動物看護師直伝!犬が肥満になった時に見直すべき生活習慣と減量方法
犬の肥満はさまざまな病気のリスクとなり、日常生活でも犬の生活の質を落としてしまう問題として知られています。
しかし、減量を始めようと思っても、一体何から手をつければ良いのかわからないので何となくそのまま…という飼い主さんもいるでしょう。
そこで今回は、犬の減量を始める時のポイントや注意点を紹介します。
もくじ
犬が肥満になるとどんな影響があるの?
犬も体に余分な脂肪がつき、いわゆる「ぽっちゃり体型」になった時には「肥満状態」だと判断されます。
丸いフォルムの見た目をかわいらしく感じたり、「おねだりの目線に負けてついおやつをあげちゃう!」という飼い主さんもいますが、残念ながら肥満が体に及ぼす悪影響は大きなものです。
脂肪が過剰についてしまうほど、体はそこにも酸素や血液を供給してあげなければいけなくなり、血液循環の要となる心臓や、酸素を取り込む呼吸器を無理やり働かさなければいけません。
首周りに脂肪がつくと気管が圧迫され、ちょっと歩く程度の当たり前の動きをしただけで呼吸が苦しくなってしまうこともあります。
また、体重が重くなるということは、足腰にかかる負担が増し、関節炎の悪化につながることもあるでしょう。
他にも、
・皮下脂肪が邪魔して手術を行う時の傷口が大きくなる
・麻酔が必要になった時にかかりにくく、醒めにくくなる
・暑さへの耐性が低下して熱中症リスクが増す
・運動することが億劫になり、刺激の少ない生活になる
・高血糖、高脂血症、高血圧になりやすくなる
といったデメリットもあるので、愛犬が健康的な体格でいることは、健康管理のための重要なポイントだと言えます。
犬の減量前に見直してあげたい生活のポイント3つ
1.主食の量
犬が肥満になる原因のほとんどは、「摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っていること」です。
もちろん体質や避妊・去勢手術によるホルモンバランスの変化などが関わることもありますが、食べるごはんの量が日頃の運動量と比較して多くなりすぎていれば、どんな犬でも太ってしまいます。
今、愛犬が食べている主食(ドッグフード、手作り食の両方ともに)の量は、
・理想とする愛犬の体重
・運動量
とつり合っているでしょうか?
例えばドッグフードであれば、「パッケージに記載されている通りの量であげているのに…」と思うかもしれませんが、基本的には個々に合わせた量が記載されているのではなく、あくまで目安量のため、その犬にとって目安量が「多い」「少ない」といったケースは簡単に生まれてしまいます。
また、フードの量を目分量であげていませんか?
カップやスプーンなどですくってお皿に入れるだけ…というのは手間が少なく便利なのですが、いつもと同じ量に見えたとしても、意外と誤差が出やすい準備の仕方になります。
もしも量が気になる時には、試しにカップですくったものをキッチンスケールで何gだったか計る作業を何度か行ってみてください。
ほんの数gの違いしかないかもしれませんが、特に小型犬ではその数gが毎食のカロリーオーバーを引き起こしている可能性もあります。
2.おやつ(副食)の量と種類
ちょっとした楽しみやしつけのごほうびとして、愛犬におやつをあげているという家庭も多いですよね。
犬にとって、「飼い主さんから食べ物をもらえた!」「おいしい!」と喜びの感情を得る瞬間は、毎日のワクワク感をアップする要素でもあるため、悪いことではありません。
しかし、それが過剰になると、やはり過剰なカロリーを摂取することにつながってしまったり、せっかく栄養バランスの良いごはんを食べていたとしても、たくさんのおやつによって栄養素の過不足を引き起こしてしまう可能性もあります。
まずは、愛犬の減量を始める前に、どんなものを1日に食べているのか整理してみましょう。
・ジャーキーなどの乾燥肉
・クッキーやビスケット、ボーロ
・歯磨きガム、歯磨きペースト
・主食へのトッピング(食材やスープ、追加のウェットフードなど)
・人の食卓からのおすそ分け
歯磨きガムなどは歯の健康のために与えている飼い主さんがほとんどのため、おやつという感覚は少ないものですが、やはりこれも主食ではありませんのでカロリーコントロールをする時には注意して量をチェックしなければいけません。
また、こういったおやつの習慣を「ダイエットさせたい!」という家族がいる一方で、別の家族が与えることを止めてくれないといったケースもあるので、「誰が与えているのか」「どれくらい与えているのか」も含め、改めて状況を確認してみてください。
3.運動量
元々おとなしい性格の犬だったり、食べることへの執着が強い犬が、「外に出ることが怖い…」と思ったまま成長しているケースでは、散歩の機会がほとんどないせいで運動量がかなり少なくなっていることがよくあります。
また、肥満体型になればなるほど体が重くなることで、散歩に行ってもすぐに帰ろうとしたり、その場で座り込んで歩こうとしなくなるという犬もいるはずです。
まずは、犬のことをよく観察して、
・日頃どんな運動や遊びを行って体を動かしているか
・どんな種類の運動や遊びなら体を動かしてくれそうか(好きな遊びや散歩の仕方はあるか)
・どれくらいまでの運動なら嫌がらずに行ってくれるのか
といったことをはっきりとさせましょう。
ほとんど1日寝てばかりでまったく体を動かさないという犬もいれば、ぽっちゃり体型だけど散歩大好き!という犬までいろいろです。
生活習慣に合った減量法を探すためにも、愛犬の運動に対する反応をぜひ振り返ってみてください。
健康的に愛犬の減量をする方法
その犬にとって適切な目標体重を設定する
いざ「愛犬の減量(ダイエット)を始めよう!」と思っても、ごはんやおやつをどのくらいあげれば適切なのか、愛犬の健康的な理想体重とはどれくらいなのかというのがはっきりしないことには減量も進められませんよね。
まず行うべきは、犬の体格チェックです。
・軽く押すように触ると、犬の肋骨が1本1本数えられる程度に感じる
・腰骨に触れることができる(ただしゴツゴツとした触感ではない)
・上から見て、ウエスト部分にくびれがある
というのが一般的な犬の適切な体格の基準となりますが、頑張って触れても肋骨がどこにあるのか感じられず、くびれもないというようであれば、犬の肥満度はかなり高いと言っても良いでしょう。
飼い主さん自身でチェックしてみて「うちの子、肥満かも?」と思ったら、まずは動物病院で理想的な体重を算出してもらってください。
「痩せさせなきゃ!」と思って極端に軽い目標体重を独自に設定して減量を始めてしまうと、今度は「削痩(さくそう)=痩せすぎ」となり、犬の健康的な減量にならないこともあるので注意しましょう。
犬が食べる主食とおやつの栄養バランスを整える
目標体重が決まったら、消費エネルギーにつり合うよう摂取エネルギーの調節をしていきましょう。
基本的に、1日に犬が摂取するカロリーは、算出してもらった「理想とする目標体重」に合わせることが鉄則です。
ただし、犬に減量させたいあまりにごはんやおやつをむやみに減らしすぎないようにすることも忘れてはいけません。
一気に食事量が減ると犬にとっては物足りなさを感じて「もっと欲しい!」という要求吠えや過剰なおねだり行動につながる可能性もありますし、目標体重に合った食事量よりも少なくすると必要な栄養素まで不足して、維持すべき筋肉量や脂肪も落ちてしまうことがあります。
特に、運動量が落ちて筋力を鍛える機会が減っていることが多い老犬では、食事の不足による筋肉量の低下が、介護を必要とする体の状態へと急激に近づけてしまう可能性があるので、あくまで算出した目標体重に合った食事量に減らす程度に留めておきましょう。
ドッグフードのほとんどの袋には、最小量・最大量などを含めて給与量が記載されていますが、フードごとのカロリーに合わせて動物病院で栄養計算をしてもらった方が、確実な給与量がわかります。
「ケガや明らかな病気じゃないのに動物病院に行っていいのかな?」と不安に思わず、減量についてもどんどん相談してみましょう。
犬の肥満を防ぎ、健康的な生活を送れるようアドバイスすることも、獣医学的な「予防医療」の大切な役割です。
おやつは1日の食事量の10%までに留める
減量中は愛犬におやつをあげてはいけないと思い、悲しい気持ちになる飼い主さんもいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
しかし、与える量には注意が必要です。
もしも楽しみのためにおやつをあげたいのであれば、1日の総カロリー量の10%までに抑え、おやつをあげた日は主食の量をその分減らしてください。
例えば、1日300カロリー食べるべき犬なら、
・270カロリー分は主食から
・30カロリー分はおやつから
摂取しても良いということです。
1日300カロリーで抑えるべきところを、おやつを足して毎日330カロリー与えてしまうと、減量効果が見えにくくなることも多いので気をつけてください。
肥満になっている犬では、主食の量が適正なのに普段のおやつが多くて太ってしまっているケースもよくあるので、中には主食の量を調整しなくても、おやつの量を減らすだけで健康的な体型に近づく場合もあります。
また、犬にとってはおやつの1回あたりの「量」が重要なのではなく、もらえる「回数」がたくさんであった方が満足度が高いです。
低カロリーなおやつに変えて、1個のおやつを1cm以下のサイズに小さくちぎってこまめに与えるだけで、おやつに占めるカロリーは少ないのに犬も満足できる与え方になるのでおすすめです。
おやつ習慣は愛犬の楽しみとして残してあげたいという気持ちはあっても良いので、「過剰に与えすぎない(主食の栄養バランスや摂取すべきエネルギー量を崩すほど与えない)」ということを常に意識しておきましょう。
犬の体に負荷がかかりすぎないレベルで運動量を増やす
筋肉量のアップはエネルギーを燃やす場所を作るということでもあり、基礎代謝があがって痩せやすい体につながるため、犬に運動をさせることは減量計画を練る上でとても大切です。
しかし、重度の肥満体型の犬で、歩きたがらない子を引きずってまで運動させることは難しく、ましてや関節の痛みが強い場合は、散歩の量を増やす以外の方法をとらなければいけないこともあります。
足腰の痛みがある犬は、まずその治療を行って、痛みを取った上で運動をさせていくことが必要です。
そういった痛みがない犬では、
・1日2~3分ずつで良いので散歩の時間を延ばしていく
・ボールの持ってこい遊びや引っ張りっこ遊びに誘う
・おやつやおもちゃを飼い主さんが室内に隠して犬が探し当てる宝探しゲームをする
・食事の前におすわり、立つ、伏せを何度か繰り返す(犬流の筋力トレーニング)
など、少しずつ散歩量を増やして体を慣らしていく方法や室内でできる運動、遊び感覚のゲームも試して体を動かす機会を増やしてあげましょう。
人でもほとんど走ったことがない人が「10km走れ!」と言われたら辛いですが、「1kmだけ走る」「1日20回スクワットをする」といったゆるやかな目標から始めれば、続けられることも多いですよね。
そして、運動中に飼い主さんから「えらいね!」「よくできたね!」とたくさん褒めてもらったり、飼い主さんが嬉しそうな様子を見ることでやる気がアップする犬もいるので、運動をさせる側も思い切った態度で明るく接し、愛犬を楽しませてあげると良いでしょう。
犬に減量させる時の注意点
一気に体重を減らそうとしない
愛犬の減量を始めると、体重が減っていく過程に嬉しくなりますが、急激に減らし過ぎないように注意しましょう。
最初にお話ししたことではありますが、肥満になった時には体についた脂肪にまで血液を循環させようと頑張って仕組みを整えているので、急激に体重が落ちると体がびっくりして対応しきれないことがあります。
また、急激に食事の量や体重が落ちると、「何だか変だぞ。体を守らなきゃ!」と取り込んだ栄養素をこれまで以上に溜めこもうとする反応も見られるようになります。
そのため、愛犬の減量をする時の原則は、
・1週間あたりに減らす量は、総体重の0.5~2%まで
・1~2週間ごとに体重をチェックして、急激に減りすぎていないか見る
ということを意識してください。
5kgの犬であれば、1週間に25g~100gまでです。
こうして見ると「少ない!」「減っているのか分かりづらい」と思うかもしれませんが、犬の体に負担を与えない減量をするならこれくらいがちょうど良いのです。
1ヶ月単位で見てみると、きちんと減っていることが確認できるはずなので、減量効果も徐々にわかりやすくなっていきますよ。
家族全員で協力する
おやつの問題で起こりがちなのは、「自分は愛犬に減量させたいのに、家族の一部があげてしまう」といったケースですよね。
そういった時には、「今日のおやつはここからあげて!ここからならいつあげても良いから」とその人に伝え、1日に犬が食べるおやつの量をコントロールできるようタッパーなどにあらかじめ分けて、準備しておきましょう。
同時に、肥満になった愛犬の将来のリスクについて丁寧に説明することも、その家族から理解を得るためには必要です。
自分自身からではうまく伝わらない時には動物病院に一緒に行き、獣医師から犬の現状と問題点を第3者としての立場から伝えてもらうとうまくいくことも多いのでおすすめします。
犬の減量は、家族の一部だけが頑張ってもなかなかうまくいきません。
家族みんなが愛犬を想う気持ちを大切にしつつ、協力して頑張る体制を作っていきましょう。
実はただの肥満ではない可能性もあるので注意する
犬の体格をセルフチェックした後、獣医師に理想の目標体重を算出してもらうのは、「実はカロリーオーバーによる肥満ではないケース」を見つけてもらうのにも役立ちます。
例えば内分泌機能(ホルモン分泌機能)が崩れてしまう病気では、筋力低下によって内臓を支える腹筋が落ち、お腹だけがポッコリと膨らむ「ポットベリー体型」という特徴的な体型になることがあります。
人で言うビール腹のような見た目で、飼い主さんがただの肥満だと勘違いしてしまうことが多い症状なので、自宅で気づきにくい病気の1つです。
また、お腹の膨らみが腹水や腫瘍などによるものである可能性もゼロではないので、自己判断で愛犬の減量を開始せず、動物病院と協力しながら行う方が理想的と言えます。
まとめ
愛犬の肥満が気になりつつも、なかなか減量を始められないという家庭も多いでしょう。
しかし、今は体調に問題がなくても、いつか病気として現れた時に悲しい思いをするのは犬だけではありません。
また、獣医学的に見ると、肥満であることそのものが「病的な状態」に分類されます。
愛犬が健康に長生きするためにも、体重管理にも注目してみましょう。
