかった場合は、診察台の上に黒い小さい粒のようなものが落ちていれば、それを使い、確認できます。
その黒い粒をアルコール綿花の上に乗せ、潰してみます。もしノミの糞であれば、血液でできているので赤黒く滲みます。
ノミの糞が確認できれば、本体の姿が見えなくても熱湯消毒をし、動物にはノミの駆除剤を付けるなどノミ対策をします。
モップは、病院にもよりますが、私が以前勤めていた動物病院では業者に頼んでいたので、月に1回程のペースで新しいものに交換してもらっていました。
器具
診察に使う器具は主に、鑷子(ピンセット)、剪刀(はさみ)、耳鏡、聴診器などがあります。
聴診器以外はいくつか予備があることが多いので、忙しいときは水に浸けておき、手が空いてからまとめて汚れを洗い落とし、消毒液に浸けておきます。
この時の消毒液も病院によりますが、塩素は金属に使用できないので、ヒビテンやアルコールになります。
手術で使用した器具は、手術後すぐに水洗いし、血や汚れを落とします。その後自然乾燥させ、次の手術に備えます。
手術器具は、ドレープ(術野にかける布)と一緒にオートクレーブという機械で高圧蒸気滅菌をします。
手術に使うものは消毒ではなく、滅菌が必要になります。
滅菌とは、すべての微生物を死滅、または除去することをいい、消毒よりも格段に強力に菌をなくすことになります。
手術で体内に入れたりするものなので、そのぐらいする必要があります。
ちなみに動物病院で働いていると、白衣に血液が付着してしまうこともよくありました。
素材にもよりますが、その場合はすぐにオキシドール(過酸化水素水)を付けると取れやすくなります。
血液が固まってしまうので、お湯は使わず水洗いをしてくださいね。
まとめ
動物病院で主に使われている消毒薬を紹介しました。
アルコールや塩素、ビルコンなど有効範囲の広いものが診察室や床、台などの消毒に使われており、おうちでも使えるものばかりなので換気に気を付けて、参考にしてみてください。