ドッグヘルスアドバイザーが教える犬がいる部屋の室温夏と冬湿度や外気温との差

 

犬は室内飼育が基本になり、屋外飼育で暑さや寒さにさらされるケースは少なくなりました。

それでも季節の寒暖差で室温に違いが出るため、犬が暑さや寒さで体調を崩すケースもあります。

犬がいる環境はエアコンを上手に使って犬がいる部屋を快適に保つことが重要です。

室内で犬が心地よく過ごせる室温、外気温との差など、注意すべき点を解説します。

 

犬にも暑さや寒さへの対策は必要

外飼育が当たり前だった頃には、犬は暑さや寒さが厳しい中でその気温差を受けて過ごしていました。

夏の炎天下で直射日光を受け、ジリジリと上がる高気温の中耐え、冬には地方によって雪に半分埋もれた犬小屋を見ることもあるほどで、犬は暑さや寒さに耐えられる生き物だと思い込まれていた時代が長かったのです。

近年では、温室効果で日本の温暖化から酷暑の夏が続き、犬の熱中症が頻発するようになりました。その分冬の気温低下も強く感じるため、夏と冬の寒暖差で犬の健康や寿命に影響を及ぼすことが増えています。

気をつけるべき、暑さ寒さ対策の説明です。

 

原則はエアコン利用で暑さも寒さも防ぐ

 

最近は室内飼育が一般的になり、犬を炎天下で過ごさせる環境におく家庭は少なくなっている点は安心ですが、室内だからと安心はできません。

室温調整が必要です。

これには、原則としてエアコンを利用します。

窓を開ける、扇風機、毛布をかける、それだけで大丈夫だと思っていると、思わぬ状況変化で室温が急上昇、または急降下して、犬が体調を崩したということが起きかねません。

犬がいる部屋にエアコンを設置するか、エアコンがある部屋で犬が過ごすように環境を整えましょう。

 

外気温や室温と犬の様子をよくチェック

 

では犬が暑さ寒さを避けて快適に過ごせるようにはどうすればいいか。

冬は室温を上げておけば寒くないだろう、夏は冷房温度を低くしておけば、と考えてしまいがちですが、エアコンの温度が犬個体に合わなくて暖房で暑がっていたり、冷房で寒がっていたり、その様子に気づかないケースもよくあります。

散歩に連れ出すときも、春になり暖かくなって心地よい、秋が来て少し過ごしやすくなった、そう人間が感じている気温を、犬は暑いと感じている場合もあるのです。

冬の寒さも同様で、昔の犬は庭に置かれた犬小屋に繋がれて雨や雪の降る中過ごしていたイメージから、犬は寒さに強い生き物だと今も先入観を持っている人も多く、外で震えている愛犬を、犬はそれぐらい平気だからと屋内には入れないというケースも見られます。

人ならこれぐらいで快適、と感じる、また犬なら本来平気なはずと思い込まれているレベルの、外気温や室温が、犬には暑すぎたり寒すぎたり、そのことで犬の健康に影響し、最悪の場合命にかかわる状況になってしまう可能性があるのです。

犬が舌を出して息を荒くしているときは、暖房が効きすぎています。いつもより水をよく飲むときも、暑さで水分補給を必要として、場合によっては熱中症などで脱水症状を起こしているかもしれません。

耳の裏側が冷たくなり震えているときには、冷房の温度が低すぎです。震えの原因には病気によるものもありますが、明らかに気温や室温が低い環境で、犬が動きを鈍らせ、全身を震わせているときには、寒がっていることをまず考えて暖めるようにします。

犬が快適そうに過ごしているか、これをしっかりチェックしましょう。

 

犬にとって快適な室温の目安を知っておくことも必要

犬の大きさや年齢、種類や毛質により、まったく同じ室温でいいというわけではありません。

ただ、目安を知っておき、四季を通してその室温で安定させておき、犬の様子を見ながら調整することが可能になります。

飼い主にも暑がり寒がりの体質の差があり、ついそれに合わせて冷房はつけずに扇風機や窓の開放だけで涼を求めたり、冬の暖房は使わず人間は重ね着で暖を取ったりでやり過ごし、犬がいる場所の寒暖差、外との気温差には無頓着という状況では、犬の健康に悪影響を与えてしまいます。

1年間を通じて、大きな室温の変化がなく、犬が快適と感じられる温度を保てるようにしておきましょう。

また日本は高温多湿の風土で、調整するのは室温だけではなく、湿度も気を付けなければ犬には不快な環境になります。

目安として、犬に理想的な室温と湿度を知っておきましょう。

 

犬がいる部屋の室温と湿度

 

年間を通じて、気温差が大きくならないように注意します。

21~25℃に保ちましょう。

温湿度計を設置して、湿度も管理し、50%~60%に安定させます。

加湿器や除湿器を上手に使い、梅雨のじめじめした高湿度や、乾燥しやすい冬の低湿度を、犬が乗り切れるよう工夫します。

湿度が高すぎたり低すぎたりすることで、犬の粘膜や皮膚に疾患を引き起こすこともあります。

室内にも、湿度からカビが生えたりすることにより、犬にも人にも衛生上好ましくない状態になりやすく、湿度の管理も大切です。

高温での熱中症も近年問題になっていることはもちろん、部屋が寒すぎると子犬や老犬など体力がない犬は、衰弱の原因になるため室温と湿度はしっかり管理しておきましょう。

 

室温はどの犬も同じではなく調整を

 

21~25℃の室温と、50%~60%の湿度が理想と前述していますが、これは成犬で健康な犬で、ほどよい量の被毛が身体を覆って暑さにも寒さにも犬の体質そのものである程度耐えられる状態での基準です。

これが子犬や老犬になると、目安となる基準値が変動し、日々の暑さ寒さ、犬の年齢や健康状態により、上手に調整しなければならなくなります。

子犬や老犬は、やや暖かめに室温調整をします。

生まれてから生後4ヶ月ぐらいまでの子犬は、まだ環境の変化にうまく身体が順応しにくく、暑さや寒さで体調を崩すことがあります。

冷暖房を使い、子犬が心地よく過ごせるように室温を調整し、温度により水分が体内から失われないように湿度も管理しながら飲み水も与えましょう。

老犬も同様です。

それまでは自分で快適な場所に移動したり、不快感を飼い主に訴えたりしていた犬が、だんだん衰えてそれができなくなります。

飼い主が犬の老化によるそういった変化に気づかず、暑さや寒さで体調を崩し始めていても見落としてしまう場合があるため、高齢になる犬には、それまでと同様だと考えず、心身のケアは室温や湿度も含めて、よりていねいにしましょう。

 

犬種や大きさでも調整が必要

 

小型犬も体躯が小さいことで、寒さに弱い傾向があります。

犬種により、被毛の種類が違うことも念頭におく必要があり、寒さに弱い犬種というのがいるのも知っておかなければなりません。

犬は毛質で分ける場合、ダブルコート種とシングルコート種という2種類に分類されます。

シングルコートの犬種は、寒さに弱い体質です。

犬には、アンダーコートとオーバーコートという2種類の被毛が生えます。

寒さから身を守るためにオーバーコートが生えているのがダブルコート犬種です。

これがもともとないのがシングルコート犬種です。

シングルコートの犬種は、抜け毛が少ないことで、室内飼育をするのに手入れや掃除が楽だと考えられ、人気が高まっています。

ただ、シングルコートという毛質があり、それが理由で抜け毛が少ないと知らない人は多く、寒さに弱い犬種ということも知られていないケースもよくあります。

シングルコートの犬種として、家庭犬として親しまれているものに次の犬種があります。

小型犬でのシングルコート犬は、主に次の犬種が知られています。

 

・マルチーズ

・トイプードル

・ヨークシャーテリア

 

小さいから震えているのかと思われがちですが、アンダーコートを持たない犬種だから寒さに弱いのです。

中型犬では次の犬種がシングルコートです。

 

・アメリカン・コッカースパニエル

・ウィペット

・バセンジー

 

中型犬の中でもバセンジーなどは吠えない犬種として、それを知る人には人気がある犬種ですが、寒さに弱いことはあまり知られていません。

アメリカン・コッカースパニエルも、被毛が長毛傾向で豊かなほうで、寒さ対策は万全な犬と思われがちですが、シングルコートで他の中型犬より寒さに弱い犬種です。

大型犬にもシングルコートで寒さに弱い犬はいるのです。

 

・グレートデーン

・スタンダードプードル

 

貫録を感じるグレートデーンですが、被毛は少なく寒さには弱い犬種です。暖かい環境で過ごさせるようにしましょう。

スタンダードプードルは日本には少なくなりましたが、小型のトイプードル同様、毛質はシングルコートです。

 

犬が暑がっているときのサイン 様子を見逃さない

 

犬が暑いと感じているときの様子を見逃さないようにしましょう。

飼い主である人間が、散歩での外気温や室内の温度を心地よいと思っていても、犬が人間以上に暑がりである個体が多いのです。

特に犬がいるための室内スペースが、暖房の熱い風をいつも受ける場所にあったり、初夏ではあってもまだ気温が高い時間に散歩に出て地熱を直接受けたり、そういったことで人以上に犬は暑さを感じやすくなります。

犬が、フローリングなど冷たい床に自分から移動して体を密着させて寝そべっているときには、室温が暑かったり、カーペットが暖かく感じたりして、不愉快な場所から逃げてしまっているかもしれません。

それまで犬がいた場所の温度を、気温だけではなく、犬が座ったり寝たりする場所を触って確認しましょう。

 

外気温と室温差にも注意

夏の散歩を日中の炎天下にしている人は、あまり見かけなくなりましたが、それでも買い物のついでに同行させるからと、一番気温があがる午後2時に長毛小型犬を直射日光の中アスファルトの路上を歩かせている人と会うことがあります。

これは個人的な経験になるので恐縮ですが、犬を飼っている者として、よくすれ違う地域に住んでいた頃、年配の方はよくそうなさっていました。

小型犬は舌を出してゼイゼイ言っていて、飼い主は日傘などで暑さ対策をしているという光景は、やはり今も見られます。

逆に冬は、飼い主が完全防寒をして、小さな体の老犬が強い寒風の中をヨタヨタと歩きながら霰などを顔につけているという光景もありました。

こういうとき、自宅に戻ると夏は冷房がついていて、冬は暖房で暖かい部屋、その気温差に犬の体はついていけない可能性もあります。

外気温を人間がどうこうすることは無理です。

ただ、暑さや寒さから、犬を人間が工夫して守ってやる外出は可能です。

 

散歩時間は夏と冬で変える

 

夏は早朝と、日が完全に沈んだ夜などに、散歩に連れ出しましょう。

暗くなっても、アスファルトは高温のままで、60度の鉄板に等しいともいわれ、その上を素足の犬が歩き、肉球のやけどで病院に駆け込む事例も頻発しています。

夏の昼間に散歩をさせることでの熱中症はもちろん多発しています。

冬は暖かい昼間に散歩をさせて、日当たりのよい場所を通らせます。

地方にもよりますが、雨の日で気温が急降下しているときには、気温や湿度の変化に敏感すぎる体質で、散歩を避ける場合がいい犬もいます。

犬は必ず明るい時間の散歩を好むわけではありません。

散歩に出る外と、帰宅した室内との気温差が大きすぎないように、調整しながら生活をさせることが大切です。

 

散歩中の暑さ寒さ対策

 

暑い中、寒い中をどうしても外に出さなければならないときがあります。

動物病院への通院や、家族と一緒に必要な場所へ移動しなければならない場合など、暑い時間や寒い時間、外に出すときには、暑さ寒さ対策をしましょう。

手軽でいいのが犬用の服です。

一昔前には犬に服は眉を顰められていました。

今は被毛飛散を防ぐなど、よい効果が認められています。

シングルコートの犬は、むしろ屋外だけではなく、室内でもドッグウェアを着せたほうが寒さ対策になります。

外に出るときには、より防寒度が高い服を着せて、寒暖差を埋めてやる工夫をしましょう。

夏にもドッグウェアは活躍します。

冷感タイプの服が最近は多く出回っています。

散歩に出るときに、ドッグウェアに水を浸して冷たくするタイプも出ています。

こういうタイプは、外の暑さで急激にお湯にはならず、散歩の間犬が涼しさを感じられるようにできているので、うまく使うといいでしょう。

ネッククーラーも、犬用があります。

夏も冬も、暑さや寒さから犬を守りつつ外出ができるグッズに、犬用カートがあり、これは全年齢を通じ便利に使えます。

人間のベビーカータイプです。

夏は中に保冷剤をいくつか入れて温度を下げ、冬は毛布を敷き詰めて、どちらも高温や冷たい外気の直撃から犬を守りながら外出できます。

散歩には、夏も冬も、犬の暑さ寒さ対策をしつつ、そして帰宅後は室温に注意をして、外との寒暖差をチェックしましょう。

 

 

まとめ

昔は外飼育だった犬ですが、今は大型犬も室内飼育が一般的です。

特に地球温暖化で人間も危機にさらされていて熱中症搬送される人が多く、それは犬も同様です。

冬は夏との気温差で、寒い部屋で放置されている犬は、口頭でそれを訴えることができません。

子犬や老犬の中は、それで悲しくも命を落とすケースもあり、人間が注意しておくことで健康に永らえる命は、室温や外気温の過酷な変化から、上手に保護して暮らさせてやりたいものです。

暑さ寒さ対策を、室内外でしっかりチェックしながら、犬の健康を守っていきましょう。

 

緒方結衣子

■保有資格

ドッグヘルスアドバイザー

■経歴

医療機関、IT企業勤務など経て2013年よりWEBライター 
子どもの時から長く犬飼育...