ドッグトレーナーが教える!犬の無駄吠えと甘噛みのしつけ方法
愛犬の無駄吠えや甘噛みに困っている人は、多いものです。
ですが、犬の行動にはかならず理由があります。
まずは、犬がなぜ無駄吠えや甘噛みをするのかを考えることです。
この記事では、犬が無駄吠えと甘噛みをする理由と、しつけ方法についてご紹介します。
犬が無駄吠えをする理由
まずは、犬が無駄吠えをする理由について見ていきましょう。
理由がわかれば、しつけもスムーズに行うことができるはずです。
警戒しているから
家のチャイムが鳴ったり来客があったりしたときに犬が吠えるのは、警戒をしているからです。
犬はもともと縄張り意識が強い動物ですので、知らない人や犬に対して吠えるというのはおかしなことではありません。
また、窓から外を見て人や車に吠えているのも、警戒心の表れです。
番犬として頼りになるように見えますが、家庭犬として生活をしている以上、それらの無駄吠えに対してはしっかりと対処しなければならないでしょう。
恐怖を感じているから
知らない人や犬に対して吠えるのは、先述したような警戒心の表れですが、犬が知らないものに対して恐怖を感じている証拠でもあります。
例えば私たち人間も、知らない人が近付いてきたら恐怖を感じるはずです。
特に凶器を持っていそうであれば、「近寄るな!」などといってけん制するでしょう。
それと同様に、犬は恐怖を感じることにより吠えることで、自分から相手を遠ざけようとしているのです。
恐怖を感じることで吠えるのは、しつけで直すのは難しいでしょう。
それよりも、生活環境を改善したほうが早いかもしれません。
飼い主になにかを要求しているから
犬は、飼い主になにかを伝えたい、いわゆる要求吠えをしている可能性があります。
例えば「散歩に行きたい」、「ご飯が食べたい」などが挙げられるでしょう。
ここで気を付けておきたいのが、この要求吠えに対してほとんどの飼い主が反応してしまっていることです。
人によっては、「私はこの子のいっていることがわかる」と、得意げになる人もいます。
しかし、この要求吠えに反応していることこそが、無駄吠えの原因となっています。
犬の要求吠えに対して応えていると、犬は「この人は自分のいうことを聞いてくれる、つまり自分のほうがえらいんだ」と勘違いして、上下関係が逆転してしまうことに繋がるでしょう。
テンションが上がったから
犬はテンションが上がって興奮すると、吠えることがあります。
散歩前に吠える犬は、テンションが上がっているからでしょう。
また、ドッグスポーツに取り組む犬たちは、ほかの犬がアジリティーやフリスビーをしているのを見ると、目を血走りながら興奮して吠えることもあります。
飼い主と離れるのが不安だから
犬によっては、飼い主と離れるのが不安だから吠えることもあります。
飼い主から見ると愛おしいかもしれませんが、これは分離不安という精神的な病気のひとつです。
分離不安とは、簡潔にいうと飼い主がそばにいないことによる極度の不安から、強いストレスを感じたりパニックになったりする病気です。
分離不安の原因は飼い主にあるといわれているため、犬を留守番させるときには注意する必要があります。
犬の無駄吠えのしつけ方法
犬が無駄吠えをする理由がわかった後は、しつけをしてみましょう。
ここで大切なのは、犬の無駄吠えのしつけは根気よく行うということです。
犬にさまざまな経験をさせる
犬が警戒心の表れとして吠えているのであれば、犬にさまざまな経験をさせることで改善することがあります。
そもそも、犬が警戒をするというのは、人や犬、そして物に対して恐怖を感じているということです。
ですが、犬にさまざまな経験をさせることで、犬は「ほかの人や犬、車だって怖くない!」と感じるようになるでしょう。
つまりは、犬に場慣れをさせるのです。
犬はさまざまな経験を積むことで、どんなときにも堂々とした犬になるでしょう。
無視をする
犬が飼い主に対してなにかを要求しているのであれば、無視をしましょう。
その際は、犬の目を見てもよくありません。
犬が吠えている間は、犬がその場に存在しないかのような素振りで対応します。
無視を繰り返すことで、そのうち犬は「吠えていても無駄だ」と感じるようになり、徐々に無駄吠えは改善されていくはずです。
無駄吠えの原因を取り除く
犬が無駄吠えをする原因を取り除くのも、ひとつの手段です。
例えば家のチャイムに驚いて吠えるのであれば、チャイムの音を切ってしまうのもよいでしょう。
また、窓の下半分に目隠し用のフィルムを貼ることで、ほかの人や犬を見えにくくします。
これらの手段はとても効果的ですが、物理的に犬の無駄吠えを止めるだけです。
そのため、しつけによる改善というわけではないので、根本的な解決といえるかどうかは微妙でしょう。
犬を落ち着かせるしつけをする
犬のテンションが上がることで吠える場合は、犬を落ち着かせるしつけを覚えさせましょう。
犬が落ち着くしつけとして挙げられるのは、「ハウス」と「伏せ」です。
「ハウス」は、自分のケージに犬が入ることにより、犬は落ち着くことができます。
ハウスの中にいれば安全だとわかっていれば、吠えることも少なくなるはずです。
また、「伏せ」も犬を落ち着かせるのに効果的でしょう。
伏せは寝るような姿勢になるため、リラックス効果も期待できます。
叱らない
犬の無駄吠えのしつけは、叱ってはいけません。
犬はさまざまな理由で無駄吠えをしますが、そのどれもが不安な気持ちや飼い主への要求です。
ここで叱っても、意味はないでしょう。
むしろ、犬との信頼関係に溝ができる可能性もあります。
そのため、基本的に犬の無駄吠えは叱らずに対処することをおすすめします。
外出前後に犬を過剰に構わない
犬に分離不安が疑われるのは、飼い主が原因であることが多いです。
外出前に犬へ「行ってきます」や、帰宅時に「ただいま!いい子にしてた?」などというのは避けたほうがよいでしょう。
犬を分離不安にさせないようにするには、外出前は淡々と準備をして外出し、帰宅後も犬を構う前に手洗いやうがい、着替えなどを済ませてから構うことをおすすめします。
そうすることで、犬が飼い主に依存することを避けることができるかもしれません。
犬が甘噛みをする理由
犬が甘噛みをするのにも、さまざまな理由があります。
これらの理由を踏まえて、愛犬がなぜ甘噛みをするようになったのかを考えてみましょう。
なにかを噛みたいから
犬には、もともとなにかを噛みたい欲求があります。
この欲求を満たすために噛むものには、こだわりはありません。
飼い主など人の手や服、犬によっては家の柱などを噛むこともあるでしょう。
これは、狩猟犬などの噛むことを仕事としていた犬の名残だと考えられています。
飼い主に甘えているから
飼い主に対して甘えているときにも、犬は甘噛みをします。
甘えているときや遊んでほしいときに飼い主に甘噛みをすることで、遊びたい気持ちを伝えているのかもしれません。
もちろん無駄吠えのときと同様に、この犬の甘噛みに反応するようであれば、甘噛みが癖になる可能性があります。
口の中がむずむずするから
これは子犬期に見られることですが、乳歯から永久歯への生え変わりのときに、歯の付け根がむずむずと痒くなることから、硬いものを噛んで気を紛らわせようとしているのでしょう。
社会化ができていないから
通常、犬は甘噛みをすることは少ないです。
犬同士で遊んでいるときに甘噛みをすることはありますが、噛んだときに「キャイン!」と犬が鳴くことにより、犬は「噛んだら痛いんだ」と学ぶようになります。
特に子犬のころは、社会化を形成する上でとても大切な時期です。
幼いころに犬同士の触れ合いが少なかったこともあり、社会化が十分に学べていないのかもしれません。
こうなると、飼い主自身が犬の社会化を学ばせる必要があるでしょう。
犬の甘噛みのしつけ方法
犬が甘噛みをするのが癖になったら、ほかの人や犬を傷つけてしまう可能性もあります。
甘噛みは痛くはないかもしれませんが、万が一のことを考えるとしっかりとしつけすることがおすすめです。
痛いことを伝える
犬に噛まれた瞬間に、「痛い!」と大きな声を出してみましょう。
これは、子犬同士が社会化を学ぶことと同様です。
犬は甘噛みをしたことで、飼い主が叫んだため、驚いて甘噛みするのをやめてしまうでしょう。
ここで大切なのは、犬と遊ぶようにしつけをしてはいけないということです。
ふざけたように「痛い!」というと、犬は遊んでくれていると勘違いして、さらに甘噛みの癖が付いてしまいます。
そうではなく、真剣に犬に痛いことを伝えるように、大きな声で「痛い!」といいましょう。
威圧をするようにいうと犬が怖がってしまうため、あくまで大きな声でいうだけに留めることがおすすめです。
無視をする
犬が飼い主に遊んでほしくて甘噛みをしているのであれば、無視をしましょう。
これは先述した無駄吠えのしつけと同様ですが、犬からの行動に対して飼い主が反応をしてしまうと、犬は自分の要求が通ったと勘違いして、さらに甘噛みは直らなくなります。
しかし、犬の甘噛みに無視をし続けることで、犬は「飼い主のことを噛んだからといってなにももらえない」と理解するようになり、徐々に甘噛みは収まっていきます。
なにもしていないときに撫でてあげる
甘えたい犬に対しては、なにもしないときに身体を撫でてあげましょう。
犬に「なにもしなくても構ってもらえる!」と理解してもらうことは、とても大切です。
そうすると犬から要求することは少なくなり、すべて飼い主主導になります。
犬との主従関係を保つには、飼い主からの要求に犬が応えることが必要です。
犬を撫でることは犬の気持ちを落ち着かせることにも繋がるため、犬が大人しくしているのであれば身体を撫でてあげることは効果的といえます。
ストレス解消をする
外で思い切りいっしょに遊んであげて、犬のストレスを解消してあげるのもひとつの方法です。
犬は、噛みたい欲求を満たしたくても満たせずに、さまざまなものに甘噛みをしているのかもしれません。
そのため、飼い主といっしょに外で遊んでボールやおもちゃを噛むことで、ストレス解消とともに噛みたい欲求も満たすことができます。
犬がストレスを溜めてしまうと、さまざまな異常が現れます。
日頃から犬とコミュニケーションをとっておくことで、ストレスを溜めずに生活をすることができるでしょう。
噛みつき防止スプレーを使用する
犬の甘噛みのしつけ用に、噛みつき防止スプレーが販売されています。
噛みつき防止スプレーは、その名のとおり犬の甘噛み防止のグッズです。
それを、犬の噛んでほしくない場所に噴霧しましょう。
噛みつき防止スプレーは舐めると苦いため、犬はそれを嫌がってその場所を噛まなくなります。
タンスやベッドの家具はもちろん、クッションなどに噴霧をすることで、犬のイタズラ予防になるでしょう。
もちろん、飼い主の手に噴霧してわざと噛ませるのもおすすめです。
ただし、噛みつき防止スプレーを使用するときは、犬の見えない場所で噴霧をするようにしましょう。
叱らない
無駄吠えのときもそうですが、犬の問題行動に対して叱ってもあまり意味はありません。
無駄吠えや甘噛みに限らず、問題行動は犬が飼い主を信頼していないため起こります。
そのため、これらの問題行動で犬を叱ってしまうと、さらに犬と飼い主との信頼関係に溝ができてしまうでしょう。
まずは犬とコミュニケーションをとって、飼い主と認めてもらうことが大切です。
群れで生活をする犬にとって、飼い主は頼れるリーダーでなければなりません。
もしも叱りたいのであれば、犬の近くで大きな音が鳴るなど、天罰的なしつけをするとよいでしょう。
まとめ
犬の無駄吠えや甘噛みは、多くの人が悩む問題行動のひとつです。
人によっては、「もうどうすればよいのかわからない!」とお手上げ状態の人もいるでしょう。
そこで、まずは犬がなぜ無駄吠えや甘噛みをするのかを考えてみるとよさそうです。
無駄吠えや甘噛みの原因がわかれば、自然と対処方法も導かれるでしょう。
これらの問題行動のしつけで大切なのは、犬を叱らないことです。
犬を叱らずに、問題行動が収まっているときに撫でてあげるなど、犬に寄り添ったしつけをしましょう。