動物看護師による犬の自宅看護へのアドバイス!家庭で役立つワザ一覧

今はとても元気な愛犬の病気に備えているという人はどのくらいいるでしょうか?愛犬が初めて病気になると、どうすればいいのか焦ってしまう飼い主さんも多いはずです。そこで今回は、飼い主さんが愛犬の病気に向き合うために押さえておくべきポイントや、自宅で看護をする時に必要な技術やそのアドバイスをご紹介します。

 

愛犬もいつかは病気になるかも?

うちの子はとっても元気!」と思っていても、思わぬタイミングで急に愛犬の病気が発覚するのはよくあること。

 

また、慢性的に長期間にわたって続くような病気ではなくても、環境や食事の変化などの一時的なストレスが原因で体調を崩すことは人間でもあるので、飼い主さんが愛犬の看病をする機会は犬の年齢を問わず訪れるかもしれません。

 

できれば病気になることは避けてくれれば…」と願うのは飼い主さんであれば誰しもが思うことです。

 

しかし、まったく何の対策もとらないまま実際に愛犬が病気になると、飼い主さんは心配や不安な気持ちを抱えて心が揺れ動く中で、急いで犬の看護の方法を調べたり、その方法がうまくいかない時の対処法を考えなくてはいけません。

 

そういった慌ただしい状況を避けるためにも、事前に「犬が病気になったらどうする?」と考える機会を持ち、愛犬の体が回復するまでを見守ることができるよう準備しておきましょう!

 

愛犬が病気になった時に飼い主さんがすべきこと

 

愛犬の体の状態や病気を理解する

 

もしも愛犬が病気になってしまったら、まず第一に飼い主さんがすべきことは、「愛犬の体の中で起こっていることを理解する」ことです。

 

一時的な体調不良でも、生涯にわたって続く病気でも、動物病院で治療を受けるからには病気の診断のための検査を受けるでしょうし、注射や点滴といった処置、薬の処方などが発生することになります。

 

・検査を受けた結果、どんなことがわかったのか

・注射や点滴はなぜ行うべきなのか、どういった効果が期待できるのか

・もらった薬がどんな薬で、愛犬の体にどのように作用するのか

 

こういったことを飼い主さんが理解できていないと、愛犬の治療を「なんとなく」や「獣医さんに言われたから」で進めてしまい、後で「あの時もっとよく確認していれば良かった…」といった後悔につながりかねません。

 

また、通院・入院・手術などを行うべき理由への理解があいまいだと、本当は治療がまだ継続して必要なのに、「元気そうに見えるしもういいのでは?」と治療が中途半端になって、愛犬の病状を悪化させてしまう可能性もあります。

 

インターネットなどで疑問を解決したり、情報を集めやすい世の中にはなりましたが、その時愛犬の体の中で起きていることや必要な治療は千差万別のため、やはり愛犬の治療を担当してくれる獣医師に直接確認することがベストです。

 

「忙しそうだし…」と尻込みせず、ぜひ積極的にコミュニケーションし、愛犬の体や治療への理解を深めましょう。

 

愛犬を通院させる

診断結果に応じて、一度の治療で終わらないのであれば、飼い主さんは獣医師の指示のもと愛犬を通院させ、治療を受けさせてあげる責任があります。

 

病気によっては、飼い主さんの判断で治療を途中で止めてしまうと早期に再発したり、治り切らないまま残って慢性化してしまうなど、動物病院への通院が頻繁に繰り返されるはめになって、治療期間が長期化することもあるかもしれません。

 

治すことができる病気なのであれば集中的に治療を行い、獣医師が「治ったね!」と太鼓判を押してくれるまで通院を継続してあげましょう。

 

もしも生涯にわたって付き合っていかなければいけない病気であったとしても、きちんと検診を受けて病気がコントロールできていれば、通院や検査、処置が必要になる間隔を延ばすことができたり、薬の種類をタイミングを見て減らす、もしくは増やさないで維持することができる可能性もあるのです。

 

しかし、そうは言っても、動物病院の開院時間が仕事や家事、育児などのタイミングと重なってしまうという人も多く、通院がしづらいこともありますよね。

 

そういった時には、

 

・動物病院の診察予約システムを利用して待ち時間を減らす

・検診の間隔を獣医師と相談して調整する

・自宅への往診を依頼する

・診察可能時間が飼い主さんの生活スタイルと合致する動物病院を選ぶ

 

などの対応をとってみてください。

 

「行けなかったから検診の間隔がずれちゃった…」と処置の間隔が開いたり、飲むべき薬が切れてしまって治療プランが崩れるよりも、きちんと相談をして飼い主さんも対応しやすい通院間隔や検診方法を探した方が、

 

・愛犬に元気になってほしい飼い主さん

・病気の辛さから解放されてお家でのんびり過ごしたい愛犬

・治療がスムーズに進むよう考える獣医師

 

のすべてにメリットが生まれるはずです。

 

飼い主さん自身が自宅で上手に看護をする

 

愛犬の病気の治療がすべて動物病院で済ませられれば良いですが、

 

・薬の内服

・点眼

・点耳

・薬浴(薬用シャンプーを使ったシャンプー)

・強制給餌(自分から食べる意欲を失った愛犬の口にご飯を入れて栄養をとらせる)

 

など、自宅で飼い主さんが行うべき看護が生まれることも多いですよね。

 

獣医師が考える犬の病気の治療プランは、多くの場合動物病院で行う処置だけではなく、自宅で行ってもらう看護も含めて考えます。

 

なぜなら、注射や点滴で薬を入れても作用が続く時間には限界がありますし、何より投薬のためだけに毎日来院しなければいけないとなると、飼い主さんや犬の負担につながるからです。

 

動物病院が苦手!という犬もいたり、平日はなかなか通院できないという飼い主さんも少なくないので、獣医師は飼い主さんの希望を聞きつつ今後の方針を立てていきます。

 

つまり、自宅での看護がうまくいってはじめて治療プランが成立することが多いというわけです。

 

そのため、自宅での看護がうまくいかず、投薬などができないままの状態が続くと愛犬の治療が滞ってしまいます。

 

いざ必要になった時に「どうやって行えばいいんだろう?」と焦らなくてもいいように、犬の看護で使える基本のワザを知っておきましょう。

 

飼い主さんが自宅で犬の看護をする時に使えるワザ

 

1.内服薬を飲ませる

 

人間の場合もそうですが、薬を飲む時には最初にいくつかの注意点を確認した上で飲み始める必要があります。

 

・その薬はご飯と一緒に飲んでもいい薬ですか?

・飲むタイミングはいつですか?

・1日に何回飲ませなければいけませんか?

・薬の形を変えて与えても問題ありませんか?

 

内服薬の中にはご飯と同時に飲むと効力が薄まってしまうもの、反対に、ご飯と一緒に飲まないと消化管の粘膜が荒れやすくなってしまうものなどさまざまあります。

 

また、「1日1回あげてください」と言われたとしても、どんなタイミングであげてもいいというわけではないのです。

 

基本的に薬は、飲んでから効果を発揮し、効果が薄まる頃にまた飲んで、体の中で一定の効力を発揮し続けられるように飲むタイミングを調整して処方されます。

 

そのため、1日1回の薬で「昨日は夜」「今日は朝」「明日は夕方」とタイミングがずれてしまうと、体の中での薬の効き具合が不安定になってしまうことがあります。

 

さらには、錠剤で出たものを自宅で粉になるようつぶして飲ませる場合など、形状を変えて飲ませやすい状態にして与えたい時も、薬の効き目に影響がないかを確認してから行いましょう。

 

その上でいざ薬を飲ませ始めるわけですが、1回分のご飯すべてに薬を混ぜてしまうと、愛犬がご飯を途中で残した場合、どのくらい薬を飲めたのかわからなくなってしまいます。

 

確実に愛犬が薬を飲めたのかどうかがわかるように、まずは1口サイズのお団子ご飯を作り、その中に薬を入れて先に食べてもらいましょう。

 

お皿に入ったご飯は、投薬後に食べさせます。

 

ちなみに、お団子にするご飯は、投薬用に別で購入した、薬の匂いがごまかしやすい風味が強めのウェットフードがおすすめです。

 

普段の主食に使っているご飯を使ってもいいのですが、食に敏感な犬の中には「前に薬が入っていたから食べない方がいいかも…」と警戒して、これまでおいしく食べていたのにピタッと食べてくれなくなることもあるので注意してください。

 

最近は、真ん中に穴が開いた投薬用おやつや、おいしい味のする投薬用ペーストが動物病院でも販売されており、薬も飲ませやすくなりました。

 

薬の内服が必要になった時には、かかりつけの動物病院で尋ねてみるのも良いですね。

 

もしも愛犬が口周りを触られることが平気で、飼い主さんが愛犬の口に直接錠剤を投薬する時には、薬を飲ませた後にスポイトなどで必ず水を飲ませてあげましょう。

 

人もそうですが、薬だけを飲み込んでも胃まで流れ落ちず、食道に長く留まってしまう可能性があるので要注意です。

 

2.点眼薬・点耳薬をさす

 

点眼薬(目薬)や点耳薬は、犬にとって触られると恐怖を感じやすい部分である目や耳に使う薬です。

 

飼い主さんの多くは確実に薬を入れようと正面から行いがちですが、犬にとっては真剣な雰囲気で迫ってくるその様子に「何をされるんだ!?」と不安になって、点眼や点耳を嫌がることがあります。

 

犬に点眼や点耳をする時には、飼い主さんのお腹に犬のお尻をくっつけるように座って、愛犬からは見えづらい後ろ側から薬を入れてあげましょう。

 

例えば点眼であれば、

 

1.左手で愛犬の顎を支えるように持つ

2.右手の親指と人差し指で点眼薬をつまんで持つ

3.犬に見えないよう後ろ側から右手にある点眼薬を近づける

4.右手の中指や薬指で愛犬の右まぶたを軽く持ち上げてキープする

5.点眼薬を垂直にし、薬液を1滴右目にさす

 

(※利き手が左の人はすべて反対の手に変えて行った方が点眼しやすいかもしれません)

といった流れで行います。

 

この方が、正面から点眼や点耳を行うよりも、犬の恐怖心や抵抗感が少なくなります。

 

行った後はおやつやおもちゃ遊びのご褒美をあげて、「点眼や点耳をした後は良いことが起こる」と印象付けておくとなお良いでしょう。

 

さらっとした液体の点眼薬や点耳薬は、垂直にして薬液を出すことで規定量が出やすくなるので、寝かせたまま薬液を出さないように注意してください。

 

また、万が一犬が驚いて飛んでも目や耳に薬瓶の先端が刺さらないよう、少し距離を空けて点眼・点耳してあげると良いですね。

 

3.薬浴をする

 

皮膚の病気を抱えている犬の場合、市販のシャンプー剤ではなく、薬用シャンプーを処方してもらって洗うことで、かゆみや赤み、皮膚の乾燥やベタつきが軽減されます。

 

しかし、薬浴をしなければいけない犬の皮膚はとてもデリケートであり、使用する薬用シャンプーも治療の一環として行うものなので、薬の効果が発揮されるようちょっとした洗い方のコツを守る必要があります。

 

1.被毛をブラッシングして、ムダ毛や表面のゴミをとる

2.全体をまんべんなく濡らし、表面にある汚れを除去してから洗う

※湯温は人が触って「少し冷たい」と感じる程度です

 

3.薬用シャンプーはしっかりと泡を作ってから皮膚にのせる

4.皮膚の状態の悪いところから洗い始めて、薬液を10分ほどかけて馴染ませる

※指の腹で優しくこする(マッサージする)ようにして洗います

 

5.ぬるま湯で毛の根元からしっかり洗い流し、すすぎ残しを避ける

6.タオルでよく拭いて乾かす

  ※どうしてもドライヤーが必要な場合は冷風のみを使用します

 

普通のシャンプーと違うところは、やはり薬液を犬の皮膚に浸透させる時間が必要な部分です。

 

ただ、じっとただ待つだけなのは難しい犬も多いため、まずは皮膚状態が悪いところから洗い始めると、自然と10分経過していることが多いので試してみてください。

 

また、熱いお湯やドライヤーの温風で熱刺激を避けるのは、皮膚の乾燥や体が過剰に熱くなることでかゆみが増してしまう可能性があるからです。

 

愛犬の皮膚の状態に合わせて保湿剤も活用して、肌を整えてあげましょう。

 

4.強制給餌をする

 

体調が悪化して、一時的に自分からご飯を食べたくない気持ちが強くなったら、飼い主さんが食事を手伝ってあげなければいけない場面も出てきます。

 

強制給餌と聞くと無理やり食べさせるイメージが強いですがそうではなく、「お腹は空いている気がするけれど、お皿から食べる気になれない…」という愛犬の気持ちを手助けしてあげることだと思うと良いでしょう。

 

最初の2~3口だけを口の中に入れてあげれば自分で食べたい気持ちが強まる犬もいますし、そうではなくても、口に入れればモグモグと口を動かして飲み込んでくれるなら、少なくとも犬は食べようとする気持ちを持っている証拠です。

 

飼い主さんの指にご飯をつけて歯茎に塗り込むように入れてみたり、誤嚥に注意しながらシリンジ(針のついていない注射器)にご飯を詰めたものを少しずつ口に差し入れてみて、愛犬の様子を観察しましょう。

 

ご飯を食べることは、体力を失わないようにして、病気と闘うためにとても大切です。

 

温めたり、トッピングをしたりといった一般的な方法だけでは難しい時には、あえて愛犬の口の中にご飯を入れてみるという方法も試してみてください。

 

愛犬が病気になる前にしておくと良いこと

 

どこでも触れる犬になっておく

 

病気になる前から、愛犬のためにできることを探してチャレンジしておくことも重要です。

 

病気になると検査や処置、自宅での投薬などが必要になりますが、この時に「どこを触られるのも苦手!」という犬だと、治療の選択肢が限られてしまうことがあります。

 

・顔周り(口元、目、耳など)

・足先

・しっぽやお尻

・お腹

 

など、普通なら犬が他人に触られることが得意でない部分を中心に、飼い主さんだけでなく獣医さんでも触れることが可能になるよう、触られることが大好き!という犬になっておきましょう。

 

かかりつけの動物病院を決めておく

 

愛犬のかかりつけの動物病院があるかないかも、病気の治療を始めるにあたって大きなポイントになります。

 

飼い主さんの視点で見ると、愛犬の病気を心配に思っている中で「この獣医さんは愛犬に合うか」「信頼できる動物病院か」と、一から検討している余裕がなかなか生まれないからです。

 

犬にとっても、体の不調がある中で慣れない場所に次々と訪れることは、精神的にも身体的にも負担になります。

 

また、かかりつけになる動物病院を探している時間は、治療のスタートが遅れることにつながるかもしれません。

 

かかりつけ以外の動物病院の情報も集めておく

 

かかりつけの動物病院があっても、病院の規模や専門性によっては、セカンドオピニオンが必要になることがあります。

 

また、受診したい緊急のタイミングでかかりつけが休診であった場合には、他の動物病院のことを知らなければ焦ってしまいますよね。

 

中には、往診サービスを求めているけれど、かかりつけでは提供していないということもあるかもしれません。

 

そのため、いざという時の準備として、夜間対応や専門性のある動物病院、機器設備の整った動物病院など、かかりつけが持っていない機能のある動物病院についても、情報を集めておくことをおすすめします。

 

まとめ

愛犬が病気になった時には、飼い主さんの誰もが焦ってしまうもの。

 

しかし、事前に準備をしていたり、基本の知識を持ち合わせていれば、愛犬の治療に向き合いやすくなることもあるでしょう。

 

愛犬の治療がスムーズに進むよう、自宅でできることに飼い主さんが積極的にチャレンジして、愛犬の体調を改善させる手助けをしてあげてください。

桐村 佳那

■資格
動物看護師統一認定機構認定動物看護師
愛玩動物飼養管理士1級
ホリスティックケア・カウンセラー

 

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