動物看護師直伝!老犬の食欲が落ちた時にできるおすすめの対処法
健康面に気を遣うことが増える老犬期に食欲が落ちてくると、なぜ食べてくれないのかとても心配になるものです。
どうすればごはんをおいしく食べてくれるようになるのか、まずは老犬の食欲が落ちてしまう理由を探った上で、飼い主さんにもできる対策を考えてみましょう。
もくじ
老犬の食欲が落ちるのはなぜ?
「若い頃に比べて、愛犬の食べっぷりが悪くなった」と感じたことがある飼い主さんは、どのくらいいるでしょうか?
人の場合でも、10代や20代の頃に比べれば強烈な空腹感を感じることは少なくなったし、以前ほどはあまり量が食べられなくなったという人もいますよね。
年齢を重ねていくにつれ、さまざまな理由で犬も食べる意欲が落ちてしまうことがあります。
それが老犬ともなればなおのこと、「もっと食べてほしいのに…」と悩んでいる飼い主さんもいるかもしれません。
そこでまずは、なぜ老犬の食欲が子犬期や成犬期に比べて低下することが多いのか、その理由を考えてみましょう。
老犬の食欲が落ちる理由
1日に必要とするエネルギー量が減るから
老犬になると、これまで食べていた成犬期用フードから、老犬期用フード(シニア期用フード)に切り替えることをすすめられたことはありませんか?
老犬期に入ってからフードを変更する理由の1つに、「基礎代謝量の低下」があげられます。
基礎代謝とは、あえて運動をしなくても、
・呼吸をする
・内臓が機能を維持する
・体温を維持する
といった、最低限犬や人が生きるために必要なエネルギーのことを指します。
しかし、年齢を重ねていくほどこの基礎代謝量は低下すると考えられています。
また同時に、食事によって得たエネルギーを消費する場所の1つである筋肉量が低下したり、筋力が低下して体を動かす機会が失われることによって、老犬期の消費エネルギーは少なくなってしまいます。
成犬期用フードから老犬期用フードに切り替えるのには、基礎代謝量の低下による肥満対策という意味もあるわけですね。
このように、老犬の体が「前ほどたくさんのエネルギーは必要としないよ」という仕組みに近づいてしまうほど、自然とご飯を食べたいという欲求が抑えられてしまったり、運動量の減少によって消化管の動きが抑えられ、お腹が空かない時間が増えた結果、食欲にムラが出てしまいやすくなります。
老化による身体機能の低下が食事を難しくするから
犬の老化による影響の中には、
・視覚、嗅覚など五感の低下
・足腰の筋力の低下
・舌の動きの衰え
が進み、食事そのものを難しくしてしまうことがあります。
人とは違い、犬にとって「ごはんを食べたい!」という気持ちをわき上がらせる原動力は、味や見た目ではなく「匂い」です。
それを感じとる能力が低下することで、「おいしそうだな」と強く感じる気持ちが低下してしまうようです。
また、視力が低下して食器の場所がわからなくなると、お腹が空いていてもご飯の場所までたどりつくことが難しかったり、老犬になってくるとお尻周りや後ろ足の筋肉量から減り始めるため、食器がある場所まで移動すること自体が大変だと感じることも増えてしまいます。
さらには、お尻周りや後ろ足の筋力低下は、本来は体重を前方と後方で6:4~7:3程度で分散して姿勢を保っているはずのバランスを、少しずつ前がかりにしていきます。
すると、足を踏ん張って食事中に自分の体を支えきれなくなったり、食器に向かって首を下げたいけれど前方に体重がかかりすぎて転んでしまうなど、「食べるだけで体が疲れてしまう…」といった事態に陥ってしまうのです。
舌の動きがおぼつかなくなってしまうことも、老犬自身に食べたい気持ちはあるのに食器から口の中にごはんを運ぶことがうまくできず、途中で食べ疲れてしまうせいで「食べたくないの?」と飼い主さんに思われてしまう原因となります。
病気によって体に痛みや気持ち悪さを感じているから
老犬になるにつれて避けられない老化現象には、内臓機能の低下もあげられます。
胃腸や腎臓、肝臓など、取り込んだ食べ物の
・消化
・吸収
・解毒
・排泄
に深く関わる部位の能力が落ちてしまうことも、老犬の食欲の低下につながっているかもしれないと考えておかなければいけません。
これまでは何ともなかったごはんの消化に時間がかかるようになり、栄養素の吸収量が落ちて、食べたごはんを体で活用しきれなくなることもあります。
「脂っこいものやこってりした味付けのものを食べると胃もたれするようになった」「下痢をしやすくなった」など、人の場合でも年齢を重ねると実感するようなことが、老犬の体の中で起きているかもしれないのです。
腎臓や肝臓などの機能低下が進んでいる場合には、体の中で老廃物が溜まったり、水分バランスの調節がうまくいかないために、気持ち悪さやだるさを感じていることも少なくありません。
内臓機能の低下が見られる老犬では特に、子犬期用フードや成犬期用フード、おやつが多い食生活だと、脂質やタンパク質、ミネラルの含有量が高すぎて老犬の体に合わない可能性も高いため、その時の健康状態に合わせてフードを探す必要も出てくるでしょう。
また、足腰の筋力低下とも関連しますが、老犬になってくると変形性関節症を抱えていることが増え、関節の痛みによって
・座る
・立つ
・体の姿勢を保つ
といったいずれの動きもしたくないあまりに食器の前まで行かない、痛みを慢性的に抱えるあまりに食欲どころではないといったケースも考えられます。
老犬の食欲が落ちた時に試してほしいこと
ごはんを温める
老犬の食欲が落ちたかも?と感じた時には、まずは「食べたくなるようなごはん」に変えてあげることが大切です。
老犬の嗅覚を刺激して「ごはんのいい香り!」「おいしそうだから食べてみたい」と思ってもらうために、まずは食事を温めてみましょう。
冷たいごはんよりも温かいごはんの方が香りが際立ち、食欲をアップさせることができます。
・ドライフードをぬるま湯でふやかす
・温めたスープやウェットフードをトッピングする
・食事をウェットフードに変更し、与える直前に電子レンジや湯せんで温める
ドライフードよりもウェットフードの方が嗜好性や温めた時の風味が香り立ちやすいため、食事の内容をドライフードから完全に切り替えるというのもありですが、老犬の好みや体質、コスト面からドライフードを使いたいという場合も多いですよね。
そういった時には、ドライフードをぬるま湯でふやかしたり、温かいものをトッピングするだけでも変化がつき、老犬の食べたい気持ちが増すでしょう。
また、ドライフードはふやかさないと温められないと思いがちですが、香りをアップさせるためだけであれば、ドライフードのままレンジで十数秒温めるという方法もあります。
ただし、ドライフード・ウェットフード・トッピングのいずれも、加熱しすぎるとフードに含まれるビタミン類を壊してしまったり、老犬が食べる時に口の中や食道にダメージを与えてしまうことがあるので、必ず与える前に指で触れて温度を確かめてください。
手からあげたり、声をかけて隣で見守る
自分がごはんを食べる時を思い出してもらうと良いのですが、ひとりで食べるごはんは味気ないものです。
これは犬にも当てはまることがあり、若い同居犬がガツガツと食べるのを見て、その勢いに負けじと老犬の食欲が増したというケースもあります。
そのため、食事の時に飼い主さんが「おいしいね」と明るい声で話しかけてあげたり、隣で見守ってあげることで食欲が上がるかを見てみてください。
中には、食器からは食べないけれど、飼い主さんが手にごはんを乗せて差し出してあげると食べるといった場合もあります。
信頼でき、大好きな飼い主さんがそばにいてくれたり、手から食べ物を差し出してくれる安心感が、老犬の食欲を上げる可能性があることもぜひ知っておきましょう。
食器の高さや床材を工夫する
筋力の低下によって足元の踏ん張りが効かない、首を下げるのが辛い老犬には、食器の高さと食器周りの床材の変更をしてあげましょう。
口元・首・肩のラインが同じ高さになるように食器を台に乗せてあげると、首を下げなくてもごはんを食べることができたり、立った姿勢で食べるのに疲れたらお座りの姿勢でも食べることができるので、老犬の体への負担が大きく減ります。
食器の高さが上がることで、前方につんのめって転んでしまう危険も少なくなるので、食事中に前方に傾く様子がよく見られ、ふらつくことが多いようならすぐに取り入れてあげましょう。
また、
・食事中に前足が少しずつ開いてきて姿勢が崩れる
・途中で何度も足の位置を整えようとする
・一旦食べるのをやめて休憩をしてから再度食べ始めることが多い
といった場合には、床材に対して足が滑っていたり、食事の間だけであっても同じ姿勢で踏ん張ることが辛いサインでもあります。
食器台の下と愛犬が立つスペースには滑り止めのマットを敷き、踏ん張りが効かなくなってきた足の補助となるようにしてあげましょう。
同時に、肉球の間を毛が覆ってしまう犬種では、足裏バリカンをかけて、肉球のグリップ力を最大限生かせるようにしておくことも大切です。
食器の形状や盛り方を変え、食事の時に介助をする
舌の動きが衰えた老犬は、食べたい気持ちはあるものの、ごはんの食べ方が下手なせいで途中で食べ疲れしてしまうため、食器から口にごはんを運びやすいように飼い主さんが補助をしてあげる必要があります。
まず注目すべきは、老犬の食べ方です。
実は、食べるのが下手な老犬の食事の仕方は、大きく分けて2パターンに分けられます。
①ついばみ型:上部だけをついばむように食べるため、空気ばかり多く飲み込んでしまう
②押しつけ型:食器の中のごはんを舌ですくい上げられず、食器の端に押しつけるだけで食べ進められない
ついばみ型に対しては、食器の中央に頂点が高い山型を意識してごはんを盛ることが重要です。
食べたいという勢いのままてっぺんを食べ続けていけるように、食事の間に山が崩れたらその都度盛り直してあげましょう。
押しつけ型でもごはんを山型に盛ることは大切ですが、食器の中央にやや低めの横一文字の山型に整えてあげた方がより食べやすくなります。
また、食器の内部に直角の角があると、押しつけるような食べ方ではごはんが端っこに固まりやすくなるので、食器の底は角のない丸みのある器を用意してあげることをおすすめします。
そして、ついばみ型、押しつけ型のどちらにも当てはまることですが、舌の動きが衰えている老犬は、すくい上げるごはんがばらけるとどうしても食べにくさが出てしまうので、
・ドライフードにウェットフードの煮凝りやとろみスープを加えてまとまりやすくする
・ウェットフードは一口サイズのお団子状に丸める
といった工夫もしてあげてください。
食欲が落ちる原因となっている病気を治療する
老犬になると増える病気はさまざまありますが、体の痛みや不快感がコントロールできれば食欲が上がることも多いので、まずはきちんと治療を継続することが重要です。
たとえそれが完治せず、生涯付き合っていく病気だとしてもです。
・適切な内服薬やサプリメントの服用
・点滴や注射
・手術
などを検討し、病気の進行をゆるやかにしたり、原因を除去して生活の質全体を上げることを意識すれば、老犬の食欲改善にもつながっていきます。
特に、老犬になると多くなりがちな歯周病や関節炎は食欲そのものや食べ方の変化に大いに関わってくるため、シニア期に突入した段階で歯石除去を検討したり、サプリメントを導入するなど、早めに対策を考えていきましょう。
老犬が「食べられない」状態になったらどうすべき?
老犬が本当に食べたくないのか確認する
食欲をアップさせる工夫をしても、なかなか食べてくれない時もあるでしょう。
そういった時には、老犬が「食べられない」のか、単純に気持ちの問題で「食べたくない」だけなのかははっきりとさせておく必要があります。
・わがまま(選り好み)
・お腹が減っていない(運動していない、おすそわけをもらっている)
の場合には、あえて心を鬼にして栄養バランスの整ったごはんを中心とした食生活に改善し、運動をさせて健康的な生活に変えていくことが重要です。
ところが、老衰や病気などを原因として犬が自分で「食べられない」場合には、もう老犬なのに何とかしてでもごはんを食べさせるべきなのかどうか、悩む飼い主さんも多いはずです。
そういった時には、スポイトやシリンジ(針のついてない注射器)、スプーンなどでごはんを口に入れた時に、もぐもぐと口を動かして、ごはんを飲み込んでくれるかどうかを試してみましょう。
口に入れて食べてくれるのであれば、「自分だけでは食べられないけれど、食べたいと思っている」証拠だと考えて良いはずです。
チューブフィーディングを検討する
一方で、口からごはんを食べられない犬には、
・経鼻(実施するのは猫の方が多い)
・経食道
・胃ろう
チューブなどを検討する場合もあります。
しかし、多くの飼い主さんにとっては、「体にチューブをつけてまで?」と拒否感を示す手段となることも多く、口からごはんを食べられないほど弱った老犬に装着することは、犬への負担を考えても現実的とは言えません。
そのため、チューブフィーディングを検討する場合は、がんなどで手術により顎を大きく切除して口からごはんが食べにくい場合や、病気による体調の悪化が改善される見込みがあり、食欲が戻るまでの一時的な処置として検討される場合が多いでしょう。
治療でいずれは老犬の食欲が戻る可能性があっても、口から食べることで痛みや不快感が生まれる時には普通にごはんを食べることが大きなストレスとなり、たとえ飼い主さんと言えども口にごはんを入れられる給餌方法がお互いの信頼関係を崩す可能性もあります。
獣医師からチューブフィーディングの方法を提案された時には、「体に管をつけるなんて嫌!」とすぐに拒否するのではなく、老犬の現状にとってどんなメリットとデメリットがあり、生活の質がどれくらい上がるのかもよく確認してみてくださいね。
まとめ
老犬の食欲低下にはいろいろな原因があり、それが複数重なっていることもよくあります。
おいしいものに変えれば食べてくれるという単純な対策だけでは改善しないことも多いため、老犬の体の状態や食べている様子をよく観察し、工夫を取り入れてあげましょう。
ごはんをおいしく食べられることは、老犬にとって大事な毎日の楽しみでもあります。
飼い主さんにできるサポートを、ぜひ考えてあげてくださいね。
