猫の分離不安とその対処法
飼い主さんが外出先から家に帰った時、愛猫が玄関先まで迎えに来てくれたり、家にいる時もずっと飼い主さんの後をついてくることはありませんか?
あるいは、飼い主さんの姿が見えなくなると、大きな声で鳴くことはありませんか?
もし、そんな行動が見られるなら、それは「分離不安症」と言われる心理的な病気の可能性があります。今回は、猫の分離不安とその症状や対処法について、ご紹介したいと思います。
■分離不安の症状
〇食事の量が極端に増減する
猫によっては、飼い主さんがいないことで食が極端に細くなるコもいれば、
逆に不安感というストレスを発散するために、普段よりも食欲が増すコもいます。
〇トイレを失敗する
猫は「ここが自分のトイレ」と認識すれば、ほとんど失敗することはありません。
けれども、発情期の時や、なにか心理的に不安定になった時に、自分のトイレとは全く
別の場所で排泄をすることがあります。
それは、「狙ってトイレを外す」のか、「失敗の結果」なのかはわかりませんが、
もし、愛猫が突然、頻繁に自分のトイレ以外の場所で排泄をすると言った「失敗」を
繰り返すようになったら、心身になにか問題を抱えていて、対処が必要です。
〇飼い主さんの姿が見えないと鳴き叫ぶ
甘えたような声で鳴いているのか、悲壮な声で鳴いているのかは、飼い主さんなら
聞き分けることが出来ると思います。
甘えたような声で鳴いている時は、呼べば飼い主さんが反応してくれるとわかっているので、さして心配はいりません。
けれども、明らかに取り乱して、半狂乱で鳴いている場合は、「飼い主さんの姿が見えないとパニックになる」という深刻な分離不安になっている可能性があります。
〇皮膚にトラブルが起きるほどグルーミングする
猫はきれい好きで、自分の体のにおいを消すために、頻繁に毛づくろいをします。
ですが、分離不安症の場合は、それが度を越して、脱毛したり、脱毛してむき出しになった皮膚をずっと舐め続けたりと言った過度なグルーミングは、あきらかに異常な行動です。
それが悪化すると、自分で毛を毟ったり、傷が出来るまで尻尾や、足の先などをかじることもあります。
〇破壊行動
猫自身のストレス発散と、飼い主さんの注意を引くために、わざとモノを破壊することがあります。普段なら、決まった場所でしか爪を研がないのに、飼い主さんのカバンやソファ、壁などで爪を研いだり、段ボール、本、スリッパなどを噛みちぎってボロボロにしたりなどの破壊行動も、分離不安症から来る問題行動の一つです。
〇飼い主さんに付きまとう
飼い主さんの帰宅を玄関で待ち続け、在宅時も飼い主さんが行く場所、どこにでも
ついてきて、トイレやお風呂の前でもじっと待っている…というのは、飼い主さんにとっては困ってしまうけれど、可愛くてたまらない行動ですが、このストーカー行為はあきらかに分離不安の症状です。
〇嘔吐、下痢
ふだんよりも明らかに食事の量が増えた場合、それに伴って胃腸に負荷がかかって嘔吐したり、ストレスによって下痢をすることがあります。
■分離不安になりやすい猫の特徴
〇先天的要因がある猫
アメリカのペンシルバニア大学が、394頭の猫の行動からデータを取って
その特性を調査しました。すると、毛色によって、先天的に分離不安になりやすい猫と
なりにくい猫がいることがわかりました。
足の先だけ毛色が違う猫、グレーに近い茶色に近い毛色の猫、チョコレートに近い茶色の猫が、分離不安になりやすいそうです。なぜ、その毛色の猫が分離不安になりやすいのかについての科学的な根拠はまだ解明されていないので、その毛色の猫全てが分離不安になる、というワケではありせん。
〇突然、家族構成が変わった猫
就職や進学などで、大好きだった家族とある日、突然会えなくなったり、
逆に結婚、出産、新しい猫や犬を迎えたなど、新しく家族が増えた時、
その状態に対して猫がストレスを感じた時に、分離不安の症状が出ることがあります。
〇高齢にさしかかってきた猫
体が不調になると、心細くなるのは人間も猫も同じです。人間のように言葉でその心細さや不安を伝えられない分、飼い主さんに甘えたくなるのかも知れません。
〇愛情に満たされていて、子どもっぽい性格の猫
飼い主さんのことや、自分の家族が好きすぎて、常に誰かに抱かれていたり、遊んでもらったりしていると、いつまでも子猫のような性格のまま大人の猫になり、かなり高い確率で、極度の寂しがりやの甘えん坊の猫になります。
〇飼い主さん以外には心を開かない猫
飼い主さんの留守中に怖い思いをした、あるいは、飼い主さん以外の人間に怖い思いをさせられ、飼い主さん以外の人間に対して強い警戒心を持っていて、なおかつ、飼い主さんには強く依存している…というような猫は、特に分離不安になりやすいので、後追いぐらいの症状なら看過しても差支えありません。ですが、自傷行為、排泄の失敗、夜泣きなどの症状が見られる場合は、分離不安を改善するための対処が必要です。
■猫が分離不安になるのを防ぐ方法
〇人間の生活リズムを覚えさせる
人間の子どもでも、母親の後追いをするように、子猫も母猫の後追いをします。母猫から
引き離されり、保護施設から里親さんのもとへやってきて環境が変わった時、子猫は、自分を保護してくれる相手だと判断すれば、生きるために後追いをします。
あまりにもその様子が可愛くて、ついつい、四六時中構ってしまいますが、この時期に
猫のペースに合わせてしまうと、愛情を常に欲しがる猫に育ってしまい、分離不安になりやすくなります。
猫の言いなりになるのではなく、人間の生活リズム、人間の生活ルールをなるべく早く
猫に覚えさせると、愛情深く、精神的に落ち着いた猫に成長し、分離不安になる可能性が低くなります。
〇留守番に慣れさせる
大人の猫になってから人間の生活ルールを覚えさせるよりも、吸収力がはやく、また睡眠時間が大人の猫よりも多い子猫のうちに、一人での留守番に慣れさせます。
〇愛情を注ぐ相手を分散させる
出来るだけ、家族全員が平等に猫のお世話をし、猫が一人の人に執着しないようにしましょう。とはいえ、「ご飯を上げて、トイレのお世話をしているのがお母さん」であっても、
同時に獣医さんに連れて行ったり、いたずらを叱ったりするのもお母さんなので、
一緒に遊んでくれる子どもさんの方に、より猫が執着していることもあるので、
もしも、「うちの子、分離不安かも…」と思ったら、まず、家族のうち、誰に執着しているかを見極めましょう。
そして、可能であれば、その愛情を分散させるよう、猫を甘やかすだけの人はしっかりと
躾などにも参加してもらい、お世話だけをしている人は、積極的に猫と遊んで、
猫の愛情を分散させるようにしましょう。
■猫の分離不安を解消する対処法
〇留守番部屋の整備
飼い主さんが留守の間、思い切って、大きめのケージに入れてしまうのも一つの方法です。
大きな空間に一人きりだと、いつ、どんな危険がどこから訪れるか、猫は不安に感じているかもしれません。
まずは、クレートトレーニングをし、「クレートの中は安全」ということを猫に覚えさせ、
そのクレートがすっぽり入るケージを部屋に設置します。
猫がお留守番をする部屋を「飼い主さんがいなくても、クレートの中にいれば、安全」という環境を整えてあげれば、猫は不安を感じることもなく静かにそこで飼い主さんを待つことが出来、不安が解消されます。
〇飼い主さんのニオイのついたものを用意する
部屋の広さなどの関係で、ケージなどが設置できないのなら、飼い主さんのニオイがしっかりと沁みついた布などを用意してあげましょう。
飼い主さんが着古したパジャマや、バスタオル、靴下などを猫がよく寛いでいる場所に置いておきます。
〇気晴らしになるオモチャを用意する
猫が一人で、夢中になって遊べるおもちゃを用意します。
ほとんどの製品は、ケガや誤飲などの事故を起こさないように作られていますが、
いきなり猫だけでお留守番をする日に使い始めるのではなく、安全性を確認するまでは、飼い主さんの監視下で使用しましょう。
〇外出を悟られないようにする
クレートトレーニングの最中であったり、ケージを置くスペースがなく、どうしても猫をフリーの状態のまま、外出しなければ行けない時はなるべく猫に外出することを悟られないように静かにそっと出かけます。
電気代などが気になるところですが、テレビやラジオなどをつけっぱなしにしておくと、その音に猫の気が紛れて、寂しさや恐怖が薄れることがあるようです。
また、「外出すると見せかけて外出しない」というやり方もあります。
カバンや鍵を持ち、上着を着る…という飼い主さんの行動を猫が覚え、「あの行動をすると一人ぼっちになる」と察知します。それを逆手にとり、外出すると見せかけて、どこにもいかない…という行動を猫に示します。
そうすることで、飼い主さんが外出する時の条件を猫が理解出来ず、いつ、飼い主さんが外出するかを悟られなくなります。
〇「お留守番をすると良いことがある」と教える
分離不安が強い猫の中には、飼い主さんが外出し、帰宅する数時間の間、玄関に座り込んでずっと鳴き続ける猫もいます。
それでは、猫も体力を消耗しますし、住宅の場所によってはご近所迷惑になって、人間関係のトラブルに発展するかもしれません。
もしも、そういった問題行動がある場合は、「飼い主さんは必ず帰ってくること」「鳴かずに待っていたら、良いことがあること」を根気良く教えます。
まず、ごく短時間、最初は5分程度でも構いません。鳴かずに待てたら、「鳴かずに待てたね」と褒めて、おやつをあげます。そして、猫が鳴かずに待てる時間を5分から10分、と少しづつ伸ばしていきます。
「猫に留守番させるぐらいでそんな手間をかけるのは大変」だと思われるかも知れません。
ですが、飼い主さんを頼って、不安になっているのが、猫ではなく、もし、知能が3歳くらいの子どもだと考えてみましょう。
そう考えると、お留守番の訓練も、手間だとは思えなくなってきませんか?
〇猫への接し方を見直す
あまりにも猫に愛情を傾けすぎると、どうしても飼い主さんに依存しやすくなります。
猫が一人で寛いでいる時は、構わずにそっとしておく、いつまでも子猫扱いしない、むやみに抱き上げないなど、出来るだけ過保護にせずに、適度に距離を保って猫の精神的な成長を促しましょう。
■まとめ
猫や犬は、どんなに私たちが心を砕いて大切に想っていても、言葉で心の中の感情をお互いに伝え合うことは出来ません。
単純な喜怒哀楽だけでなく、「寂しい」「切ない」「甘えたい」「心細い」などの繊細な感情は、時に人間同士の親子、夫婦関係であっても、上手に伝え合うのは、難しいことです。
「猫に言っても理解出来ない」と思われる人も多いと思いますが、猫を家族の一員として暮している飼い主さんなら、猫がいかに人間の気持ちに寄り添ってくれる動物かをよくご存じだと思います。
分離不安になってしまうほど、飼い主さんに依存し、愛し抜いてくれている愛猫なら、きっと飼い主さんの言葉の意味や、飼い主さんが愛猫に伝えたいと思っている感情を理解することが出来るはずです。
甘えん坊で飼い主さん命という愛猫の存在は、かけがえなく愛しいけれど、分離不安症を改善しないままだと、愛猫は飼い主さんがいない間、ずっと強烈なストレスに晒され続けることになります。
愛猫の心身の健康のために、分離不安症の症状が見られるのであれば、少しづつでも改善出来るように対処して行きましょう。
