動物看護師直伝!薬の種類と服用法
動物を飼っている方なら、動物病院で出される薬を飲ませたり、付けたりするのに苦労した経験、ありますよね。
「毎食後飲ませてください」「1日3回、目薬してください」と簡単に言われますが、そんなに簡単にできる子ばかりではないですもんね。
そんな飼い主さんの助けになるように、動物病院で行っている方法やコツなどを紹介します。
もくじ
内用薬
薬には大きく分けて、口から飲む内用薬と、塗ったりつけたりする外用薬があります。
内用薬にも錠剤や粉薬、シロップなど様々なタイプがあります。
それぞれの薬の特徴と飲ませる方法を紹介していきますね。
錠剤
動物病院で1番多く処方されるのが錠剤の薬です。
1錠そのまま出されることもあれば、割ったものもよく出されますよね。
体重により用量が変わるので、大きい子だと1回分で数錠飲まなければいけないこともあります。
固形なので扱いやすく、糖衣が付いているものもあり、甘くて飲みやすいです。
ただ、何度も食べたり出したりすると、糖衣が溶けてしまうので苦味が出てしまい、嫌がることもあります。
また、分割すると糖衣が剥がれてしまうので、口に入った時に少し苦味が分かりやすくなってしまいます。
そうするとご飯に混ぜたりしても気付いてしまい、薬だけ残してしまいます。
気付かずに食べてしまう子だと投薬も簡単でいいのですが、そうでない子も多いので、飼い主さんも苦労しますよね。
気付いて残してしまう子は、なにか特別な大好きなおやつなどに混ぜてみてください。
体調、アレルギーなどに問題がなく、獣医師の許可を得れば少量のバナナやヨーグルトなどに混ぜてみてもいいかもしれません。
また投薬用に、薬を入れる穴が開いている柔らかいジャーキーのようなおやつも色々と売っています。
ちゅーるは犬猫問わず人気で、投薬用チュールも動物病院で販売していて大人気でした。
投薬用なので普通のちゅーるよりも粘度が高く、薬を入れたり混ぜたりしやすくなっています。
またカロリーも低めに作られているので、太りやすい子にも優しいですね。
投薬用のちゅーるは、動物病院専売なので試してみたい方は、1度病院で聞いてみてくださいね。
それでもどうしてもダメな場合は、仕方がないので無理矢理飲ませなければいけません。
できれば避けたいですが、薬をきちんと服用できないと治るものも治らないですもんね。
口を開けて薬を飲ませる方法を紹介します。
- 犬猫の後ろから近付く。
- (動物になにかする時は正面から近付くと怖がらせたり、警戒されたりしてしまうので、後ろからそっと近付きましょう)
- 左右の犬歯の後ろに、上から左手の親指と中指で指をかけて少し上を向かせる。
- 右手で薬を持ちながら、小指で下顎を下に引いて少し口を開ける。
- (上を向かせて自然に口が開けば、さらに無理に開かせる必要はありません。)
- 口が開いたら、喉の奥に薬を入れる。(喉の奥に薬を置いてくるイメージです)
- 薬が入ればすぐに口を閉じ、マズル
- (鼻先から口にかけての部分)を掴む。(マズルのない子は、顎を下から押さえて口を開けないようにする。)
- しばらくそのまま待ち、喉をさすったりして嚥下を促す。
- 喉がゴクンとなり、飲みこんだことを確認できれば解放してあげる。
- シリンジ(スポイト)に水を吸っておき、飲ませる。(薬が食道に張りついたままになるのを防ぐためです。)
- めちゃくちゃ褒めてあげる!大好きなおやつをあげてもいいです。
薬を持ったり、口を開けたりする手は、やりやすい方でやってくださいね。
たまに実はゴックンしていなくて、後から薬を上手に吐き出す子もいるので、本当に飲み込んだのかしっかり確認してください。
おうちで誰かに手伝ってもらえるのであれば、押さえるのを手伝ってもらいましょう。
特に猫は1人では難しいかもしれません。注意点としては、力任せに押さえつけると、より一層嫌がって暴れてしまうので、力加減に気を付けましょう。
動物が動かないように抑えることを保定といい、これが出来るようになれば、投薬時や後から出てくる外用薬の時にも役に立つと思います。
動物病院で診察中に看護師が行っているので、気になれば観察してみてくださいね。
誰の手も借りられず、どうしても1人で行わなければいけない場合は、診察台やトリミング台のように、少し高い台や机などがあればその上でやってみてください。
高い台に乗せるとおとなしくなる傾向があります。落ちないように気を付けてくださいね。
保定の仕方
後ろからバージョン(1人で投薬する場合は、こちらの方がやりやすいと思います。)
- 犬猫におすわりしてもらう。
- 後ろに下がられないように、後ろから覆い被さるように密着する。
- 投薬の手順に沿って投薬する。
横からバージョン(動物病院ではこちらの方をよく目にすると思います。処置者が別にいる場合はこちらの方がやりやすいです。)
- 犬猫におすわりしてもらう。
- その態勢の右隣から同じ方を向いて立つ。
- 左脇に動物の肩を挟んで、床に肘をつき、立ち上がれないように肩を抑える。
- そのままの状態から、脇を閉め、投薬手順に沿って投薬する。
こちらも左右は自分にやりやすい方で構いません。
犬猫は肩と腰を押さえると立ち上がったり、動いたりできないので、手以外にも自分の体にあてたりして、肩と腰を意識して押さえてみてください。
脇は開いているとすり抜けられるので、閉めましょう。慣れるまでは難しいかもしれませんが、頑張ってみてくださいね。
粉薬
体重の軽い子、小さい子は粉薬を出されることも多いです。粉なので混ぜたり、練ったりしやすいですが、ご飯に振りかけたりした場合、ご飯を残してしまうと全量服用できていないことになるので、注意が必要です。
あげ方としては、錠剤と同じようにご飯に混ぜたり、好きなおやつに練り込んだりでいいと思いますが、全量ではなく4分の1など少なめで絶対に食べきれる量のご飯に混ぜてみてください。
どうしても食べない場合は、粉薬も無理矢理飲ませなければなりません。
- 粉薬を適量の水で溶く。(多すぎず少なめの量がいいです。)
- シリンジ(スポイト)で吸う。
- 錠剤のときに指をいれた犬歯の隙間からシリンジ(スポイト)を差し込み、少しずつ注入する。
- 口から垂れてこず、ゴックンしてくれていればまた少し注入する。
- なくなるまで繰り返す。
- (溶いた水が多いと、この回数が増えるので途中で嫌になってしまうので注意してください。)
- 褒める!
全部飲めたら、忘れすに褒めてあげてくださいね。
また、動物用のオブラートも販売しているので、液体よりも固体の方があげやすい、飲みやすい場合はそちらも試してみてください。
シロップ
小児の薬のようにシロップタイプもあります。
あまり使われておらず、薬の種類も限られていますが、甘味があるものが多いからか飲まなくて困っているという話はあまり聞きませんでした。
ボトルに入れて出され、一緒にシリンジやスポイトももらえます。
冷蔵保存やよく振ってからの投薬など、注意点や指示された量を間違わないように気を付けてくださいね。
- 規定量をシリンジ(スポイト)で吸う。
- 水で溶かした粉薬の時と同じように、犬歯の隙間からシリンジ(スポイト)を差し込む。
- ほんの少しシリンジ(スポイト)を押してみて、きちんと飲み込んでいるか確認する。
- 飲み込んだことを確認できれば、少量ずつ口に入れていく。
- すべて飲めたら、最後に褒める!
外用薬
点眼や点耳、点鼻、皮膚への塗り薬などをまとめて外用薬と呼びます。
点耳や点眼は比較的よく処方されます。きちんと使用方法が分かっていないと、薬の効果が期待できず、なかなか良くなりませんよね。
ここでは外用薬の正しい使用方法を紹介していきます。
点眼薬
目薬は、人間のものと同じ薬を処方されることもよくあります。
シーズーやパグなど目が大きい子は目の疾患にかかりやすいので、目薬のお世話になることも多いかもしれません。おうちで毎日、多いと1日4~5回点眼が必要になることもあります。
点眼方法をみていきましょう。
- 後ろからそっと近付く。(既に目薬嫌いな場合は、目薬の容器は隠して見つからないようにする。)
- 左手で顎下を支え、少し上向きにする。
- 右手で目薬を持ちながら、小指側の手をあて上のまぶたを少し引っ張りあげる。
- 引っ張りあげたところに目薬を入れる。
- めちゃくちゃ褒める!(おやつをあげる)
両眼の場合は反対側も同じように点眼してください。左右の手はやりやすい方で構いません。冷蔵保存の目薬の場合は、いきなり冷たいものを目に入れられると驚いて不快なので、早めに冷蔵庫から出し、室温に戻してから行いましょう。
ここでも嫌がる場合は、他の家族に押さえてもらう必要があります。押さえる力に注意してくださいね。
我が家の犬も毎日の点眼が必要で、初めはとても嫌がっていましたが、ご褒美におやつをあげていたら、目薬の時間になると目薬担当の私のところに、自ら目薬を催促しに来るようになりました。毎日していると、このように慣れることもあるので、嫌がる場合はなかなか大変ですが、諦めず頑張ってやってみましょう。
点耳薬
プードルやダックスフントなど垂れ耳の子は、耳のトラブルが多く、おうちで点耳してもらう機会もあるかと思います。
点耳も嫌がる子が多い処置ですが、毎日きちんと行わないと完治しない病気もあるので、おうちで頑張ってもらわなければなりません。
病院のすぐ近くに住んでいて、時間があるので毎日点耳をしに病院に連れて来られる飼い主さんもいらっしゃいましたが、それもなかなか大変ですよね。
点耳の方法自体はそこまで難しくありません。
- 後ろからそっと近付く。
- 耳をめくる。
- 耳の穴の奥をめがけて、点耳薬を指示されている滴数いれる。
- 耳の付け根あたりのコリコリするところを揉む。
- (動物の耳道はL字型になっているので、奥まで薬を浸透させるためにもみもみします。)
- 褒める!
簡単ですよね。難しいのは、嫌がって暴れるからですよね。
病院では耳の処置をするときは、必ず動物看護師が保定し、獣医師がスムーズに処置できるようにしているので、おうちでも慣れるまでは処置(点耳)する人と保定する人の2人でやった方がいいかもしれません。
どうしてもおうちでの点耳が難しい場合は病状により、1度つけると数週間ほど効果のある点耳薬などを使えることもあるので、病院で相談してみましょう。
点鼻薬
点鼻薬は処方されることがそれほど多くないので、縁がない飼い主さんも多いかと思います。
万が一必要になった時のために紹介しておきますね。鼻炎など鼻の症状がある猫に処方されることが多いです。
- 後ろからそっと近付く。
- 左手で下から顎を優しく掴み、少し上を向かせる。
- 鼻の穴に薬を入れる。
- 解放して、褒めてあげる。
鼻に液体を入れることに少し抵抗があるかもしれませんが、思いきってさっと点鼻してあげてください。躊躇って時間がかかると押さえられている時間も長くなり、どんどん嫌になってしまうので、早く終わらせてあげましょう。
塗り薬
皮膚のトラブルがある場合、塗り薬を処方されます。動物は薬などを塗った方が気にしてしまい、舐めたり噛んだりすることもあるので、人ほどよく塗り薬は処方されません。
全身毛で覆われているので、毛に付いてしまったりして、塗りにくいですしね。
薬を塗ること自体は他の薬のように難しくはなく、そのまま塗ればいいだけです。
問題は塗るタイミングです。そこさえ気を付ければ、塗り薬を塗っても気にして余計に掻いたり、舐めたりしなくなるかもしれません。
簡単なので試してみてくださいね。
1.お散歩に行く直前
お散歩で家から出る直前に薬を塗ってみてください。
その時は気になっていても、家を出れば外の他の刺激に気を取られて、薬を塗られたことも気にしなくなり、忘れてしまう子が多いです。
お散歩があまり好きではない、好奇心旺盛ではない場合は他のことに気を取られず、患部を気にしてしまうこともあると思うので、他のタイミングで試してみてくださいね。
2.ご飯前
お散歩と同じようにご飯に夢中になるタイプの子なら、ご飯をあげる直前に塗るのもおすすめです。
「待て」ができるのであれば、待ての指示で待っている間に塗ってから、ご飯を食べさせてあげてください。きっと食べるのに夢中で、薬を塗った場所を気にすることはないと思います。
ただ、食べるスピードが早い子だと一瞬で食べ終わってしまい、薬を塗ったことを思い出してしまうかもしれないので、注意して見ていてくださいね。
3.遊ぶ前
遊ぶのが大好きな子は、遊び始める前に塗ってみてください。
塗ったところを気にしないように、たっぷり遊んであげてくださいね。テンションが上がり、元気よく走り回る子は、このタイミングが合っているかもしれません。
どのタイミングも要は、夢中になれる他のことをする直前に塗って忘れさせるだけです。
簡単なので、塗り薬に困っている人はぜひ試してみてください。
傷がある場合などは、ガーゼをあてたりすることもあるので、病院の指示に従ってくださいね。
まとめ
内用薬の種類と飲ませ方、外用薬の使い方を紹介しました。
内用薬はごはんや大好きなおやつに混ぜてみて、それがダメなら無理矢理飲ませるようにしましょう。
初めから無理に飲ませると「薬=嫌なもの」と思ってしまい、より一層嫌がるようになってしまう恐れがあります。無理矢理飲ませるのは、最終手段です。
外用薬は誤魔化してやることはできないので、頑張ってできたらその分たくさん褒めてあげてください。
内用薬も外用薬も大げさなほど褒めてあげて、おやつをあげて「薬=いいことがある(おいしいものをもらえる・褒めてもらえる)」と思い、嫌がらずにできるようになると、動物も飼い主さんも投薬によるストレスが減りますよね。
病状、薬によっては、ずっと必要になるものもあると思うので、その子に合った方法を探し、気長に頑張りましょう。