猫のかみ癖の治し方

 

猫はひっかくもの」と思われがちですが、以外にも猫の噛み癖に悩んでいる飼い主さんは珍しくありません。

ふだんは甘えん坊で飼い主さんとしっかり信頼関係が出来てる猫でも、噛み癖のある猫は、さまざまな理由によって、飼い主さんやそれ以外の人間を噛みます。

猫に悪気はなくても、運が悪ければ、猫に噛まれたことが原因で、飼い主さんの命が危険に晒されることがある、ということは余り知られていません。

そこで、今回は、猫の噛み癖の治し方と、猫に噛まれることで感染する可能性がある病気についてご紹介していこうと思います。

 

■猫が人を噛む理由とは?

〇恐怖と敵意

普段、一緒に暮らしていて、猫と深い信頼関係を築いている筈の家族でも、猫が恐怖を感じてパニックになっている時に手を出したら、我を忘れているため、本気で噛まれてしまうことがあります。

例えば、クレートやキャリーに慣れていない猫を無理やり捕まえて、クレートに入れようとした時や、猫にとって知らない人が家の中に入ってきて、猫が逃げようとしているところを無理に捕まえて抱き上げたりすると、よほど人慣れてして、肝っ玉の太い猫出ない限り、恐怖を感じるでしょう。

 

もし、人間が恐怖を感じている時になにか武器を持っていたら、自分の身を守るために武器を持って抵抗するはずです。

つまり、猫にとっては「噛む」ことが「武器を使う」ということになるのです。

おそらく、猫が恐怖のあまり抵抗している時は、噛むだけではなく、爪を出して引っ掻く、という抵抗もしているはずです。

 

〇遊び

 

子猫同士で遊んでいたり、子猫が大人の猫などにじゃれかかって遊ぶ時、テンションが上がってしまって、つい、「ガブリ!」と噛んでしまう時があります。

もともと、子猫にとっての遊びは、獲物を狩るためのトレーニングの意味合いがあり、成猫にも、本能的に「狩りをしたい」という欲求があります。

ですから、猫は、猫同士にせよ、飼い主さん相手にせよ、「遊び」によって、狩猟本能を満たしているのです。余りにも熱中してしまい、つい、飼い主さんの手を獲物だと思い、「とどめを刺してやる!」とばかりに噛みついてくるのかも知れません。

 

〇興奮

 

排便をした後や、急に「狩りがしたい!」という衝動に駆られて、飼い主さんに嚙みついてくる場合があります。

 

〇成長の過程

 

猫は、生まれてすぐは歯が生えておらず、生後3週間ほどで乳歯が生え始め、その後、二か月ほどで全ての乳歯が生えそろいます。

この成長過程を経て、生後7ヶ月くらいで乳歯が抜け、永久歯が生えそろうまでの間、そ、歯茎がむずがゆくて、人間の手で撫でられている際にその手を噛みたくなるのです。

まだ、母乳を飲んでいるくらいの子猫から噛まれるのはまだ平気でいられますが、乳歯から永久歯に生え変わるぐらいの子猫に噛まれると、先のとがった歯も永久歯よりも鋭利で、顎の力も強くなっているので、本気で噛まれると痛いだけではすみません。

この乳歯から永久歯に生え変わるタイミングで、噛み癖が付くかどうかが決まるので、この時期は特に猫の成長状況に目を配りましょう。

 

〇拒否

うちの猫、撫でていたら急に噛みついてくる」というケースもよく耳にします。

これは、「もう、撫でて欲しくない!」と言った時や、「そこを撫でて欲しいんじゃない!」と猫がイライラして、「もういいから!」と、人間の手で撫でられることを拒否しているのです。

この「撫でているのに急に」と飼い主さんが感じても、猫は「イライラする」というサインを出しているはずで、猫にとっては決して「急に噛みついた」というワケではないのです。

ちなみに、尻尾を左右にゆらゆらと動かしている時が、「猫がイライラしている」時のサインですので、夢中で猫を撫でている時などに見落としてしまいがちです。

 

〇転嫁行動による噛み癖

 

転嫁行動とは、辞書によると「闘争状態にある個体が逃走相手ではなく別の個体を攻撃すること」とあります。つまり、喧嘩している相手ではなく、側にいる、全然違う相手に向かって攻撃を仕掛けていくことです。

もっと、簡単に言うと、「転嫁行動」による「噛み癖」は、いわゆる「八つ当たり」です。

例えば、猫は窓の外でよく、飛んでいる鳥や外にいる猫を眺めています。

自分の縄張りである庭などに、他所の猫が侵入してきたら、

出ていけ!」と攻撃をしかけたくなるはずです。

ところが、簡単に外へは出れないし、また、本気で戦いを挑んでも、

絶対に勝てそうにない相手なので、本気で戦いに出向くわけにはいきません。

しかし、イライラは募ります。

そこへ、猫が何をしても怒らない飼い主さんに向かって、猫のイライラが爆発し、噛みつかれてしまうのです。

■猫に噛まれることのリスク

〇ズーノーシスに感染する

ズーノーシスとは、動物の体内に潜む寄生虫や最近が人に感染し、健康に害を及ぼす「人獣共通感染症」のことです。

今回のように「噛む」「引っ掻く」という、動物によって外傷を負った場合だけではなく、口と口と接吻したり、ダニ、ノミなどの寄生虫の駆除を行っていなかったりすると、感染しやすくなります。

〇感染症の病名と症状

 

猫に噛まれたことによって感染する可能背のもっとも高いズーノーシスが、「パスツレラ症」です。

パスツレア症は、ほぼ100%の猫が保有しているパスツレア菌によって起こる感染症で、免疫力が下がっている時に感染すると、細菌性髄膜炎を発症するなど、重症化しやすくなります。

症状としては、まず、患部が腫れ、激しい痛みを伴います。そして、発熱、パスツレア菌関連の別の菌に感染していたら、リンパ節が腫れることもあります。

また、ごく稀なケースですが、猫も狂犬病に感染します。野良猫だったり、ヨーロッパからのエキゾチックアニマルと同じペットショップやブリーダーなどで購入した場合は、

狂犬病に感染している可能性が全くないとは言い切れないので、特に注意が必要です。

 

〇猫に噛まれた時の対処法

すぐに流水で傷口を洗い流し、出来るだけ早く、人間の病院で診察を受けます。

内科ではなく、皮膚科、外科、整形外科などを受診してください。

猫に噛まれただけだし、傷口そのものは小さいから大丈夫」と放置せず、むしろ、鋭い歯で噛まれたということは、鋭利な刃物によって、皮膚の奥底までダメージを受けています。決して、放置したり、静観したりせず、速やかに病院を受診し、医師の指示に従いましょう。

 

■猫の噛み癖を治す方法 躾偏

〇「噛んではいけない」と厳しく教える

 

大きな声を出すと猫に嫌われるかも」と思わず、ずっと家族として一緒に暮していくのなら、猫にしっかりルールを教えるのも、飼い主としての大事な役割です。

むしろ、その大事な役目を担うと、猫から絶大な信頼と愛情を得ることが出来るので、「ダメなことはダメを毅然と叱る」「良いことをした時はご褒美をあげる」という態度を徹底して貫いてください。

一番大切なのは、飼い主さんの手を噛んだら、その瞬間に「痛い!間じゃダメでしょ!」と猫の顔を見て、大きな声でピシャリと言い切ることです。

その時、思い切り、怖い顔を演じてください。猫は、人の感情をしっかり理解出来る動物ですので、「もう、噛んじゃダメじゃないの~」と甘い声で叱っても、猫には伝わりません。

もし、噛もうとしたときに「ダメでしょ!」と制して、猫が噛むのを止めたら、

その時は、思い切り、全力で褒めてご褒美を上げてください。

そうすると猫は、「噛んだら、叱られる。噛まなかったら、ご褒美がもらえる」と理解します。

つまり、「音ばかりで痛みを与えない鞭」と、「おいしいご褒美と飼い主さんの愛情」と言う「」を使った、「飴と鞭」作戦で、猫に「噛んではいけない」と教えてあげましょう。

 

〇無視する

 

この方法は、猫が「構って!遊んで」と言ってくる時に使う方法です。

噛むのを止めるから猫と遊ぶ、という行動を取っていたら、猫は「噛んだら自分に意識を向けることが出来る」と学習してしまいます。

ですから、猫が噛んできたら、まずは「痛い!」と声で飼い主さんの意思を示し、出来るだけ猫から遠ざかって下さい。そして、しばらく、完全に無視します。

ある程度時間が経ったとき、飼い主さんから猫を遊びに誘います。

そうすることで、「噛んでも遊んでくれない」「でも、遊ぶ時は目いっぱい遊んでくれる」と理解します。

要は、「噛んでも飼い主さんは思い通りにならないけど、ちゃんと自分のことを忘れずにいてくれている」と猫からの信頼を得ることが出来れば、噛む回数が減ってくるはずです。

 

 

〇猫のストレスをなくす

 

猫と一緒に暮らして、しっかりと猫の行動を観察していると、もしも、なにかストレスがあればそれがなにか、漠然とわかってきます。

例えば、おうちに迎えたばかりの猫なら、家族に馴染めず、ずっと緊張しているかも知れません。

もしも、食事とトイレ以外のお世話はせず、必要以上に猫に構わずに、猫が気ままに過ごせるように心がけてください。

また、新しい猫を迎えたり、家族の増減があったり、引っ越しや勤務時間が変わったりなど、猫の生活になんらかの変化があった場合も、猫はストレスを感じます。

そういった場合も、問題に目星がついたら、それぞれに対処し、出来るだけ猫が

感じるストレスを減らしていくようにしましょう。

 

■猫の噛み癖を治す方法 グッズ偏

〇ニオイや味で治す

猫が飼い主さんに噛みついてくる時、むやみやたらにどこでもいいから噛んでくる、ということはほとんどありません。

むき出しになっている手首や、足首、顔の真ん中で突起いている鼻を狙って噛んできます。

猫が噛んでくる場所があらかじめわかっているなら、その場所に、辛い物や柑橘類の汁などを塗っておきます。

もちろん、猫にとって害のないもの、飼い主さんの皮膚に支障のないものを選んでください。

噛んだら、変な味がした!」ということを猫が覚えれば、「噛んだら嫌な思いをする」と学習します。

この方法は、「今、噛もうとしてるな」と猫の行動を予測し、なおかつ、しっかり観察できる飼い主さんには、かなり効果が期待出来るはずです。

 

〇音で治す

猫は、非常に耳がいいので、掃除機などの大きな音が嫌いです。

その習性を利用して、猫が飼い主さんにじゃれついて、興奮し、噛みつき始めたら、おもちゃのラッパを吹いたり、空き缶を床に落としたりして、大きな音を立てます。

大きな音は、例え、自分に危害はなくても猫は不快に感じます。

人を噛む」ことと「大きな音でびっくりする」ことが関連付けられると、猫は、「噛んだら、びっくりさせられる」と学習すれば、そのうち、噛まなくなるはずです。

 

〇おもちゃで治す

 

■まとめ(精神的な安定を得て、噛み癖が治った例)

以下は、私の知人が実際に体験した話です。

〇噛み猫として遺棄された猫を迎える

 

15年間、一緒に暮らしていた猫が虹の橋を渡り、また、子どもも独立して夫婦二人だけの生活になった知人夫婦は、「子猫は手がかかって大変だから、成猫の保護猫を家族に迎えよう。私たちは、猫の扱いに慣れているから、貰い手のつかない子を迎えたい」との希望し、保護活動をしている人に相談したそうです。

そうして迎えたオス猫は、前の飼い主から「噛んであばれまわるので手に負えない」と

保護団体に持ち込まれた猫でした。

 

〇暴れん坊から甘えん坊に変身した猫

 

ところが、「噛んで暴れまわる」と言われていた猫だったのに、その知人夫婦が

前の猫と同様に、猫のしたいようにさせ、猫が快適に暮らせるようにさまざまな工夫をして暮し、上手にコミュニケーションをとりながら、その猫と信頼関係を築いていきました。

そして、迎え入れてから3ヵ月ほど経ったくらいから、暴れることも、人を噛むことも一切、無くなったそうです。

 

〇いつも満たれている。いつも、わかってくれる。

 

猫は、人に対して強い警戒心や恐怖心を持たない限り、攻撃してくる動物ではありません。

特に人に飼育されている家猫ならなおさらです。猫が飼い主さんを噛むのは、何か伝えたいことがあり、それが伝わらないことへのもどかしさから来る行動の様に思えます。

愛猫が噛んでくる、ということは猫が飼い主さんに伝えたい「なにか」があり、それをわかってほしいという願望を込めて、その手を噛んでいるのです。

痛いとは思いますが、その痛さに込められている猫の想いを受け止めて、理解することが出来れば、必ず愛猫の噛み癖は治せます。

まずは、猫の表情や行動をよく観察して、「なぜ、噛むのか?」という問題を解決していくことから始めましょう。

■まとめ

私たち飼い主と猫は、心で深く愛し合って、理解し合っていますが、言葉でお互いの要求を伝えることが出来ません。例えば、飼い主さんを猫が噛むのは、猫は「もっと構って?」「もっと遊んで?」という気持ちや、「今、具合が悪いからほっといて」という気持ちの時を伝える手段として飼い主さんを噛んでいることもあるようです。

と言うのは、保護団体から家族として猫を向か入れた知人の体験談をご紹介します。

を譲渡された人からうかがった話で、「飼い主に噛みつくから手に負えない」と、元の飼い主さんから遺棄された猫を、家族の一員として迎え入れたそうです。

能野 和子

■経歴

わんちゃん本舗というキュレーションサイトで、「めいちーままま」というハンドルネームでほとんどが犬に関する記事ですが、200本ほど記事を執...