家族への愛情が強すぎる愛犬!犬が抱える分離不安というお悩み

 

甘えん坊でさみしがり、いつでも家族と一緒に居たい!こんなタイプの愛犬はまさに家族にとってかけがえのない存在です。

中にはいつでも家族に抱っこをせがむタイプもいるでしょう。

でも実は愛犬の過度な甘えぶりは分離不安という症状に当てはまることもあります。

愛犬の将来こと、家族との暮らし方について、一度振り返って考えてみませんか?

 

分離不安って何?最近耳にすることが多いペットのお悩み

分離不安という言葉がペットに用いられるようになったのは、ここ数年のことです。

それまでは愛犬の行動や過度な甘えは、しつけの問題や単なる犬の性格として片付けられていました。

でも分離不安という専門用語が注目を浴びるようになったことで、我が家とそっくりという飼い主さんや我が家の愛犬にも当てはまるという飼い主さんが相当数いることがわかり、今や分離不安は犬が抱えるお悩みの代表格になっています。

では分離不安とはいったいどんな症状を意味するのでしょうか?

この症状は、言葉のままで、「分離」することで「不安」を感じてしまうという気持ちに原因がある問題行動です。

分離する相手は大抵の場合、家族です。家族の特定の1人が対象となることがほとんどです。

例えば家族の中でいつもお世話をしてくれるお母さんへ愛犬が過度な依存をしている場合、お母さんが一瞬でもお出かけをしたり、愛犬以外のことに集中しているだけで不安な気持ちなったり、ストレスからイタズラをしたり、ソワソワと落ち着かなくなってしまうことがあります。

愛犬自身も自分の状況を理解しているので、家の中では片時もお母さんから離れないように、姿を見失うことが無いように常に緊張感を漂わせています。

気がつけば四六時中、お母さんの後をついて歩いているということもあるでしょう。

この行動を単に甘えん坊と微笑ましく受け止めてはいけません。

本来であればリラックスして過ごせるはずの家の中で、愛犬がいつも緊張感を漂わせていることに違和感を覚えてください。

分離不安の問題は気持ちの問題ですから、しつけで即座に解消することはできません。でも時間をかけ、無理強いをさせずに軽減することはできます。

まずは愛犬の今の状態をしっかりと受け止めてあげましょう。

 

■分離不安はさらなる大きな問題へとつながってゆきます

愛犬の分離不安や過度な甘えん坊、さみしがりな性格に気がついてはいるものの、実際に一緒に暮らしていても特別困ることはないと思いませんか?

もちろん愛犬を留守番させてお出かけすることに罪悪感はあります。

自分が疲れている時や具合の悪い時に愛犬に甘えられると、大変と感じることはあるでしょう。

でも気持ちの奥底では、甘えん坊な愛犬を受け入れているはずです。

愛犬にとっても家族が一緒にいてくれる、家族の気配を感じて居られる状況であれば、さほど大きな問題とは感じません。

でも犬との暮らしでは、お互いの気持ちにかかわらず離れなければならないことが必ずあります。

例えば

 

・動物病院への入院

・出張や残業

・遠方への宿泊が必要な外出

・旅行

・来客

 

出来る限り、愛犬のことは家族でお世話をしたいと思っても、離れ離れにならざるをえません。

このような時、愛犬はこれまで以上に大きなストレスにさいなまれてしまいます。

高齢になれば犬も体調を崩したり、入院が必要になります。治療や体の不調があるだけで食欲は減退しますが、その上家族と離れたことでのストレスが加われば、状況はさらに悪化するでしょう。

もちろんどんな犬も家族と離れ入院をするとなれば、様々なストレスにさいなまれますが、その程度には違いがあります。

中にはストレスが原因で治療が思うように進まないこともあります。

このような想定外で起こりうる状況でも、愛犬ができる限り平穏に過ごすために、分離不安は解消が必要と言えます。

 

どうして分離不安になってしまうの?しつけの失敗が原因?

そもそもなぜ分離不安という気持ちの不調を愛犬が抱えてしまうのか?

分離不安という言葉を聞くと、これまでの自分の愛犬への接し方が間違っていたのではと落ち込んでしまう方もいるでしょう。

実は分離不安の原因は様々で、決して家族にばかり責任があるわけではありません。家族が自己嫌悪に陥ったり、愛犬との接し方に不安を抱く必要はありません。

分離不安の原因の1つは

 

・子犬の早期離乳

・子犬の発育不良

・保護犬の過去のトラウマ

・発育期の社会化不足

 

などがあげられます。

 

子犬から飼い始めた場合

 

日本のペットショップでは生後60日前後の子犬が販売されています。

子犬の離乳は生後50日前後の為、生後60日であればすでに離乳が済み、自力でドッグフードを食べることができる程度まで成長している時期です。

でもこれはあくまでも身体的な成長の目安です。

精神的な成長は生後90日頃までは親兄弟と一緒に過ごさせることが望ましいとされています。

子犬は生後90日頃まで、住み慣れた環境で親兄弟と一緒に過ごすことで、健康的な身体の発育と安定した情緒が備わります。

90日を過ぎると、体の動きが活発になり、自然と親からの自立が進みます。

しかしペットショップで生後60日前後で販売されている子犬は、その後新しい家族の元へ迎えられ、懇切丁寧なお世話を受けます。

家族の大きな愛情を感じ暮らすうちに、気がつけば自立や親離れの必要性を見失ってしまい、何歳になっても気持ちは子犬の頃のままという状態が続きます。

生後60日前後の子犬は、一瞬でも親兄弟の姿が見えなくなったり、ぬくもりを感じられないと大声で鳴き、自分の居場所を相手に伝え、すぐに体を寄せ合います。

この親兄弟の代わりの役割を家族が新たに担っているのですから、愛犬が何歳になっても子犬の頃のまま甘えん坊になってしまうのも仕方がありません。

 

保護犬を家族に迎えた場合

 

これまで分離不安は生後90日未満、早期離乳と言われる状態にあった子犬が多く抱える問題とされていました。

でもこれは決して子犬に限ったお悩みではありません。

1歳を過ぎ成犬期を迎えた犬でも同様の行動が見られ、多くは保護犬と呼ばれる犬達です。

様々な理由からそれまでの環境を離れ、新しい家族の元で暮らし始める保護犬にとって、安心して過ごせる場所、美味しいご飯、優しい家族の存在は何物にも代えがたい大切な存在です。

辛く暗かったこれまでの生活に一筋の光が差し込めば、全力で追い求めるのは当然のことです。

優しい家族が傍に居てくれることで得られる安心感を常に覚えていたい、家族が一瞬でもいなくなってしまえば、途方もない不安を感じることも理解できます。

また家族の側も愛犬のこれまでの生活や生い立ち、やせ細った体に触れる度に、愛犬が甘えてくれることに幸せを感じます。

お互いの気持ちが同じ方向を向いているからこそ起こる結果ではあるものの、分離不安は必ずしも良好な関係とはいえないので、適度な距離を保つこと、家族の姿が見えなくても不安を感じる必要がないことを丁寧に愛犬に伝えてゆきましょう。

 

■愛犬を不安にさせずに分離不安を解消するには?

分離不安と呼ばれる症状は気持ちの問題なので、しつけや何等かの用品で簡単に解決できることではありません。

将来の入院やペットホテルの利用をスムーズに受け入れられるように、時間をかけて軽減を目指しましょう。

分離不安は家族が強硬な手段に出ると、かえって問題が悪化してしまう危険性があるので、時間をかけ、回数を重ねることが成功への近道です。

 

動物病院の入院に向けて

 

健康な時はなかなか足を運ぶ機会のない動物病院は、将来病気や不調があれば必ずお世話になる場所です。

病気なってから突然利用する、入院するとなれば当然愛犬も戸惑い、ストレスを募らせてしまうので、日ごろからこまめに動物病院を利用する習慣をつけておきましょう。

具体的な方法は

 

・シャンプーや爪切りを動物病院に依頼する

・定期的に健康診断を受ける

・散歩がてら動物病院の前を通る習慣をつける

・動物病院スタッフから愛犬にオヤツを与えてもらう

 

日ごろから愛犬が動物病院の場所に慣れ、スタッフと顔なじみになっていれば、もしペットホテルや入院でお世話になっても不安を最低限に抑えることができます。

健康だから足を運ばないのではなく、健康だからこそ気軽に足を運んでみてください。

 

ペットホテルの利用に向けて

犬を飼うと旅行に行きにくくなるとは誰もが感じています。

でもまるで旅行に行かないことも難しい上に、冠婚葬祭などで宿泊を伴うこともあります。

家族が体調を崩せばペットホテルを長期で利用することもあれば、災害などで一時的に自宅以外で愛犬に過ごしてもらうこともあり得ます。

愛犬が自宅以外でも安心して過ごせるように日ごろから経験値を上げておくことは飼い主の大切な義務です。

ただいきなりペットホテルにお泊りとなると愛犬にとって想像以上に大きな試練になります。

そこでオススメの方法がペットホテルの定番サービスにある「一時預かり」を利用する方法です。

これは数時間程度の短い利用で、数百円で手軽に利用できることもある方法です。

ショッピングモールに出店しているペットショップでは、飼い主の買い物中に愛犬を預かるサービスとして好評です。

この方法なら、手軽に数時間から滞在ができる上に、愛犬にもここで待っていれば必ず家族が迎えに来てくれるということを学んでもらうことができます。

もちろんスタッフや施設に慣れることもできるので、いざ本番のお泊りとなった時も過度な不安にさいなまれずに済みます。

旅行やお出かけの予定が決まったら、計画的に一時預かりを数回経験させ、その後お泊りへとステップアップしてゆきましょう。

 

お手入れはトリミングショップを利用

 

シャンプーや爪切りなど普段のお手入れを全て自宅で済ませているというご家庭も多いことでしょう。

分離不安を抱える犬は大抵の場合、家族に絶対的な信頼を寄せているので、犬が本来苦手とするシャンプーや爪切りも家族が相手なら抵抗せずに、大人しく受けいれてくれます。

他人が苦手、トリミングショップが苦手な愛犬をあえて託す必要も無いと思えば、今後も自宅お手入れで十分にも思えます。

でも、あえてトリミングショップを利用することも分離不安解消につながってゆきます。

家族と離れること、家族以外を信頼すること、他犬と同室で過ごすこととトリミングショップを利用することで愛犬には自宅では経験できないことがたくさん起こります。

もちろん慣れるまでは、疲れ切ってしまい、帰宅後はぐったりということも続きますが、将来のことを考え、これも社会経験になると前向きに取り組んでみてください。

トリミングショップの利用は毎月継続すると費用もかさむので、数か月に一回としたり、シャンプーは自宅で済ませて爪切りだけはトリミングショップに依頼するなど上手に使い分けてゆきましょう。

 

犬の幼稚園も効果的

 

これまで犬関連のサービスと聞くとしつけ教室が一般的でしたが、必ずしもしつけだけが目的ではないご家庭や共働きで毎日長時間の留守番が続いてしまうご家庭の声を受け、犬の幼稚園、保育園というサービスが今注目を浴びています。

このサービスの仕組みはまさに人間の幼稚園そのものです。

毎日でも週に数回でも、月に数回でも登園して、日中は他犬と遊んだり、一緒に過ごしたり、トレーニングを受けることもあります。

色々な犬と出会ったり、スタッフと過ごしたりすることで、愛犬の世界観は大きく広がります。

これまでは留守番をしながら、ひたすらに家族の帰宅を待って過ごしていた生活に新たな楽しみや刺激が増えるのですから、当然愛犬の暮らしぶりも変わります。

その上、他犬と接することで自分だけがいつまでも子犬の気分のままで過ごしていたことに違和感を覚えます。

家族だけではなかなか教えることのできない精神的な成長を他犬と接することで自然に身に着けてゆくことができます。

 

周りとのつながりでお悩みを解消できるようになります

犬との暮らしは積極的に周囲とつながりを持つことで、愛犬はもちろん家族にとっても、より快適なものになることをぜひ知っておいてください。

お悩みを声に出してみると、実は全く同じことに悩んでいる方がたくさんいることもわかるでしょう。

どうすれば解決できるのか、どんな方法が効果的かなど気軽な世間話として関心を持ってゆきましょう。

大谷 幸代

■保有資格

・愛玩動物飼養管理士
・トリマー
・トレーナー
・アロマセラピスト
・ホリスティックケアカウンセラー
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