愛犬愛猫の手術の日!預けた後はなにが行われている?
おうちの子が手術することになったら、いくら簡単な手術と言われても心配でドキドキしますよね。
特に動物は話すこともできず、付き添うこともできないので、動物病院に預けた後は何が行われているのか全く分からず不安が募ると思います。
そこで、手術前後に気を付けることやお預けした後何をしているのか、元動物看護師が詳しくお教えします!
もくじ
手術決定~当日連れていくまで
まずは手術をすることが決まり、当日病院へ連れていくまでの流れを紹介します。
手術日の決め方、準備しておけば助かるもの、手術までの心構えなどみていきましょう。
手術日決定
診察に行き、急に手術の必要があると言われることもあれば、避妊・去勢手術のように予めこのぐらいの時期になれば手術しましょうと言われていたので、心の準備ができている場合もありますよね。
緊急の場合は、その場ですぐにお預かりし、準備が整い次第すぐに手術を始めることになります。
こちらは少しイレギュラーになるので、今回は小さなできものを取る手術やスケーリング、避妊・去勢など緊急ではない手術の流れをご紹介します。
まず一般身体検査や血液検査を行います。
ここで異常がみつかった場合、大きな問題でなく、手術までの時間に余裕があれば投薬などを行い、数値が正常値に戻るか少し様子をみることもあります。
また、もし大きな問題が見付かれば、そちらの治療を優先し、手術は必要に応じてになることもあります。
異常がなければ、手術の日程を決めていきます。
手術はどの病院も、午前の診察が終わり、午後の診察が始まるまでのお昼の時間に行われることがほとんどです。
午前の診察時間内に連れてくるよう指示されると思うので、午前中に連れていくことができる日を手術日に選びましょう。
また術中、病院で待ってもらうことはあまりありませんが、麻酔のリスクもあるので、急に呼び出されても対応できる日がいいですね。
次にお迎えのことも考えておきましょう。
手術当日にお迎えの場合もありますし、次の日やもう少し先になることもあります。
緊急手術など体調が優れない手術の場合の退院予定は分かりかねると思いますが、それ以外の場合は予約する際に予定を尋ねてみて、できればお迎えの日と次の日はずっと付いていてあげられる日にしてあげましょう。
また病院の休診日の前日なども何かあった時に対応してもらえない恐れがあるので、避けた方がいいかもしれません。
以上のことをふまえて、病院の空き状況と照らし合わせて良い日程を決めてくださいね。
準備しておくと良いもの
エリザベスカラー
手術部位や内容にもよりますが、動物が舐められる場所、口の届く場所を縫ったりするような手術であれば、エリザベスカラーと呼ばれるものが術後、必要になることもあります。
首に付けると、えりまきトカゲのようになってしまうものです。
病院で貸してくれることもありますが、レンタル料がかかったり、他の子も使っている物なので噛み跡が残っていたり、綺麗ではない場合もあります。
また買い取りしなければいけないこともあります。
術後、短い間だけのことなので、レンタルでも十分だと思いますし、術部を全く気にしない子は必要ない場合もあります。
「せっかくなら綺麗な可愛いものを付けてあげたい!」と思うのであれば、インターネットで検索すると布製のライオンやお花などの可愛いものもたくさん売っています。
怖がりで咬んでしまうかもしれない子は術後だけでなく、診察の時に付けたりすることもできるので、購入してもいいかもしれないですね。
腹帯(ふくたい)《術後服》
腹部などの傷のカバーに腹帯(ふくたい)と呼ばれる服のようなものを着せることもあります。
病院で用意するものはだいたいベージュでなんの可愛げもない腹巻きのような感じです。
胴の長さと足の位置をその子に合わせて切って作っているので、サイズは合っていると思いますが、全く可愛くないです。
場合によってはお手持ちの可愛い服でも使えることがあるかもしれませんし、「術後服」でインターネットで探すと柄の入った可愛いものもたくさん販売されています。
「術後も可愛く過ごしたい!」という方は、術後服が必要か病院で確認してから、可愛いものを用意してあげてくださいね。
術前心構え
麻酔のリスクを理解する
手術の説明の時に病院側から説明があると思いますが、どんなに簡単なすぐに終わる手術でも麻酔をかける以上、リスクは伴います。
すごく低い可能性ですが、実際に亡くなってしまう子もいます。
状態が悪い中での手術となるとさらにリスクも高くなります。
それでも手術をするメリットが麻酔のリスクを上回ると判断し、麻酔をかけて手術を行います。
状態が良くない子はもちろん、健康な状態で手術に臨む子も麻酔のリスクのことは頭の片隅に置いておいてください。
絶食など病院からの指示は必ず守る
前日の夜ご飯まではいつも通り飲食可能で、次の日の朝からご飯なしで連れてくるように言われることが多いと思います。
誤って何か食べてしまった場合は、麻酔をかけると誤嚥性肺炎になってしまう可能性もあり、危険なので手術が延期になることもあります。
もし手術当日に何か食べてしまったら、病院へ連絡し、食べた時間、物、量を伝え、指示に従ってください。
病院に迷惑がかかり、おうちの子を危険にさらすことになるので、決められたことは必ず守るようにしてくださいね。
また少しでもいつもと違う様子、心配なことがあるようなら事前に病院へ相談するようにしてください。
お預かり後
続いては、当日病院へ連れてきてもらい、お預かりした後の病院での流れをご紹介します。
どういった準備をし、手術を行っているのか、術後はどのような様子なのかなどみていきましょう。
血管確保
予定時間に連れてきてもらい、健康状態に変わりがないかなどを確認したら、お預かりします。
入ってきたキャリーケースや鞄、リードなどはそのまま一緒にお預かりできることが多いので、置いていってもらって大丈夫です。
お預かりしたらまずは、点滴を流せるように前肢の血管を確保します。
留置針という、針と樹脂などでできている柔らかい針が重なっているものを使います。
動物の大きさによって使う針の太さも変えているので、場合によっては人間のものと同じ太さを使う子もいます。
留置針がうまく血管に入れば、内側の鋭利な針の方を抜き、外側の柔らかい針を血管内に残します。
そうすることで血管内にいれたままにしても痛みもなく、点滴を流すことができます。
点滴を無事に取ることができれば、一旦犬舎、猫舎に入って待っていてもらいます。
手術
午前の診察と平行して、手術の準備も行います。
あらかじめ朝にその日の手術予定を確認し、使う器具をオートクレーブという機械を使い、高圧蒸気滅菌しているので、滅菌が終われば機械から出して冷ましておきます。(熱々で終了直後は素手では触れません。)
他にも麻酔器の確認や点滴の準備、挿管(気管チューブを気管に入れること)する時に必要になる気管チューブなども用意しておきます。
気管チューブの太さはたくさんあるので、その子の気管の太さにあったものを準備しておきます。
診察時間が終わり、準備が整えば動物に前投与薬(鎮静剤など)を流し、手術室に連れていきます。
手術台の上でさらに導入薬(眠くなる薬)を前肢の留置針から流し、意識がなくなったら挿管します。
この状態は無呼吸や低酸素に陥りやすく危険なので、挿管とその後のモニター類の装着は迅速に行います。
気管にチューブが入れば、抜けたり位置がずれたりしないように紐などで固定し、チューブの先を麻酔器に繋ぎます。
そこから酸素と吸入麻酔薬を流し、様子を見ながら手術ができる状態に麻酔量を調節します。
挿管できればすぐに心電図や血中酸素濃度を測る装置などモニター類を準備します。
心電図は人間では胸に貼り付けますが、動物は足先や脇の下に付けます。
酸素濃度は人間は指先に挟んで測りますが、動物は舌や耳に付けます。
体温計はお尻から入れ、血圧計は足に巻き、点滴も繋ぎ、それぞれの数値に異常がないか確認します。
次に手術部位の毛刈り、消毒です。
動物はどこもかしこも毛に覆われているので、感染を防ぐために綺麗に毛刈りをする必要があります。
バリカンを使い、術部を広めに刈り、掃除機や粘着テープで毛を取り除き、消毒をします。
消毒が終わればそれ以降、その場所は無菌エリアとして扱うので、滅菌されたもの以外は触れたりしてはいけません。
ほこりが舞うので、どんなに熱くても寒くてもエアコンも切ります。
術者と助手は滅菌された術着を身につけ、髪の毛も落ちないように帽子にまとめ、爪の間まで綺麗に手を洗い、消毒し手袋を付けます。
動物の状態も安定し、準備が整えばいよいよ手術開始です。
初めに、術部の周りにドレープと呼ばれる滅菌された布をかけ、周りの毛刈りと消毒をしていないところを覆ってしまいます。
ドレープがずれないように固定するのには、タオル鉗子と呼ばれる器具を使います。
ドレープと皮膚を挟んで止めるのですが、ずれないようにしっかりと挟むつくりになっているので、皮膚に挟んだ跡が残ることがあります。
おうちに帰ってから、手術で切った場所から少し離れたところに何ヵ所か赤い内出血のように点があることに気付くかもしれませんが、タオル鉗子の跡で、時間が経てば消えるのでしばらく様子をみてください。
手術が無事に終われば、切ったところを縫合し、終了です。縫合には抜糸の必要のない吸収される糸か抜糸が必要な糸、ワイヤーなどが用いられます。
手術の内容や場所、病院の方針やその子の性格によって使うものは変わってきます。
お迎えのときに抜糸の予定があれば伝えられるので、忘れないようにしてくださいね。
縫合が終われば手術終了で麻酔を完全に切り、起こす準備をしていきます。
覚醒
手術が終わり、麻酔を切るとだんだんと目が覚めてきます。
その子によりそれぞれ目が覚めるまでの時間は違いますが、何があったのか理解出来ず起きるときにパニックになる子も少なくありません。
手術台から飛び降りて逃げようとする子もいますし、誰彼かまわず噛んでしまう子もいます。
バスタオルで包んで落ち着かせたり、術部の保護も兼ねてエリザベスカラーをつけることもありますが、常に動物の様子に注意を払い、抜管(気管チューブを抜くこと)に備えます。
きちんと覚醒しないまま抜管すると、呼吸がしっかり自分で出来ないこともあり危険ですし、覚醒しすぎているとチューブを噛みきってしまったり暴れて気管が傷ついてしまう恐れもあります。
無事に抜管でき、呼吸状態の確認ができれば、犬舎、猫舎に戻ってもらいます。
術後の片付けをしながら、様子に変わりがないか注意深く見守ります。
特にパグやフレンチブルドッグなどの短頭種と呼ばれる鼻ぺちゃの子達は、気管の問題が多いので挿管時も抜管時も注意が必要です。
お迎え~帰宅後
最後は手術が無事に終わり、お迎えに来てもらってからおうちでの過ごし方です。
いつもと違う様子の愛犬愛猫にどう接してあげたらよいのか、何か気をつけてあげることはあるのか、みていきましょう。
お迎え
手術後しっかりと目が覚めて、状態が安定したらお迎えに来てもらいます。
日帰り手術の場合は午後の診察時間内に来てもらうことになります。
動物たちも早くおうちに帰った方が落ち着きますし、食欲、元気も出てきます。(病院だと食べない子も結構います。)
術後の回復は手術内容やその子により違いますが、お迎えに来てもらった時には歩いて帰れる子もいます。
それでもあまり無理をさせるのはよくないので、キャリーバッグに入れるか抱っこ、車で連れて帰ってあげるなどなるべく負担のない方法を取ってあげてくださいね。
またお迎えのときに手術時の様子や検査、お薬、抜糸の予定についてなどの説明があります。きちんと確認してから帰宅するようにしましょう。
帰宅後
おうちに帰ったら、ゆっくりさせてあげてくださいね。
いくら簡単な手術で日帰りであったとしても、大好きな飼い主さんと引き離され、慣れない環境で何をされるのか分からず怖い思いをし、薬で眠らされて手術をしているのですから疲れているのは間違いありません。
おうちに帰ってきて嬉しいのは分かりますが、そっとしておいてあげましょう。
お水、ご飯は退院時に病院から指示されると思うので、その通りにあげ始めてください。特にご飯は急に一気に食べると吐くこともあるので気をつけてください。
手術によっては、抗生剤や痛み止めなどのお薬が処方されることもあります。あげるタイミング、量はきちんと守り、忘れずに飲ませるようにしましょう。
家に帰っても元気がない、動かない、嘔吐下痢がある、ご飯を食べないなど心配なことがあれば病院へ連絡してください。
スケーリングで抜歯をした後などは特に、ご飯を食べなくなってしまうことがあります。
ご飯の形状を変えてみたり、しばらく時間が経てば食べるようになることもありますが、あまり長い間食べないままだとよくないので早めに相談しましょう。
また術部の縫合したところは、触らないように気をつけてみてあげてください。
エリザベスカラーなどをつけていて本人が触れなくても、多頭飼いの場合は他の子が触ってしまうこともあるので気をつけてください。
縫っている糸が取れてしまうと最悪の場合、再度麻酔をかけて再縫合しなければいけなくなります。くれぐれも気をつけてくださいね。
抜糸
手術のところで少し触れたように縫合が抜糸の必要なもので行われている場合、10日~2週間後に抜糸に行かなければいけません。術後の経過も一緒にみてもらいましょう。
また手術で取った組織を外注検査に出している場合は、抜糸のときに一緒に結果を聞くこともできます。(早く結果が分かっていれば、分かり次第連絡することもあります。)
抜糸は麻酔の必要もなく、診察室の飼い主さんの前ですぐ終わります。
縫っている範囲にもよりますが、3分ぐらいで終わると思います。
痛みもないので大人しくしてくれる子も多いです。抜糸が終わればいつも通りです。
シャンプー、トリミングはだいたい3日後ぐらいからですが、傷の状態にもよりますので、抜糸時に尋ねてみてくださいね。
まとめ
手術日は終わってからも付いていてあげられる日を選び、手術前後の病院の指示にはきちんと従うようにしましょう。
100%安全な手術というのはないので、どんな手術でも多少なりとも危険が伴うことを理解した上で手術に備えてくださいね。
お預かりした後は、前肢の血管から点滴を流し、挿管し麻酔を流して手術を行います。
目が覚めて、状態が安定したのを確認できればお迎えに来てもらっておうちで過ごしてもらいます。
なにか気になることや心配な様子があれば、病院へ連絡して指示を仰いでください。
手術決定から抜糸までの一連の流れをご紹介しました。
麻酔のリスクなど怖い話もしましたが、病院のスタッフはみんな、動物好きで責任をもってお預かりしてくれるので、心配し過ぎず安心して預けてくださいね。