生後3か月までに済ませておきたい子犬のしつけ

生後間もない子犬を家族に迎え、どんな瞬間もすべてがかわいらしさであふれる姿に家族も夢中になっていること間違いないでしょう。

 

でも犬にとって生後3か月という時期は、とても大切な意味を持ちます。この時期、きちんとしつけを済ませることで、今後の問題行動の予防につながり、家族と一緒にいつでもどこでも楽しく過ごせる性格が形成されます。

 

今回はこの大切な時期だからこそ、家族が教えておくべきしつけに注目してゆきます。

 

①トイレのしつけ:家に迎えたその日からはじめましょう

子犬を家族に迎え、まず最初に直面するのはトイレの失敗でしょう。

 

どんなに可愛い子犬であっても、家中で場所も気にせずトイレをされては家族も笑ってばかりもいられません。

 

  生後3か月頃の子犬がトイレをするタイミングは

 

・食事や飲水の直後

・寝起き

・5~10分程度の軽い運動の直後

・緊張や我慢が解けた瞬間

 

これらのタイミングで少量のオシッコをします。このオシッコは子犬の未発達な内臓機能が影響するもので、決してイタズラや仕返しといった悪意のある行動ではありません。

まだ内臓も筋肉も発達途中で、長時間オシッコを我慢したり、決められた場所にたどり着くまで我慢ができないのですから仕方がありません。

 

家族は子犬のこのような状況を理解します

 

・こまめにトイレの場所まで誘導をする

・10分間隔程度でトイレの場所まで連れてゆく

・トイレまで数歩でたどり着ける範囲で子犬を遊ばせる

・サークル内でトイレを済ませてから、リビングへ出し自由に遊ばせる

 

といった工夫を心掛けてあげましょう。

子犬は新しい家族との暮らしが始める、毎日がたくさんの刺激と楽しさであふれています。遊びに夢中になってついトイレの場所を忘れてしまったり、トイレに移動するタイミングが遅れてしまうことも珍しいことではありません。

 

トイレのしつけは

・オヤツ

・トイレしつけ用スプレー

・トイレしつけ用トイレシーツ

 

なども積極的に活用してゆきましょう。

トイレしつけ用製品は、犬の嗅覚で感知できるレベルのアンモニア臭がついています。

犬はアンモニア臭を感知すると尿意を催す習性があるので、子犬をトイレの誘導したり、トイレの場所を覚えさせるには効果的です。

 

②甘噛み:仕方ないと受け入れない!噛み癖予防の正しい遊び方

生後3か月前後で犬は乳歯が抜け、永久歯に生え変わります。

この時期、歯茎にむずがゆさを感じたり、不快感が常にあり子犬は固く噛み心地の良い物を手当たり次第に噛もうとします。

 

その上、この時期、子犬の身体の成長は著しく、これまでより自由に思いのままに自分の体が動くことを実感しています。

 

これまでよりスムーズに早く、力強く体が動くのですから、当然自分の力を試してみたい、もっと広い場所、もっと遠くへ行ってみたいと思うのも当然でしょう。

 

この2つの理由が相まって、子犬は一番身近にいる家族の手や足、洋服、家具、カーペットなどを手当たり次第に噛みつきます。

 

この行動も子犬にとってはまるで悪意はありません。子犬は興味関心のある物を噛むことで、そのものが食べ物かどうか?

 

どんな反応をするのか?

 

噛んだらストレスが発散できるのか?

 

など色々なことを見極め、考えています。

 

色々な物を噛んでみた結果、家族が相手なら色々な反応をしてくれたり、時にはじゃれ合い遊んでくれたり、オヤツやオモチャを差し出してくれたりと子犬が嬉しくなるような反応を見せてくれると学習をします。

 

このお互いの誤解や勘違いが元で家族の想いとは裏腹に子犬は家族への甘噛みをエスカレートさせてゆくでしょう。

 

甘噛みの解消法は

 

・無視をする

・厳しく叱る

・お尻を叩く

・オモチャやガムを与える

 

など様々な手法があります。

ある意味すべての手法が正解ではありますが、決して1つの方法だけで問題を解決できるわけではありません。

子犬の性格やその場の状況、家族の誰を相手に噛むのかなどを見極め、色々な手法を組み合わせることが効果的です。

最終的な目標は、

 

・子犬に人間の手足を噛んではいけないこと

・家具や寝具、カーペットを噛み破壊してはいけないこと

・噛んでも良い物は決まっていること(ガムやオモチャなど)

 

ということを理解させることです。

甘噛みのしつけにはまさに飴とムチが必要です。

甘噛みをしてはいけないと叱る一方でガムやオモチャなど噛んでも良い物を与えたり、運動不足にならないよう十分な散歩の時間を設けたり、ドッグランやパピーパーティへ参加し子犬が犬同士で全力かつ対等に遊べる時間を十分に作ってゆきましょう。

 

③食器への執着:誤解をさせない安全な食事方

可愛い子犬を家族に迎え、専用の食器を用意し、食事はサークル内の決められた場所に限定するといったルールを家族できちんと守っている方も多いでしょう。

でもこの方法をしっかりと守れば守るほど、子犬は自分の食器への執着を強化させる場合があります。

執着が強まった結果、家族が食器に触れたり、サークル内に手を差し入れることに過度に攻撃的な態度を見せるようになります。

食欲旺盛で育ちざかりな子犬にとって、自分の食器に誰かが触れるということは、貴重な食べ物を横取りされることを意味します。

家族にとって想像もしていない考えですが、これは珍しい行動ではありません。

このような習慣がついてしまうと、今後、食事を与えるたびに家族は恐怖を覚え、さらにはペットホテルなど他人に世話を依頼することさえ難しくなるでしょう。

子犬がこのような誤解をしてしまうことの無いように

 

食事を与える時の手順は

 

・食事の前にオスワリ、マテなど一連の流れを決める

・家族が食器に触れている間、マテの姿勢のままで待機させる

・時には食器を使わずに家族の手のひらからフードやオヤツを与える

・食事中の子犬に声をかける、体に触れる

・食事中の子犬の皿に近づいてみる

 

食器や食べ物への執着は親兄弟と一緒に食事をすることで、お互いに攻撃的な態度をすべきではないということを学習します。

しかし生後間もないタイミングで親兄弟犬と別れた生活を送る子犬にとって、このような学習のチャンスは無いに等しく、代わりに家族が将来の執着や攻撃を予防するためのしつけを行ってゆきましょう。

 

④窮屈を我慢する:リードの着用やコントロールを受け入れる

生後3か月を迎え、子犬期のワクチン接種も完了しこれからお散歩デビューとワクワクしますね。

でも子犬も家族と同じ様に初日からお散歩を楽しめるわけではありません。

これまでの数か月間、子犬は家の中で自由気ままにすごしていました。毎日自分の成長を実感し、思いのままに体が動くことに満足しています。

このような子犬にとって首輪はもちろんハーネスやリードで家族に行動範囲を制限されることは全くもって理解不能な出来事です。

これまでの室内生活からもっと刺激の多い屋外に出掛けたにもかかわらず、リードがあることで限られた範囲内でしか行動ができないこと、走り出したい場面でもリードによって制限がかかることは窮屈すぎるでしょう。

でも犬が人間社会で安全に暮らすためには、リードに慣れること、家族の傍を歩き、歩行中の引っ張り癖なども予防しなければなりません。

 

これからお散歩デビューを迎える子犬には

 

・新しい生活に慣れた頃合いを見て、首輪をつけておく。

・室内でリードを着けた歩行の練習をする

・リードや首輪の着脱時はオスワリ、マテができる様に練習を重ねる

 

このような準備期間を作りましょう。

軽量で細い首輪であっても、子犬にとって初めて身に着けるものですから違和感があります。

中には無理にでも外そうとしたり、何度も首輪付近を掻いてしまうこともあります。

まずは数週間程度、子犬に首輪を着用させたままで生活をさせ、首輪は不快で危険なものでないことを理解させておきましょう。

その上で、室内でリードを着け家族と一緒に歩く練習をします。決して厳しくしつけるわけではなく、遊びながら楽しくリードに慣れてもらいましょう。

市販のリードは120㎝サイズが主流です。

この限られた行動範囲の中で一定の距離を保ち歩くこと、時にはリードを引っ張られ家族に誘導されることを子犬にあらかじめ覚えさせておきます。

この2つの練習が済んだうえでお散歩に出かけると、子犬は余分なストレスを感じることなく、お散歩デビューをすることができます。

 

⑤一人寝に慣れる:かわいそうはかえってストレス過多に

実は子犬も夜泣きをします。

家族が寝静まり、シンと静まり返った部屋の中で不安を覚えたり、夜中に目が覚め不意にさみしさを感じると大声で鳴き続けます。

中には数週間も夜泣きが続き、家族が寝不足になっているというご家庭もあるでしょう。

このような時、子犬を家族のベッドで一緒に寝かせてあげたいと思うのも当然のことです。

この行為は子犬の不安や夜泣き解消という意味ではとても効果があります。子犬は家族と一緒に眠り、夜中に目が覚めても家族のぬくもりを感じて再度安心して眠りにつくことができます。

でもしつけという面から考えると、この解決策は必ずしもオススメはできません。

なぜなら、家族と一緒に眠ることを当たり前のことと学んだ子犬は成長後も同じ習慣を維持しようと考えるからです。

でも子犬が成長すれば、当然生活にも変化が起き、必ずしも家族と一緒に眠ることができない場面が生じます。

例えば動物病院に入院をしたり、ペットホテルを利用する時などです。家族が旅行や出張に出かけることも当然あるでしょう。

家族が自宅にいても何等かの理由で一緒に眠ることができないということもあります。

子犬は一緒に眠ることが当たり前、一緒でなければ眠ることができないと感じているのですから、家族の一方的な理由で一緒に眠ることができないという場面に直面した時、想像以上に大きな不安やストレスに包まれてしまいます。

可愛そう、さみしそうと感じる一人寝ですが、子犬が何歳になってもいつでも安心して過ごせるように育てるためには、まだ小さく幼いうちから夜は一人寝をするようにしつけることをオススメします。

 

夜に子犬を一人寝させるためには

 

  • クレートやサークルを用意する
  •  
  • リビングなど賑やかな場所ではなく、廊下や寝室など夜間は静かに過ごせる場所にクレートやサークルを設置する
  •  
  • 家族が就寝する1時間ほど前もしくは20時を過ぎたら、子犬をクレートやサークルに入れ、照明を消し、睡眠を促す
  •  
  • 子犬の夜泣きや催促吠えはあえて無視をする
  •  
  • 翌朝、家族の起床時間まではクレートやサークルから子犬を出さずに過ごさせる
  •  

生後12か月未満の子犬はまだ長時間トイレを我慢することができないので、サークルを利用し、サークル内にトイレや給水機、ベッドを設置してあげましょう。

生後12か月を過ぎ、トイレを長時間我慢できるようになった後は、トイレを別場所に設置し、コンパクトなクレートでの就寝も可能です。

 

一人寝は分離不安症の予防にも効果的

 

犬は生後1,2か月頃に離乳が終わり、その後、心身ともに親離れが進みます。生後1年を過ぎるとすっかり大人になり、親兄弟と一定の距離を保ちながら暮らすようになります。

時に親犬は子犬に厳しく接して、あえて親から遠ざかるように促しますが、これは決して可愛そうなことでも、仲が悪いことでもありません。子犬は精神的に自立するうえで欠かせないことです。

でも生後間もない時期に親犬や兄弟と離れ、人間と共に暮らし始めた子犬は、この厳しいとも見える親離れを経験しないままで成長を遂げます。

いつまでも親代わりである人間の手厚いお世話を受け、夜は何歳になっても家族と寄り添い眠ります。

このような環境で育った子犬は気がつけば「分離不安症」という心身の不調を抱えることも珍しくありません。

分離不安症とはその言葉の通り、家族と離れたり、姿が見えなくなることで大きな不安に襲われてしまう症状です。

子犬の場合、

 

・夜間就寝中

・留守番

・トリミング

・ペットホテル

・動物病院

 

などが当てはまります。

一日中家族の後ろをついて歩き、すぐに抱っこをせがむ子犬はまさに可愛さ満点ですが、実はこの行為は子犬の抱える不安やストレスから起こるものだと家族が知ると、途端に印象が変わるのではないでしょうか?

子犬のしつけでは、子犬を可愛がることと併せて、子犬の成長も促してゆくことが必要です。

犬は生後1年で人間の18歳程度の精神的成長を遂げるといわれています。

いつまでも赤ちゃんのままではないことを理解し、成長にあった精神年齢になれるように生活習慣の理解やしつけに取り組んでゆきましょう。

 

大谷 幸代

■保有資格

・愛玩動物飼養管理士
・トリマー
・トレーナー
・アロマセラピスト
・ホリスティックケアカウンセラー
» 大谷 幸代について詳しくみる