子どもさんがいるご家庭で犬を迎えるとき考えることは?

 

犬を迎え入れるきっかけに、子どもさんがほしいと言ったからというものがあります。

子どもさんに、ぜんぶ自分で世話をする約束をさせて犬を飼う、よく耳にするケースです。

このときご家族はどう対応すればいいか、飼う前と飼ってから、犬という命を迎え入れることを、自分の体験含めて少し紹介いたします。

 

犬がほしい!子どもさんのお願いには?

犬がほしい、犬を飼いたい、自分でお世話するから!

そういう子どもさんの懇願から犬を迎え入れるというケースはよくあります。

犬が好き、それだけでは10年かそれ以上長く生きる犬のお世話はできないということ、飼う場合にどういう大変さや責任が伴うか、これをまず子どもさんとしっかりお話しましょう。

知らないことは教えてあげながら、ご家族も犬を迎えることで必要なことを一緒に調べ、勉強しながら、迎え入れる準備を進めるのが大切です。

子どもさんがほしいと言っても、犬はご家族で迎え入れ、全員で世話をしなければ難しいものです。

子どもさんだけでは対応できないことがたくさんあります。

それを家族全員で、新しい家族を受け入れ大切にすることを考え、大切な家族として犬を迎え入れてくださいね。

 

犬の世話 子どもさんだけでは難しいことが多くある

子どもさんでは難しい犬のケアや手続きは、ご家族が一緒に。

子どもさんの代わりに、子どもさんがしないから仕方なく、ではなく、犬は新しい家族でもうひとりの子どもだから、親としてお世話しよう、という意味合いで、犬の世話への自然な参加をお願いしたいところです。

 

手続きは大人の方が

犬を飼うと自治体への届け出が必要です。

どんな種類でいつ生まれたか、名前や性別、犬を飼育する住所など、自治体に届け出ることで、狂犬病ワクチンの通知が届きます。

鑑札が発行されるため、その番号は控えておき、鑑札を首輪につけておくことで行方不明時の手がかりになりますが、これは子どもさんが行うのは難しく大人がする必要があります。

自治体でも、保護者の方が申請することでトラブル回避と考えますから、親御さんが手続きしてくださいね。

 

年齢により一人での犬散歩は避けたいところ

犬の散歩は自分で、一人ですること、という約束もよくみられます。

これは年齢により、事故や個人的なトラブルにつながる可能性があることを考慮して、子どもさんだけではなく、大人が一緒のほうがいいでしょう。

 

散歩中犬の逃走も

犬は急に、予測できない行動に出ることがあります。

子どもさんでは制御できないトラブルも起きやすくなります。

リードが手から外れたり、首輪やハーネスから抜けてしまったりして、犬が走り出すことがあり、犬が車にはねられる、または行方不明になるということが起きがちです。

犬が逃げてしまうトラブルは大人にもあることで、子どもさんの場合には追いかける途中に子どもさんが事故に遭う可能性もあります。

小型犬、中型犬というサイズに関わらず、犬を制御できる人がついていくと決めておくべきでしょう。

大型犬の場合には、子どもさんより力が強く走るスピードも速いため、子どもさんが散歩担当責任者と考えないほうが安全です。

 

万一の犬同士トラブルや人への危害は大人が対応

どんなに家族の言うことを聞く犬でも、他所の人や他の犬が気に入らないという理由で、喧嘩をしたり、人にかみついたりするケースはよくあります。

そのときに、責任を持って対処するのは、子どもさんには無理です。

犬にも防衛本能があり、今までにはなかった攻撃行動をする場合があります。

絶対にトラブルを起こさない犬は、ほぼいません。

大人が制御できる状況で、万一のときには大人が対処するように、まだそれができない子どもさんだけでの散歩を日常化しないほうが安全です。

 

自宅シャンプーなど身体ケアも大人担当で

犬種により、季節により、その頻度は変わりますが、犬の身体ケアでシャンプーなどが必要になります。

トリミングに連れていく以外に、それほどでもないグルーミングや、汚れを落としたいときのシャンプーなどがありますが、これを子どもさんだけにまかせるのは、危険な側面があります。

お湯で犬を洗う作業や、爪切り、肛門腺絞りという、体に触れてシャンプー剤や小道具を使うケアは、大人が手伝うか、大人の仕事にして、子どもさんにはその様子を見せるほうがいいですね。

ケアの場面と、犬の様子は見せておきましょう。

犬がどういうことを喜ぶか、何をすれば嫌がるか、見ておかなければ理解しにくいことを、子どもさんは一緒に覚えていく良い機会になります。

 

フードの用意は一緒に

ドライフード、ウェットフード、犬の年齢や月齢、健康状態によりフードが変わります。

子犬の頃に迎えた場合、老犬を引き取った場合、ドライフードをふやかすことが必要です。

適温のぬるま湯でフードをふやかし、犬が食べられる硬さにする食事の世話は、子どもさんも一緒に、とするのがいいですね。

犬も人と同じで、食べなければ命を落としてしまったり、衰弱してしまったりすることを覚える、一番大切な世話といえます。

適当に毎日、分量もバラバラのドライフードを食器に流し込むというのではなく、その日犬がどんな様子かを家族でチェックして、犬を迎え入れるご家族皆さんで、毎日の大事な役割としていってください。

犬は食事や散歩という、自分にとって嬉しい世話をしてくれる人を、より自分にとって近い主人だという認識があります。

子どもさんが犬を飼う中で、その世話を誰か一人が担うことで、子どもさんとの関係性が崩れてしまうケースもみられます。

犬には家族全員が主人であると覚えさせる意味でもフードは全員が与えるシーンを設定しましょう。

 

動物病院にも家族で行ければベター

体調が悪い犬の診察、定期健診やワクチン接種など、これも家族で行ければより良い習慣になります。

犬の健康状態を、親御さんだけが知っている、もしくは誰か一人だけが病院から伝えられた、というケースが多々あります。

病気や怪我をしている犬の扱いを、子どもさんが理解せず、いつも通りに遊ぼうとしたり禁食内容を知らずにフードを与えたり、それを避けるために、病院からの情報は家族で共有しましょう。

子どもさんも、犬は体調を崩すもの、決してオモチャと同じ修理はできないもの、これを周知して犬と暮らす必要があります。

今日はいつもと違うから、こうしてお世話をしますよ、と小さな子どもさんにもていねいに教えて、家族全員で同じ内容のケアができるようにします。

 

看病や介護は子どもさんにもできることを分担で

犬への投薬を、小さな子どもさんに一人でさせるのはやめておきましょう。

量や回数を間違えたり、投薬を忘れてしまったり、外用薬の場合には消毒が必要なときにそれができなかったり、子どもさんに世話の一端をと思う中で、やはり難しいのが、この分野となります。

医療系のケアを子どもさんに「自分で面倒みる約束でしょう?」とまかせるのは危険です。

これは大人のご家族が一緒に、むしろ大人がしているのを、見せるようにしましょう。

犬には、看護や介護のときに、子どもさんには人間にするように、声をかけてもらうのがベターです。

犬にとって、自分が体調を崩したときに、家族がみんなで世話をしてくれる姿や様子、手で触れ声をかけてくれて、労わってくれるという喜びや安心感があります。

そこから家族への信頼度を高め、嫌な治療や介護のときにも、体をまかせていい相手だという認識を持ちます。

家族の中で、この人だけが、身体ケアをいつもしているという思い込みで、痛みや痒みなど不快感があるときの介護を、他の家族にはさせなくなる犬もいます。

家族のだれもが、無理なことは無理でも、できることはいつも自分の世話をしてくれるという意識を、犬にも根づかせるため、病気や怪我のときには、子どもさんも含めて一緒にケアをしましょう。

 

体験から 子どもが犬を飼う準備

自身の体験になりますが、幼い頃から大好きだった犬とはいえ、最初は親が根負けしたことによる衝動買いのようなものでした。

ショップから予定外に連れて帰ったのです。

衝動買いではありますが、犬は家族の一員として、老いたあと他界しました。

ショップで思いつきで買うことが、犬を幸せにするか不幸にするか、これは迎えると決めたその瞬間からの覚悟で大きく分かれます。

これを考えていただくために、体験を含めて解説です。

 

突然飼うと決めても大人次第で犬は幸せに

私は幼い頃毎日町内のショップに母と通い、自分がそのとき知っていた犬種を見つけては長時間犬の前に張り付いていました。

仕事もしていたのに、毎日自分の子がそうして時間を使い、お店に通って長く犬を見ている姿に、母は根負けして、そのとき私が檻から指を入れて愛でていた小型犬を

買ってあげようか!

と半ば自棄でいいました。

母は、猫が苦手ですが犬は大好きで、幼少期に育った環境に大型犬がいたと言っていましたし、親の自分もまた、犬を迎え入れる覚悟はしたと言ったことがあります。

衝動買いですが、犬は両親や、親の身内からも可愛がられました。

当時はペットショップなどというおしゃれな業種ではなく「犬屋さん」と呼ばれていたお店の方が、はじめて犬を飼う家族に、わかりやすい説明をしてくれたことも助けになりました。

リードや首輪、グルーミングに必要な道具、我が家で迎える犬に合うドッグフード、それを整えてくれました。

子どもとはいえ、私は近所への散歩、糞尿の始末、フードの準備、すべて自分でして小さな子犬を育てました。

自分でできないのは、シャンプーとトリミングですが、これは専門家である母が担当してくれました。

まだ5歳の私にそれをさせるのは犬の怪我に繋がると認識していた母と、やはり犬が大好きだった父が、いつもそれは自分の役目としてくれて、私はそのやり方を見て、言葉で説明され、犬の晩年はそれを自分でもできるようになりました。

 

迎えるときの責任感は子どもさんも大人もセットで

衝動買いが必ず不幸な犬を生んでしまうか、これは迎える家族次第になります。

犬は家族で育てるもの、子どもが担当することと親にしかできないこと、それをしっかり認識した上でなら、突然迎えた犬でも、幸せに天寿を全うすることができるという経験をして、私は最初の犬と過ごしました。

道で拾った犬を保護して、それを自宅で育てることになっても「衝動飼い」です。

要は、迎える犬のことを、生態や特徴までしっかり調べて把握し、性格を読み取ってお互いが邪魔だという存在にならないように、育てるとうのが鉄則になるのです。

それができるなら、子どもさんがほしいと懇願し続けて、仕方なく迎えるという形がスタートでも、犬を育てることは可能で、犬との幸せな暮らしを構築できます。

責任感と愛情、どちらが欠けても駄目だと、子どもさんには教えましょう。

 

長く生きる生き物だという覚悟を子どもさんも

子どもさんが飼いたいと言い始めたときには、受け入れ態勢が十分だとしても、犬は寿命が長い生き物です。

今後家族全員のパターンで、状況が変わる可能性を、子どもさんにも説明が必要です。それでも家族が必ず世話をすること、子どもさんには、犬も人間を家族と思い成長するから離れるのは寂しいと感じること、それらを教え、よく話し合って迎え入れましょう。

 

寿命が違うことの知識を

犬は、小型犬から大型犬まで多くの種類が存在し、多くは10数年の平均寿命であることを、子どもさんに説明して、シミュレーションとして話をします。

子どもさんが犬を飼いたいという、そのときに1年生(7歳)とします。

10年後、15年後に、子どもさんが何をしているか、家にいて犬と一緒に暮らしているかどうかを、いろいろなパターンを想定して、子どもさんに話します。

もし家族の状況が変わってしまった場合も含めます。

大人の転勤で、今の住居から引っ越すケースも考えて、子どもさんに説明します。

子どもさんが進学や就職で、入寮や一人暮らしなどを始める可能性も考えて、そのときに犬が寂しい思いをするのではないか、と犬の立場で子どもさんに教えます。

誰かが世話をするからいい、というのではなく、犬にとって一番の友だちできょうだいである子どもさんが、もし家からいなくなったら犬はどう感じるかと、それを踏まえて子どもさんと話します。

犬を迎えるというのは、新しく子どもが増えて、子どもさんにはきょうだいができるのと同じであると、そう考えてください。

 

老犬になることも子どもさんに教えましょう

犬は電池が切れるように死ぬのではありません。

病気や老いという、衰えた期間を経て死ぬケースがほとんどです。

その世話をすることも、子どもさんには教えます。

犬の介護は昼夜含めて、誰かが担います。

糞尿が垂れ流しになり、汚物の始末をする、それが楽しい犬との暮らしの末には待っています。

強い愛情と責任感が、ここで必要です。

そのときはみんなでお世話をする、それを子どもさんとしっかり約束して、可愛い子犬時代はすぐに終わることを教えて迎えてください。

 

犬と子どもさんはお互い良い影響で良い家族に

難しい問題は出てくるケースがありますが、犬は子どもさんにも良い家族になることがほとんどです。

それができず、手放してしまうことがありますが、命がそばにあること、それを子どもさんと現実のものとして受け止めながら、迎え入れましょう。

 

緒方結衣子

■保有資格

ドッグヘルスアドバイザー

■経歴

医療機関、IT企業勤務など経て2013年よりWEBライター 
子どもの時から長く犬飼育...