動物看護師直伝!シニア犬のためにできる食事の工夫
犬も歳をとってくるとさまざまな体の変化が起こります。
主に7歳以上の犬のことをシニア犬と呼びますが、シニア犬のために何ができるのかと悩んでいる飼い主さんは多いのではないでしょうか?
今回はそんなシニア犬のためにできる食事の工夫について紹介して行こうと思います。
良かれと思っていたことが老化を進行させる原因になっていることもありますので、正しい知識を身につけるためにもぜひ参考にしてみてくださいね。
もくじ
成犬とシニア犬の違いとは?
そもそも成犬とシニア犬ではどのような違いがあるのかを理解することによってどんなことに気をつけなくてはいけないのかやどんな食事を与えることで健康的に過ごすことができるのかを理解することができるようになります。
成犬とシニア犬ではたくさんの違いが出てきますので、犬を飼っている人やこれから飼ってみようと考えている人は知っておくようにしましょう。
そして、愛犬がシニア期に入った時でも正しく対応できるようにしておきましょう。
体力が衰えて活動量が減る
人間と同様に犬も歳をとると体力が衰えてきます。体力が衰えてくるということは活動する量が減ってくるということです。
例えば、今までは1日2回30分ずつお散歩をしていたのに、シニア犬になってからは15分ずつしかお散歩ができなくなってしまったり、寝ている時間が長くなるといった現象がみられます。
成犬の場合、1日あたり大体12時間から14時間の睡眠を取ると言われていますが、シニア犬になるにつれて17時間や18時間と睡眠時間が長くなってくる傾向にあります。
成犬とは明らかに活動量が変わってくるので、同じような食事を与えるよりもシニア犬に合った食事を与えることが必要になってくるのです。
消化する能力が低下する
シニア犬は消化する能力も成犬に比べると低下してきます。
個体差はありますが、ドライフードはふやかして与えた方が食べやすくなってきたり、ウェットフードに切り替えたりといった工夫が必要になることもあります。
また、成犬時に与えていたおやつなどをシニア期に与えることによって消化不良を引き起こしたり、下痢になってしまうということもあります。
おやつもシニア犬用のものが販売されていますので、普段上げていたおやつが合わないようだったら切り替えるなどの工夫をしてみると良いでしょう。
噛む力が弱くなる
シニア犬は噛む力も弱くなってきます。
また、若いうちからデンタルケアを行っていないと歯周病や歯肉炎といった病気にもなりやすいです。
ドライフードが食べ辛いシニア犬もいますので柔らかくして与えると良いです。
また、硬いおやつは歯が欠けてしまう原因にもなりますので注意が必要です。
最近ではシニア犬のために柔らかめのおやつが市販で販売されていますので、すこしでもおやつタイムを楽しんで欲しいと考えている場合には活用してみてくださいね。
五感の機能が衰えてくる
シニア犬は個体にもよりますが、成犬に比べると五感が衰えてきます。
特に嗅覚が衰えてくるとドッグフードの香りを感じ取りづらくなるため、なかなか食べてくれないといった悩みが生まれてくることもあります。
なるべく香りが立つようにドッグフードを温めてみたり、お湯を入れてみるといった工夫をすることで多少は改善することがあります。
また、味を感じとる味覚はもともと犬は人間のように優れていませんが、歳を取ればさらに衰えて味を感じづらくなることもあります。
味覚の衰えも食欲などに大きく関係してきますので、どんなものなら食べてくれるのかなどを探しながら与えるように工夫していく必要があります。
消費するエネルギーが少なくなる
先ほどシニア犬は成犬に比べると活動量が減るというお話しをしました。
活動量が減るということは消費するエネルギーが減るのです。
また、筋力も少なくなってくるので1日あたりの消費カロリーも少なくなってきます。
成犬時に与えていたような活動量のある犬用のドッグフードではエネルギーを摂取しすぎて肥満になってしまうこともあります。
肥満は心臓に負担をかけてしまったり、関節を悪くしてしまうといったさまざまな病気の引き金になりますので注意しなくてはいけません。
シニア犬のためにできる食事の工夫
ここまでシニア犬になるとどんな体の変化が出てくるのかについて紹介していきました。
思ったよりもたくさんの変化があるということに驚いた飼い主さんもいるかもしれません。
ここからは実際にシニア犬になったときにはどのような食事の工夫をしていくべきなのかについて説明していきます。
ちょっとした工夫によって愛犬が健康的に過ごすことができるようになるかもしれませんので、ぜひ実践してみてくださいね。
シニア犬用のフードの切り替えは焦らない
ペットショップやホームセンターなどにいくと年齢や成長段階に応じたドッグフードがたくさん販売されています。
・幼犬期、子犬期
・成犬期
・7歳以上のシニア期
・10歳以上のシニア期
主に上記のような成長段階で分かれていることが多いです。
このように成長段階で分けられていると7歳になったらすぐにドッグフードを切り替えなくては!と焦ってしまう飼い主さんもいると思います。
しかし、7歳といっても犬によって老化の進行具合は異なってきます。
成犬時に与えていたドッグフードを問題なく食べている場合や活動量がそんなに変わっていない場合には焦ってドッグフードを切り替える必要はありません。
シニア犬のドッグフードに切り替えたことによってタンパク質の摂取量が減り、老化が促進されてしまうということもあるのです。
成犬用のドッグフードとシニア犬用のドッグフードの主な違いは以下の通りです。
・シニア犬用の方がカロリーが低め
・シニア犬用には関節に良いと言われているグルコサミンなどの成分が使用されていることが多い
・成犬用の方が食いつきは良いことが多い
・粒の形状や柔らかさが違う
運動量が少なくなってくるのでカロリーは成犬用に比べると低めに作られています。
しかし、中には歳をとることによって痩せてしまう犬もいます。
その場合には高カロリーのドッグフードを与えることによってエネルギーをしっかり補給した方が良いです。
つまり、成長段階が合っているドッグフードを与えることが必ずしも正解ではなく、犬の状態によってドッグフードは選んだ方が良いということです。
また、シニア犬になると関節が弱くなってくる傾向にあるので、いつまでも健康的に歩くことができるように関節に良いとされている成分が含まれていることが多いです。
ただし、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が本当に関節を強くしてくれるかどうかはわかっていないのが現状です。
シニア犬用のドッグフードはカロリーを抑えるために脂質も少なくなっています。そのため、食いつきは成犬用に比べると悪くなってしまう傾向にあります。
ドッグフードの粒の形状も成犬用とシニア犬用では異なってくることが多いです。また、シニア犬用のドッグフードは食べやすいように柔らかく作られていることも多いです。
しかし、カリカリのドッグフードを食べられるのであれば柔らかいものをわざわざ与える必要はありません。
ふやかして与える
シニア犬でもカリカリのドッグフードを食べることができるのであればそのままで良いとお話ししましたが、中にはカリカリのドッグフードを食べられなくなってしまう犬もいます。
その場合にはふやかして与えると良いでしょう。ドッグフードをふやかすときには40度前後のお湯を注いで人肌くらいになったら与えてください。
熱湯を注いでふやかす飼い主さんもいるかもしれませんが、熱によってドッグフードの栄養素が壊れてしまう可能性があるので40度前後のお湯がおすすめです。
また、冷ましすぎると香りが立たないため食いつきが落ちてしまう可能性がありますのでできれば人肌程度の温かいときに与えるようにしてみてください。
ふやかして与えることによって消化に良いですし、食べやすくなります。どうしても食べてくれないというときにはふやかしてあげてみてください。
栄養バランスに気を配る
シニア犬に限ったことではないかもしれませんが栄養バランスには特に気を配るようにしてあげてください。
肝臓や腎臓といった内臓系に病気がない場合には高タンパク・低脂肪・低カロリーのドッグフードを与えるように心がけると良いでしょう。
シニア犬用のドッグフードの中にはタンパク質の量が少なくなってしまっているものもありますので、鶏のささみなどを茹でてほぐしてトッピングしてあげると良いです。
鶏のささみは高タンパク・低脂肪・低カロリーでありながら、犬の大好物ですのでドッグフードを食べてくれないというときにもトッピングすることによって食いつきが良くなります。
サプリメントで栄養を補う
シニア犬の状態によってはサプリメントなどを使用して足りない栄養素を足してあげるのも効果的です。
サプリメントは市販で販売されているものもありますが、動物病院に行けば獣医さんと相談しながら必要なものを出してくれます。
また、サプリメントを使用するのに抵抗がある場合には与えたい成分が含まれているドッグフードを今まで与えていたフードと混ぜて食べさせてあげても良いでしょう。
食事の回数を増やす
成犬時には1日2回の食事が一般的だと思います。
しかし、シニア犬になってくると1回に食べられる量が減ってくるので食事の回数を増やしてあげると良いです。
大体1日に与えるべき量のドッグフードを3回から4回程度に分けて与えます。
こまめに与えることによって消化がスムーズになったり、必要な食事の量を摂取することができるようになります。
食事のときの体勢に気を付ける
食事の時の体勢にも気を配ってあげると良いです。
成犬時には床に器が置いてあっても何の問題もなく食事ができていたかもしれません。
しかし、歳をとってくると筋力が衰えてくることや関節に痛みが出てくることによって床に置いてある器から食事をとるのが簡単にはできなくなってしまいます。
器をおくことのできる専用のスタンドを用意してあげたり、食べやすい位置に器を置き直すといった対策を考えてあげると良いでしょう。
また、成犬時でも頭を下げた状態でドッグフードを食べるのはあまり良くないと言われているので事前にスタンドなどを準備しておくのがおすすめです。
シニア犬の食事で困ったときにはどうする?
シニア犬に合ったドッグフードの選び方や工夫の仕方について紹介していきました。
しかし、自分では本当に愛犬にあった食事が準備できているのか不安になることもあると思います。
そんなときにはどうしたら良いのかをこの章ではお話ししていこうと思います。
獣医さんに相談してみる
シニア犬になると定期検診や病気の治療などで動物病院に行く機会が増えるかと思います。
担当してくれている獣医さんは愛犬の体の状態をよく理解しています。
そのため、食事のことで悩んだら相談してみると良いでしょう。
体の状態や病気の状態によっては療法食なども案内してくれることがありますので、何か悩んだら相談してみてくださいね。
ペットフーディストにアドバイスをもらう
ペットフーディストとは一般社団法人日本アニマルウェルネス協会が認定している資格で犬の食事についてのアドバイスを行ってくれる人です。
犬の食性や栄養素について専門的な知識を持っているため、的確なアドバイスをしてくれたり、犬の食事に関する悩みを解決してくれます。
ペットフーディストはペットショップの店員さんや動物看護師、トリミングサロンで働いている人などが取得している資格です。
セミナーなどを開いているペットフーディストもいますので、参加してみるのもよいかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はシニア犬のためにできる食事の工夫について紹介していきました。
上手に工夫することによって健康的な食事を与えることができるようになります。
また、食事やドッグフードの選び方などについてわからないことがあったときにはプロに相談するという方法があることも知っておくことで安心できるようになります。
愛犬が歳をとっても元気に楽しく過ごせるように食事の見直しを行ってあげてみてくださいね。