歯磨きに挑戦したい!初めてでも簡単歯磨き法
ペットショップの店頭に並ぶ犬用歯ブラシ用品を見かけ、驚かれた方もいるでしょう。今や犬も歯磨きが必要な時代です。犬だからと歯磨きを怠ってしまうと、次第に歯垢や歯石の付着が進み、気がつけば深刻な事態を招きかねません。
でも犬にとって口内は急所であり、無暗に触れられたくないデリケートな部分です。そこで、初めて歯磨きに挑戦をするという方に犬の基本的な歯磨き法をご紹介させていただきます。
もくじ
■まずは口元に触れることに慣れてもらう
犬の口内は大変細い血管が張り巡らされ、神経組織も集中しています。もし小さな傷でもつけてしまえば、相当な痛みと不快感、毎日の食事にも支障をきたしかねません。
犬にとって口内は自分の命を守るうえで、とても大切な部位です。だからこそたとえ家族であっても触れられることを条件反射的に拒みます。
愛犬の歯磨きに挑戦!と思ったものの、愛犬が想像以上に抵抗したり、嫌がったことで、歯磨きを諦めたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
でもこれは決して愛犬に悪意があるわけでも、しつけを失敗したわけでもありません。
愛犬を無暗に叱ってはいけません。
歯磨きを習慣化するためには、まず愛犬になぜ家族が口内に触れるのかを理解してもらう必要があります。
その方法は
- 愛犬を撫でる時にマズル部分にもさりげなくふれる
- マズルに触れる時、愛犬の上唇を軽くめくる
- 上唇をめくり、愛犬の歯や歯茎にも軽く触れる
まずはこの手順で愛犬に口元に触れるものの、なんら危険が無いことを理解してもらいます。
もちろん口元に家族の手が近づいただけで条件反射的に拒絶する場合はあります。そのような時は、オヤツやおもちゃなどで愛犬の気分をそらしたり、お腹を撫でるなど愛犬をリラックスさせてから、再度ゆっくりと口元に触れてみてください。
■嫌がる場合も無理強いは厳禁
これまで歯磨き習慣の無かった犬に突然歯磨きを習慣化させることは簡単ではありません。
だからこそ家族は
・叱らない
・無理強いをしない
・怪我をさせない
この3点を絶対的に守り続けてください。
愛犬が条件反射的に見せた行動に家族が反応し、叱ったり、無理に愛犬を押さえつけてしまうと、愛犬はますます激しく抵抗をして、決して口元や口内に触れることができないようにと考えます。
これでは愛犬と家族が悪循環に陥ってしまいます。
■どうして犬にも歯磨きが必要?
犬には本来歯磨きは必要ありません。犬の唾液には洗浄殺菌効果があり、歯間に挟まった食べかすや歯の表面に付着した食べかすを洗い流し、口内をいつでも清潔に保ってくれるからです。
でも今やドッグフードは数百を超える品数があり、中には嗜好性や見栄えの良さを追求したために増粘剤や人工添加物が配合されている製品もあります。
このような原材料が歯の表面に付着すると、唾液だけでは洗い流すことができず、日々蓄積され、次第に歯垢や歯石となり口内トラブルを引き起こします。
犬の歯磨きは、唾液で洗い流すことのできなかった人工的な成分を家族が代わりに取り去るためのお手入れです。
もちろん歯垢や歯石の程度は
・いつも食べているドッグフード
・年齢
・体質
・犬種(骨格の形状)
など様々な要因で個体差があります。必ずしもすべての犬が重症化する訳ではありませんが、将来の辛い症状の予防に日々の歯磨きが効果的であることに違いはありません。
歯磨きが必要な理由がわかると、愛犬の歯磨きにも前向きに取り組むことができるはずです。
■すでに症状がある場合は自宅ケア開始前に動物病院へ相談を
愛犬の上唇を軽くめくり、歯の状態をチェックしてみましょう。
・歯の表面に茶色の薄い膜が付着している
・歯の根元が緑色に変色している
・歯の表面に触れると凸凹とした感触がある
・歯茎が赤く腫れている
・歯がグラグラと不安定な状態
健康的な犬の歯は真白で艶があります。もし上記に1つでも当てはまる場合、すでに愛犬は歯垢や歯石が原因で起こる口内トラブルを発症しています。
すでに症状が起こっている場合、家庭で自己流歯磨きを行うことでかえって症状を悪化させてしまう場合があります。
まずは動物病院を受診し、必要な治療を済ませ、その後に家庭でのケアを開始しましょう。
無麻酔歯垢除去は危険と隣り合わせ
一部のトリミングサロンでは、無麻酔歯垢除去という独自のデンタルケアをサービスの一環として提供しています。
このサービスは、歯科医院などで使用するスケラーと呼ばれる先端が鋭利な金属製器具を使用し、犬の歯の表面に付着した歯垢や歯石を削り取る作業です。
同様の処置を動物病院で行う場合、必ず全身麻酔を施します。これは作業中に犬が暴れることで口内に傷をつけてしまう危険性が高いからです。
一旦付着した歯垢や歯石は歯ブラシでこする程度では取り除くことはできません。大人が相当な力を込めて、石を削り取ります。
もちろん削り取り瞬間は衝撃や不快感があるのですから、犬は嫌がるのも当然です。
もし人間であればどうでしょうか?
無麻酔で歯の表面を削り取られたら、相当な不快感と痛みを覚えるでしょう。
状況が理解できない犬であれば、どれだけのパニックを起こすか想像できます。
無麻酔歯垢除去は、麻酔を行わないという解釈から医療行為として管理されていませんが、獣医師以外が安易に安全に行える行為ではありません。
愛犬の歯磨きや口内ケアは安全のためにも必ず動物病院で処置をしましょう。
■愛犬に使いやすいデンタルアイテムを選ぶ
自宅で愛犬の歯磨きを行う場合、愛犬にも家族にも使いやすい歯磨き商品を選ぶことも大切なポイントです。
ここでは、定番の歯磨きアイテムをご紹介させていただきます。
人間と同じ形状の歯ブラシタイプ
人間用歯ブラシとほぼ同じ形状でできている犬用歯ブラシです。人間用に比べ先端のブラシ部分が小型に設計されているので、奥歯まで磨きやすい点が魅力です。
ただし歯磨きを行う時に、柄の部分が口内に触れることで違和感を覚える犬や歯ブラシ自体に噛みついてしまう犬もいます。
愛犬の噛み癖や歯磨きの習得具合も併せて取り入れてゆきましょう。
犬の口内には相当量の雑菌がいます。
歯ブラシは使用後しっかりと洗浄すること、数回使用ごとに買い替えることをオススメします。
指先に巻き付ける使い捨てのガーゼタイプ
指先にガーゼを巻き付け、歯に直接触れ磨くタイプの使い捨て歯磨きです。
歯ブラシの柄を噛んでしまう犬でも飼い主の指となれば噛まずに歯磨きを受け入れてくれることも多いので、噛み癖のある犬にオススメです。
ただしこのタイプは中大型犬向けです。
小型犬の場合、奥歯に飼い主の指が届くようにと大きく口を開けることで、顎関節を痛めてしまう危険性があります。
また使用中に誤ってガーゼが指から外れてしまい、犬が誤飲するという事故も起こりやすいので、使用はくれぐれも注意しましょう。
愛犬の飲み水に混ぜるだけでOKな液体タイプ
口元に触れられることが苦手な犬や噛み癖のある犬、忙しくて定期的に愛犬の歯磨きの時間を取れないという方にオススメの手軽なタイプです。
液体タイプの歯磨きは愛犬の飲用水に適量をまぜ飲ませるだけととても簡単です。
唾液では落としきれない汚れを取り除く成分が配合されているので、毎日ただ水と一緒に飲むだけで効果が期待できます。
ただこのタイプは即効性が無いので、効果を実感するためには継続して与え続けることが必要です。
口内に垂らすだけでOKなジェルタイプ
口元に触れるまではOKでも歯に触れるのは嫌という犬にオススメの手軽なタイプです。ジェル状の製品を愛犬の口内に数滴垂らすだけで歯磨き効果を期待できます。
歯の表面を直接磨くほどに強い効果はありませんが、愛犬に余計なストレスを与えることなく手軽に利用できる点が魅力です。
遊びながら歯磨きができるオモチャやガムタイプ
噛むだけで歯磨き効果が期待できるというオモチャやデンタルというネーミングで売られているオヤツなど、歯磨きが苦手な犬に最適と思えるオモチャやオヤツもたくさんの種類が発売されています。
これらの製品は、オモチャやガムを噛むことで、愛犬の唾液分泌を促進し、唾液によって口内を洗浄殺菌する仕組みです。
中にはチーズやピーナッツなど犬が好むフレーバー付きの製品もあり、愛犬も夢中になって遊んでくれるでしょう。
このような製品はあくまでも愛犬の唾液だのみです。唾液で落とすことのできない人工添加物の除去や付着予防には十分といえるほどの効果は期待できません。
まだ歯が真っ白で艶があるという犬であれば、現状維持のためにオススメです。
■愛犬の好むフレーバー付き歯磨き粉も活用を
歯磨きアイテムを購入する時、ぜひ一緒に犬用歯磨き粉も購入をしましょう。
犬用歯磨き粉には
・チーズ
・ササミ
・ピーナッツ
など犬が好むフレーバーがついています。慣れない歯磨きもこのフレーバー付き歯磨き粉を活用すれば、まるでオヤツをもらうような感覚で喜んでもらうことができます。
歯磨き粉の使い方は
- 歯ブラシやガーゼに少量の歯磨き粉をつけます
- 愛犬にオヤツ感覚で舐めさせます
- 何度もただ舐めるだけを繰り返し経験させます
愛犬が歯磨き粉の味を覚え、抵抗なく受け入れてくれるようになったら、実際に口内に歯ブラシを入れ、歯の表面を優しく撫でる様に磨いてゆきましょう
いきなり歯ブラシやガーゼを口内に入れられるのでは当然犬も不快な気持ちになります。
愛犬の不快感を少しでも解消するために、ぜひ愛犬の好みのフレーバー付き歯磨き粉を活用しましょう。
口元に触れるだけでも嫌がる、抵抗する犬の場合は、まず飼い主の指先に少量のフレーバー付き歯磨き粉を塗り、指先を舐めることから始めてみましょう。
歯磨き粉に愛犬が慣れたら、次は歯ブラシやガーゼに歯磨き粉を塗り、舐めることへ挑戦します。
このように段階を踏んで犬に歯磨きを教えることで、犬は必ず状況を理解し、歯磨きを受け入れてくれるようになります。
いきなり口内すべて、隅々までの歯磨きを受け入れてくれることはありませんが、時間をかけて、ご褒美なども活用しながら教えてゆくことが大切です。
まずは口を開けた時に大きく目立ち犬歯に触れること、磨くことからチャレンジしてみてください。
フレーバー付き歯磨き粉を活用場合、決してゼロカロリーではないので、与えすぎによる肥満にはくれぐれも注意し、給与量を確認することも忘れずにおいてください。
■磨く部位は歯の表面だけ!歯茎の刺激は要注意
犬の皮膚は人間の赤ちゃんよりも薄くデリケートです。
当然口内も人間よりも薄くデリケートですから、歯磨きをすることで歯茎を傷つけてしまうことの無いよう注意が必要です。
口内は細い血管が張り巡らされているので、わずかな傷でも大量の出血が起こることがあります。
もし裂傷を負ってしまった時は縫合処置ができず、自然治癒しか治療法はありません。
歯磨きをする時は、歯磨きが歯茎に触れたり、こすってしまわないようくれぐれも注意しましょう。
小型犬の場合、歯が小さく、歯茎を刺激せずに歯磨きを済ませることは困難です。そのような場合は、液体やジェルなど歯茎を刺激する心配が無い製品で歯磨きを済ませましょう。
■歯磨きの目安は週に2,3回
歯磨きの必要性はわかったものの、次に気になるのはその頻度です。
人間と同じ様に毎食後行うべきか?それとも週に数回なのか?
最も理想的な方法は人間と同じ毎食後に歯磨きを行うことです。でもこれでは犬にとって相当なストレスがかかります。
歯垢や歯石の付着や歯の表面に残留物が付着することを予防するための歯磨きは、週に数回が目安です。
もちろん使用する歯磨き用品によって頻度は異なります。
各歯磨きアイテムごとに目安は
・歯ブラシ 週に2,3回
・ガーゼ 週に2,3回
・液体 毎日の飲み水に混ぜ与える
・ジェル 毎日、毎食後など製品の使用目安を参考に
歯磨きの頻度も参考にどのような歯磨き製品を購入するかも考えてみましょう。
■まとめ
犬に歯磨きが必要になったのは、犬の食生活が多様化したためです。もちろん多様化したことで嗜好性が高くなり、シニアでも食べやすいドッグフードなども増えています。
その反面でこれまでは必要とされていなかったお手入れが必要になるという背景をぜひ理解し、愛犬の歯磨きを習慣化してゆきましょう。
■保有資格
・愛玩動物飼養管理士
・トリマー
・トレーナー
・アロマセラピスト
・ホリスティックケアカウンセラー
» 大谷 幸代について詳しくみる